老婆が糸車をまわしている。

物語を紡ぐのは老婆。

いや、紡がされているのだろうか?

今日もある物語が始まる。




魔女の夢は魔法使いになることだった。


貧しい村で育ったかつての少女は、

魔法が使えたら、

みんなを幸せに出来る、

そう、思っていた。


今の自分はどうだ?


確かに世の中の、

人の人生を変えられるだろう。


ぐるぐると鍋をかき混ぜる。


鍋の中の液体。

この薬で幾人の人生が終わるのだろうか。

依頼してきたのは、ある国の女王。


評判の良くない女だ。

自分の欲を満たすために、

人を殺している、

そういう噂が、魔女の元にも届いているのに。


魔法使いは遠い夢。

魔女になったかつての少女は、

ぐつぐつと、鍋のそこから浮かび上がる泡を

ただ見つめていた。


見つめていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フェアリーテイル 山口はな @hana-maru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ