行き場のない悲しみと、祈りと、恋心と

神戸を経由して長崎へ向かう莉緒と恋人の蕾花さん。莉緒には病気で亡くなった蕾花さんの妹、友だちの一花の姿が見える。長崎には分骨した一花のお墓があり、ふたりは原爆が長崎に落ちた8月9日に合わせてお墓参りに向かうのだった。

物語は長崎の街を舞台に、原爆の記憶、キリスト信仰の歴史を絡めながら現在の莉緒と蕾花さんのこと、一花をめぐるふたりの思い、莉緒の過去の恋がふわふわと、でも切なく悲しく静かに語られる。その時々に差し込まれる莉緒と蕾花さんの思いの強さが熱くて、私まで溶かされそうになる。好きな人を好きでいること、信じたいものを信じること、それが難しい時代や場所があって、今現在も蕾花さんに恋している莉緒の心を苛む。
真夏の悲しみの日を超えて、莉緒は救われていくのだろうか。どうか救われて欲しい。