第10話 お節介
バイトが終わり店長のところへ行く。
「店長、今日エミカ先輩は…」
私の出勤から一時間経ってエミカ先輩の出勤時間になったが一向に来ないそしてそのままエミカ先輩は来なかった。
「ライン見てない?今日休みになったんだよ?なんかあった?」
「あっそうでしたか……」
「どうしたの?」
「いえ、なんでも……「ない事はないでしょ、流石に」
じっと目を見られ言葉に詰まる
「暗い顔しちゃって受験でも失敗した?」
ズバッと当ててくる
「……はい」
「よかったじゃん」
予想だにしなかった言葉に驚く
「え?」
「一発で受かっちゃった人は合格でまあそれはそれでいいけど、落ちる経験はできないからね」
ニヤっと店長が笑う
「お前は落ちる経験を得れて落ちた時の気持ちとか、悔しさとかいろいろ学ぶチャンスをもらえたんだ。よかったな」
そういう考え方ってすごいけど……
「私、そんなにポジティブには考えれません」
「まっ、そうだよな」
さらっと受け入れられる
「俺も当時は無理だったけど、今ならそう思えるんだよな」
ふっと笑う店長
「ま、勇気出して仲間に慰めてもらえ」
それは本当に勇気のいることで答えが口に出せず下を向く
「大丈夫、大丈夫なんとかしてくれるさ。他力本願、たまにしたってバチ当たんないっしょ」
肩を叩かれる。
“ピコン”
久々に聞いたラインの通知音に顔を上げる
「あとセナ明日バイト休みね、代わりに予定入れといてあげたから」
そう言いながら私のスマホを顔の横で振る店長に、目が点になる
「え?何やって、え?」
返されたスマホの通知にはカナエ、ユリナから「じゃあ明日」というライン。
「勝手に何やってるんですか!!」
「お節介ってやつ? まあ許して、明日友達にあったときに話す話題が増えたでしょ」
「そうじゃなくてですね」
「まあ、ダメなことだとは思ってるよ。ごめん、結構心配してる人がいたから誘っちゃった。」
「え? ちょっと、え? 誘っちゃったじゃなくてですね」
「珍しく発狂してるね、それぐらい元気な方がいいと思うよ」
「いろいろ突っ込みたいんですけど……」
言いたいことは多いけど全く出てこない
「スマホ勝手に使ったのは悪かった。ダメなことだ」
超真剣な顔が意外にかっこいいと思えた
「でも友達をバカにするのはもっとダメだね」
店長はそう言ってまた私の肩をポンと叩き
「じゃお疲れ」
と言って休憩室から出て言った。
私はいっぱいいっぱいの頭で帰り支度を済ませ自転車にまたがる。
店長のありがた迷惑。
店長のせいで会わなければならなくなった。
このままではいけないのはわかっていたし、いい機会を強引過ぎだけどくれたのは、ありがたいと言えばありがたい……
でも正直ものすごく不安で、このまま死んでしまった方が楽だしいいのになんて考える。
信号が赤になる。
死にたいって思ってるのにしっかり止まる。
で、そういうこと考えてる人には決まって不幸なんて都合良く降りてこなくて。
いい人ばっかり、なんでこの人がって人に不幸が訪れるんだから、人生って意地悪だ。
何悟ってんだって自分に突っ込む。
久しぶりに開いたスマホでインスタを眺める。新しい彼女と幸せそうなマサキが流れてくる。
あんまりいい気分にはなれないのでツイッターをいじり始めた。
信号が青に変わり自転車を一漕ぎ
"ブーーー!!"
クラクションとともに横から車が突っ込んでくる。
は? 赤? クラクション? 車
脳みそは肝心なとこで動かず真っ白になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます