第20話 注釈資料・映画こぼれ話

小栗康平:1981年に『泥の河』で映画監督デビュー。以降、ほぼ10年に1、2本のペースで作品を発表する。作品数こそ極めて少ないものの、その特異な作品世界が高く評価されている。まずはピンク映画の世界に飛び込んだが、ほどなく浦山桐郎の下に弟子入りする。その後、フリーの助監督として、山本迪夫、大林宣彦、篠田正浩らの助監督を務めた。


1990年、島尾敏雄原作の『死の棘』を発表。小説家・敏雄の不倫を知った妻が発狂すると言う私小説を映画化した、非常にショッキングなドラマである。原作者の島尾は、大島渚や篠田等からの同作の映画化の依頼を、頑なに拒否していた。ところが処女作『泥の河』を賞賛し、小栗には映画化を認めた。同年5月の第43回カンヌ国際映画祭では、グランプリと国際映画批評家連盟賞をダブル受賞した。俳優は松坂慶子、岸部一徳。


宮本輝:『泥の河』『蛍川』に『道頓堀川』を入れて、川三部作が代表作とされる。ライフワーク小説に『流転の海』がある。


サラーリマンをしていたが、パニック障害になり、電車で通勤が困難になりだした。ある日、雨宿りで書店に入った。当時評判になっていた作家の本を何気なく読んだ。


「これなら、俺でも書ける」と思った。作家なら電車に乗らなくていいが小説を書くきっかけになった。


ピンク映画:1950-60年代、テレビの普及で職を奪われたニュース映画や教育映画関係者達が糊口を凌ぐためにお色気をテーマにした短編・中篇映画を制作し、これを同じく衰退しつつあった小規模なニュース映画専門館に供給されていった。


1961年の新東宝倒産が一つの転機とり、新東宝の経営を追われた大蔵貢が大蔵映画を設立。1962年に協立映画製作、大蔵映画配給の『肉体の市場』が公開。「成人指定」「独立プロ製作」「劇映画」という3つの要素を満たした最初の作品として、この『肉体の市場』がピンク映画第一号とされている。


大蔵映画と新東宝のピンク映画界の二大会社が成立する。また、一般の劇映画を経験した若松孝二などの監督やスタッフが、次々ピンク映画に参入してきた。特に若松は「若松プロ」を設立し、ピンク映画と言うよりは問題作と言われる作品を発表した。


1980年代前半、早撮り、低予算の手法でたくさん制作され、ピンク映画は最盛期であったが、1980年代後半はアダルトビデオに市場を奪われ衰退、さらにピンク映画に対する映画業界による自主規制などからメジャー系制作会社は次々に撤退。1988年のロマンポルノの撤退も含めて、1990年代には市場が大幅に縮小した。


ピンク映画の出身には若松孝二、崔洋一のような「大家」から黒沢清、周防正行のような「作家主義」の監督までおり、日本映画においてピンク映画は一時期、映画関係者の養成機関的な役割も果たし、その役割の重要性が伺える。


川又昂(たかし):松竹大船撮影所で小津安二郎作品の撮影助手を経て、33歳の若さで撮影監督に抜擢される。 以降、同世代の大島渚、野村芳太郎監督らのコンビで98本に及ぶ作品で撮影監督を務める。代表作は、『青春残酷物語』『砂の器』『八つ墓村』『疑惑』。日本アカデミー賞撮影賞を受賞した『事件』『鬼畜』『黒い雨』など多数。





映画『野獣死すべし』:大藪春彦の小説。幾度となく映画化された。初作は1959年、仲代達矢、1974年、藤岡弘が主演。現在では1980年の松田優作の主演作品として認知する人が多い。団玲子は楠見妙子役で出ている。




『ニューシネマパラダイス』アルフレードの言葉:


この場所から出ろ。


ここにいると自分が世界の中心だと感じる。


何もかも不変だと感じる。


だが2、3年も他にいると、何もかもが変わってる。


頼りの糸も切れる。会いたい人もいなくなってしまう。


一度ここを出たら、長い年月帰るな。


年月を経て帰郷すれば、友達や懐かしい土地と再会できる。


今のお前は私より盲目だ。


人生はお前が見てきた映画とは違う。


人生はもっと困難なものだ。


行くんだ。お前は若い。


もうお前と話したくない。


お前の噂が聞きたい。


帰ってくるな。


私たちを忘れろ。


手紙を書くな。


ノスタルジーに惑わされるな。


自分のすることを愛せ。


子供の時、映写室を愛したように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺らのシネマ 北風 嵐 @masaru2355

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ