わたしの欠片

作者 藤光

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★★★ Excellent!!!

こういうのは時間がある時にゆっくり読まないといけない。そうそう、森本レオが朗読するみたいに。
一度声に出して読んでみれば文章のリズム感がとてもはっきりと伝わってくると思う。
冒頭からの流れるような文章、女子高校生の瑞々しい感性、いざ彼女が書き始めた時の躍動感。静と動の対比が素晴らしい。

斯いう私はSFの人であって、ロボットもブラックホールも出てこない本作のような文芸作品を称えることは本来なら稀なのだ。
しかし、これは一読しておいて決して損はない。あなたが気付くかどうかは別にして、ここには文章を書く上でのお手本が詰まっている。

★★ Very Good!!

 主人公の少女は文芸部に所属する高校生――なんて出だしで思わず食いついてしまいました。掴みはじゅうぶん。調理次第でいかようにも化ける、キャッチーな滑り出しです。

 かくいう私も高校時代は文芸部でした。部員も部長も私一人でやっていたのを覚えています(今思えばよく学校が部活動として認め続けてくれていたものです)。
 だから、ちょっとした古傷を抉られるような痛ましさと、そこにできあがったかさぶたをそっとはがしてみるときに抱くような……冒険心をくすぐられるような、不思議な感想を持ちました。


 そんな本編で描かれているのは、おそらくもっともっと存在しているであろう濃密な人間ドラマのごく一部です。
 欲を言うなら、もうちょっと読んでみたい。この後に起こるであろう出来事も知りたい。かれらの生き様を見つめてみたいというところであります。なので、読む方によっては、作品のフォーカスの仕方に賛否出るかもしれません。

 しかしながら、丁寧に描き込まれた学校風景の写実的な描写は、これがまた深い味わいを体験させてくれます。現代劇なんだけれども、ちょっとノスタルジーも感じる……。写実的なんだけど原色のままではない、あえて退色させた写真のような、そういう感じ。ここがすごく面白い。作者の持つ美的センスがいかんなく発揮された短編と言えるのではないでしょうか。