かんざしや

usagi

第1話 かんざしや

「店のものを奪うべからず。見つけたら罰金五両頂戴いたす。」


かんざしやの正面に貼紙が貼られるようになった。

商品が多すぎて目が届かず、町の子どもたちによく店の物を盗られていたのだ。


ある日、繁盛する店があると聞きつけた泥棒が店の様子を見にやってきた。

彼は泥棒にもかかわらず生真面目な性格で、店を襲おうと思ったが「店の物を奪うな」との貼り紙を見て、どうしたものかと悩んでしまった。


そして調査を兼ねて店を訪れているうちに、いつしか娘と心を通じ合うようになった。


ある日、娘が父に言った。

「私、毎日やってくる若者が好きになり一緒になりたいと思っているんです。」と。


そして父は翌日、「娘をもらってもらえんか。」と泥棒に声をかけた。

泥棒は娘と財産の両方が手に入ると喜んだ。


父が続けた。

「ただしその前に罰金五両をいただきやす。おまえさんはうちの娘を奪うことになったんだからな。」


泥棒は苦笑いした。


泥棒はしっかりと五両を払い、それからは真面目に働くようになった。

彼が店を見るようになって万引きはゼロになったという。

それはそのはず、店頭で元プロが目を光らせていたのだから。

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かんざしや usagi @unop7035

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