俺、絶対負けない。だって、負けたら俺、姉ちゃんに〇されるし

空〜セリカ〜

第1話 終わりの始まり

結局のところ、戦争なんてものは魔法と異能の二つでしか戦えない。

生身の体で力を持たない者が、弾丸詰めてアサルトライフルを手にしたとしてもどうにかなるものではない。

百、千、万の兵を集めたとしても、戦車や戦闘機などを無数に準備したとしても"彼等"は悠々とアリを潰すかのごとく蹴散らして行く。

現に、"彼等"が現れた当初、当時最高火力とされていた核兵器を落としても無傷で返り討ちにしてくる。"彼等"と戦う事自体が馬鹿らしく思えてくる。

戦争なんて面倒臭い役割は"化け物達"に押し付けておいて、脇役はそれをのんびり眺めていれば良い。それが、世界全体の共通認識だ。

…そんな風に考えていたからこそ、支部と呼ばれる"特殊軍人専用"の基地に詰めているが、戦場の最前線にいながらも、彼等はどこか気を緩めていたのかもしれない。

基地なんて言っても、やる事は効率良く特殊な力を持つ人間を出動させる事。殆どの兵隊は彼等が帰ってきたわずかな間だけ、休憩中の彼等が襲われないように警備をすれば、『命を顧みず国を守るヒーロー』としての報酬をいただける。

彼等がいれば安泰だ。自分達を守ってくれる彼等は金のなる木だ。ただ黙って眺めているだけで、大勢の敵を勝手に蹴散らしてくれる。

兵隊達はそれを『ウチの基地全体がもたらした成果です。みんなで頑張ったんだからみんなに報酬をください』と主張すれば、国民の血税から自分の預金通帳へ、一般人からは考えられない程の膨大な金が振り込まれる。

戦争なんて彼等が勝手にやってくれる。

彼等はさえいれば、自分達の命も未来も保障されたようなものだ。

そんな風に思っていたからこそ―――――


彼等が敗北した瞬間。


それを眺めていた兵士達は、一斉に恐慌状態に陥る事になった。

そう言うことだ。結局、今の時代の戦争なんて彼等の戦いだ。 それはつまり、敵軍にも彼等と同様の"力"を手にした者達が配備されていた場合、自軍が敗北してしまう可能性がある事も考慮しなければならない事を意味しているのだ。真冬の白い吹雪に視界が遮られる中、赤い炎と黒い煙はそれでもはっきりと見えた。 『異能者』と呼ばれる彼等が宙を舞い、無残に散っていく姿も。

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