ゲームの世界へ召喚されし者
最初の召喚者
「そうなんですか……って、え!? ノンフィクション!?」
『ふん、どうやらノンフィクションとフィクションの違いが理解できてるようやな。さすが、物書きの底辺を名乗ってるだけはあるやないか』
「あ、やめてください恥ずかしいです」
『ほな、この本の持ち主を探すために進みながら話したるわ。長ーい話になる。途中で寝るのは、ナシやからな』
そう言いながら、本と栞は動き始める。茜も歩を進める。
『この世界は、ゲームの中の世界やない。れっきとしたちゃんと存在する、世界や。まあ、アンタらが住んでる世界とは、別世界やけどな。ワテが知っている限り、この世界に初めて召喚された外部の人間は、アンタがプレイしたゲームのシナリオライターや。彼はこの世界に召喚され、仲間と共にこの世界で偉業を成し遂げた後、元の世界へと帰った』
「めでたしめでたし」
『しかし、この世界にはまだまだ不安材料があったんや。だから元の世界へ帰る彼に、この世界の人間は頼んだわけや。必要な時に、この世界へそちらの世界の人間を送り込んでほしいってな』
「ふむふむ」
『それで、彼は考えたわけやな。それやったら、この世界に召喚されてもそこまで違和感を感じへん人間を必要な時に送り込むにはどうしたらええか。それやったら、この世界と縁を結ぶ人を増やしたらええ。つまり、この世界を「なんか知ってる」と思う人間を増やしたらええねん。だから、彼は自分の得意分野であるゲーム作りにそれを託した』
「自分の経験を、そのままゲームにしたってこと?」
『そや。自分が経験した世界、ストーリーそのものをゲームにした。そしてそれを世界中に売り出した。この世界で使用した魔導書や魔法瓶、召喚石なんかの魔法使いに必要な道具をゲーム内で使用する付属品としてつけてな。彼の思惑通り、ゲームは世界中で人気を博した』
「すごい人気だったもんね」
『しかし、何でもそうやけど、ゲームのことはすぐに人々の記憶から消えていった。新しいゲームが続々と出てくるもんやから、しゃーない。もちろん、変わらず大事に思ってくれてた人もぎょうさんいてくれたみたいやけどな』
『ゲームが発売されてから数年、こちらの世界は平和やった。この世界に外部から人間を呼ぶ必要がなかったんや。その間にも、彼のおかげでせっかく縁を結んだ人々たちは、ゲームのことなんて忘れてしもた』
『けどつい最近、ついに外部の人間に助けを求めなアカン案件が発生したんや。せやから、条件に見合った外部の人間数人が、この世界に召喚されたっちゅうわけや』
大好きなゲームに、取り込まれました。で、どっちに進めばいいですか? 工藤 流優空 @ruku_sousaku
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