第6話 一からやり直してはいけない

 ゴルフ談義をしているとよく「スイング改造を始めた!」という人と出会う。うん。熱心にゴルフをしている人になればなるほど、頻繁に、スイング改造を口にする。スイングの研究に熱心な人になればなるほど「これじゃダメだ!」と叫んでスイング改造を始めるのである。


 ぶっちゃけると、スイング改造など止めた方がいい。いやマジで。


 スイング改造など百害あって一利なし。私の知る限り、労力に見合う成功を得たプレーヤーなどいない。私に言わせればスイング改造は娯楽である。ゴルフとはスコアとはまた違った遊びである。それでも良いという人のみやったら良い。


 昔、片山晋呉プロが「スイングをよくするというのは凸凹の石を丸くなるように磨くこと」だと言っていた。私はこの意見に賛成である。


 自分のスイングの凸凹を見極め、修正し、少しづつ削って磨いて行く。スイングを良くするというのはそういう地道な作業なのである。時には失敗することもあるだろう。取り返しのつかない凸凹が出来てしまうかもしれない。これをあるがままに受け入れて、諦めずに丹念に磨く。これが出来なければスイングは良くならないし。スコアも良くならない。


 ところが、世のゴルファーは自分のスイングが凸凹なのを見ると嫌になってしまう。投げてしまう。「一からやり直しだ!スイング改造だ!」と新しい石を削り始めちゃうのである。


 これでは上手く行くはずがない。ところがこれがやっている本人には分からない。その石の方が容易に丸くなるように見えるのだろう。実際には色が違うくらいなのだが。そして思うように丸くならないと、またぶん投げて新しい石を手に取るのである。


 石を削るのは楽しかろうが、完成しなければ意味が無いし。どんどん時間ばかり減って行くだけであろう。プロならともかく、アマチュアがゴルフに費やせる時間は多くない。上手く成りたければ、スコアを良くしたければ、新しい石を一から削っている場合ではないはずである。


 多くのプレーヤーが誤解しているが、ボールがある程度まっすぐ飛んでいるのであれば、そのスイングは概ね正しい。修正不可能なほど歪んだスイングというのはそうそう見られるものでは無いのだ。その為、正しく修正すればそのスイングは概ね丸くなる。どこまで丸く出来るかは、そのプレーヤーがどれくらい真剣に自分のスイングに向き合い、練習したかによるだろう。


 ゴルフにおける事象は須くそうだが、自分のゴルフスイングをあるがままに受け入れて、長所と欠点としっかり向き合い、目を逸らさずに少しづつ修正するのが結局は上達の近道なのである。


 スイング改造という聞こえのいい言葉に騙されて、最新のスイングに常にバージョンアップすることばかりしている「研究熱心な」プレーヤーは、結局は初心者の域を出る事はないし、スイングの奥深さに触れる事も出来ないのである。

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ゴルフに関する覚え書き 宮前葵 @AOIKEN

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