第3話

 作戦場所

 屋上


 作戦開始


雨がゆっくりポツポツと降り始め、作戦が開始されました。緊張感が漂う中、ピアノの音が鳴り響きました。

 最初は聞くに耐えない酷い音色でしたが、演奏を繰り返し、美しい物に変化していきました。


博士は「カルメン行進曲」「ラ・カンパネラ」「トルコ行進曲」の順にリクエストし、その全てに傘は楽しそうに答えました。


 トルコ行進曲に至っては最高記録の演奏を行いました。



 全てが順調に進み雨も止む事はありませんでしたが、忘れてはいけない。これは人間には理解できない異常性を持った物の実験です。そして、やはり異変が起きてしまいました。


「じゃあ次は、『運命』お願いしようかな」


 博士が曲をリクエストしますが傘は答えません。十分間の沈黙の後、傘は注文していない「別れの曲」を演奏しだしました。

 どよめきが生まれますがそれは一瞬で、直ぐに収まりました。

 何故ならその音色は――


 優しく


 激しく


 寂しく


 楽しく


 美しく


 そして、満足そうでした。


 まるで人間の感情を音にした様な演奏に誰もが魅了され、涙を流す者まで現れました。


 演奏が終わると傘は何かに衝突したように吹き飛びました。


 博士は直ぐに傘を捜索し発見しますが、中棒と骨組みが折れ、トラックのタイヤに轢かれていました。


 直ぐに修復を行いましたが傘が演奏する事はもう二度とありませんでした。


 博士は傘が何故逝ってしまったのか直ぐに察しました。


 結局、傘は何故演奏出来たのでしょうか?


 そして、少女の傘の音色は、どこから来たのか、何故美しいのか、そして――何故逝ってしまったのか。


 正解は……フフ





 もう……おわかりですよね?



 さぁ、一人のピアニストが最高の演奏をしてくれました。私達に出来る事は一つしかありません。


 ピアニストが退場します。


 皆さん少女最高のピアニストに賞賛の嵐を!盛大な拍手を!





 雨は止み、拍手の雨が鳴り響いた。














 そして一つの拍手は他の拍手より長く、激しく鳴り響いていた。






「ありがとう」





ーーー「歌う雨音」ーーー


〜 〜 〜neutralized無力化〜 〜 〜

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

降り続ける雨 TEN3 @tidagh

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ