Sail

大和麻也

Sail

「ねえ、わたしたち、秘密のあだ名で呼び合うことにしない?」

「秘密のあだ名?」

「そう。特別な友情の証」

「そんなことして、和佳奈わかなちゃんに嫌な顔されない?」

「大丈夫、ふたりのときだけそうやって呼ぶの。ほかの誰も呼ばない、わたしたちだけが使えるあだ名。だから、秘密のあだ名。嫌かな?」

「ううん、そんなことない。特別な呼び方、嬉しいかも」

「よかった、じゃあ、何て呼ぼうかな……『いーちゃん』なんてどう?」

「……どうして?」

一帆かずほの『かず』は数字の『一』でしょ。だから、いーちゃん」

「ふうん……」

「一帆はわたしのこと、何て呼ぶ? 何でもいいよ」

「じゃあ……『さっちゃん』って呼びたい。えみの漢字は『咲く』って字だから」

「うん、わかった。なんだかワクワクするなぁ」

「……そうだね。これは特別、特別だもの」




 送信ボタンを押して、一帆はようやくほっと一息ついた。

 奨学金を支給する団体へのレポート――つい先月卒業論文を提出し、やるべきことは残っていないと思っていた一帆に、最後に残っていた面倒な仕事である。気がついたら締め切りが危うくなっていて、卒業旅行にノートパソコンを同伴させる羽目になった。インターネットの無線接続が温泉宿のサービスに含まれていたのは幸運だったと、つくづく思う。ここを予約した数か月前の自分に感謝する。

 就職先が一一月まで決まらず、それから一か月で卒業論文を仕上げた一帆にとって、ようやくもたらされた休息であった。しかし、今晩ゆっくり休める望みはないと、次に待つ仕事に嘆息した。

「あ、やること終わった? 終わったよね?」

「早くこっち来てよ、いーちゃん!」

「就職前の最後に、いーちゃんの話も聞かせてよ」

 大学生活を共に歩んできた三人の友人たちが、浴衣が乱れるのも気にせず、仲居さんが敷いてくれた布団をめちゃくちゃにして横たわる。品を欠くその様子に、一帆は呆れて笑うしかない。女子中学生の合宿ではなかろうに。

 女性だけの四人旅。最後の夜は、少し酒を飲み過ぎていた。一帆だけは、下戸な体質ゆえ指に付けて舐めるほどしか晩酌せず、しかもレポートを作成しているうちに酔いが醒めてしまったものだから、その浮かれ具合に不用意に飛び込めば、怪我をしてしまいそうな気がした。

 ふう、と息をついて覚悟を決める。身体は素面で頭も冴えているが、心だけはアルコールに浸った気持ちでいることにして、布団の端にぺたりと座った。

 一帆の参戦に、三人の友人たちは沸いた。

「ねえ、いーちゃんは最近好きな人とかいないの?」

 前置きもなく話を切りだしてくる。身構えていたとはいえ、一帆は平穏な夜を過ごすことはできないのだと改めて思い知らされた。そう訊く自分たちはどうなのか、と三人に問い返したところで、それはさんざん話してしまったと取り合ってくれない。浮いた話はないとか、レポートで疲れたから眠りたいとか、いろいろと逃げ道を探そうと試みるが、どれも効果はない。

 むしろ、勿体ぶっていると囃したてられる始末だ。

 布団の上に座ってしまった時点で、一帆は話す側の人間になっている。

「じゃあ、仕方がない。白状するよ」

 おお、と再び友人たちが声を上げるものだから、その瞬間に鈍い感覚がぐっと喉元まで這いあがってきて、話そうという覚悟が削がれてしまう。

 それでも、四年間にできた無二の友人たちを前に、決心を覆すのは申し訳なかった。いままで一帆は、自らの恋や愛について、彼女たちにも明かせないでいた。散々求められてはいたし、話してみても悪くないと思うことはあった。でも、いつも寸前で勇気が萎んでしまう。

 卒業前の最後の機会だ。卒業して当分会わなくなると思えば、その惜しさに話せることは話したいと思えるし、恥だとしても時間が解決してくれると自分に言い聞かせる。

「最近の話をひとつだけ、手短にね。本当にそれしかないの」

 念入りに前置きしておいてから、一帆はひと息に述べる。

「就職が決まったころにね、初恋の人と再会したの。私を『いーちゃん』ってあだ名で初めて呼んだ人。小学校で、転校生だった私と最初に友達になってくれた人。私のことをわかってくれて、守ってくれる、ずっと好きだった人。その人とは高校、大学と疎遠になっていたけれど、離れ離れになっているうちに、私の気持ちに気がついてくれたみたいで、付き合いたいって言ってくれた」

 恋愛の話題で数時間は盛り上がっていた友人たちも、一帆のエピソードに目を輝かせた。

「何だよ、いい話題があるじゃん!」

「いーちゃん、いつの間に彼氏いたんだ」

「黙って彼氏を作るところが、ねぇ?」

 一帆は、それらの表情から自分に向けられている期待の正体を勘ぐってしまう。「これだから話すものも話せなかったのだ」とは、明確に言っておいたほうがいいのだろうか。

「付き合ってないよ。断ったから」

 友人たちの態度は一変する。勿体ないとか、意味が解らないとか。相手も自分も昔と違ったから? 別に好きな人ができたから? ダメな男になっていたから? それらの感想は当然思いつくものだとして、それ以上好き勝手な想像をされないよう続ける。

「わかっているようで、わかっていなかったから、かな」

 乙女たちは、きょとん。想い続けた相手からの交際の申し出を断る決定的な理由が、心理的な条件だとは思ってもみなかったのだろう。そういったあたり、交際の経験が恋愛の感覚と必ずしも結びついていない少女たちの相手をしているのだと、交際経験のない一帆でもため息をつきたくなる。

「さあ、私の話はこれで終わり」

 しかし、これだけで終わりにできようはずもなく、もっと詳しく話すようにとせがまれる。一帆も一帆で、切り上げられるものなら切り上げたかったが、これだけで終わるようならば決心が無駄になるような気がしていたから、続けてみようという気になっていた。

「じゃあ、長くなるし楽しい話でもないけど、いいね?」

 そう言っておけば自分のペースで話しやすくなると思った一帆だったが、居住まいを正す友たちを見てかえって少し怯んでしまうのだった。




「……よろしくお願いします」

 小学校六年生の二学期、わたしのクラスには四〇番目の生徒がやってきた。

 カクカクと緊張した小さなお辞儀をし、顔を上げた彼女と目を合わせた瞬間、わたしは、彼女のおかげでクラスの勢力図は揺さぶられるだろうと直感したのだった。



 いま振り返って思えば、学級の力関係が暗黙の了解によって成り立つようになるのは、早くても中学生の半ば、概ね高校生からである。それ以前、思春期の入り口に立つ少女たちでは、雰囲気というものへの読解力がまだまだ乏しい。それゆえに、強い者が持つ不満に気がついて適切に対応できる割合は多くはなくて、強弱の差のある人間関係に、ふとしたきっかけで目に見える対立が生じてしまう。

 わたしのクラスの女子の場合、和佳奈という子が「最強」だった。とても可愛らしい子だった。くりくりとして大きな目は、じっと見つめられると照れてしまうくらいで、ちょっと赤みが強いくらいの頬には愛嬌があった。思い切り笑うとえくぼができるのもポイントだ。当時のわたしは知らなかったけれど、聞いた話ではお金持ちだったようで、雑誌に載っていそうな都会的なファッションリーダーでもあった。勉強も運動も苦手なのを差し引いても、麗しい外見と明るい性格とがあるだけで、クラスの人気を集めるのに充分だった。

 ところが、男女の憧れの視線を一手に受ける彼女の天下は、突然やってきた転校生の登場によって揺らいでしまう。

 名前を一帆という新しいクラスメイトは、くたびれたTシャツや華やかさに欠くスカートをほんのいくつかのパターンで着まわすくらい、和佳奈に比べれば、クラスのアイコンとなるには冴えない恰好をしていた。性格も小学生にしてみればつまらないもので、引っ込み思案な恥ずかしがりだった。学校生活で積極的な面は見られず、授業でも自分から挙手した試しはないし、先生に言われたことには黙って従い、同級生に言われることをいちいち真に受けて冗談が通じない。

 それでも、容姿では、小学生が想像しうる美しさを遥かに凌駕してしまっていた。雪原の如く白い肌や黒々として艶のある髪、すっきりと通った目鼻立ちだとか、潤んだ切れ長の目からこぼれてしまいそうな瞳だとか、薄く儚げな唇など――月並みな形容しかできないのは、わたしの表現力の不足以上に、彼女の美貌がこの世の規準で測れないからだ。それに比べれば、和佳奈の愛らしさなど、子どもっぽいうえに安っぽい。

 黒板の前で挨拶したその瞬間から、一帆はクラスで一番の人気者になった。といっても、一帆はその座に興味がないどころか、休み時間のたびに同級生に取り囲われることに戸惑いと恐怖を覚えているようだった。

 一帆がやって来てから数週間後には、

「何よ、あの子。ちょっと可愛いからっていい気になって」

 というのが和佳奈の口癖になった。

 その口癖は一帆に聞こえるように呟かれ、それが重なるにつれ一帆はより一層縮こまって生活するようになっていたのだが、当然和佳奈の目には「猫を被っている」と受け止められた。

 和佳奈は結局、自分が飽きられていることに気づいていなかったのだ。庶民的で性格も丸い一帆に容姿で勝れないのであれば、和佳奈が頂点に居続けられるはずもない。

 わたしはどうしていたかというと、教室の中では和佳奈と一緒に過ごすようにしていた。和佳奈には攻撃的なところがあるとわかっていたから、下手に敵対するよりも、波風立てないよう近くにいたほうが楽だと思った。自分で言うことではないが、わたしが和佳奈の取り巻きに認められうる「勝ち組」の容姿なのは幸運だった。

「ねえ、咲。あの子、ムカつくよね。いつもヘラヘラして、自分は世界一可愛いって思ってるんだよ、絶対」

 和佳奈からそう求められるたび、その他の取り巻き連中と一緒に、うんうんと頷いたものだ。もちろん、そうしておくだけで共感などしていない。わたしたちが一帆に腹を立てる理由などひとつもなかったし――むしろ、仲良くなれたら嬉しかっただろう――、和佳奈が一帆に向ける悪口の大半が自身の欠点そのものであることには、腹の中で笑っていた。

 ただし、和佳奈はそれで満足だった。クラスで最も空気を読めない女の子は、和佳奈だったに違いない。同意を得たと勘違いして、こんなことを言い出した。

「ねえ、みんなもムカつくならさ、無視してやろうよ」



 まもなく、多くのクラスメイトが一帆を無視するようになった。はじめ無視をしていなくても、和佳奈の取り巻きが日和見の生徒たちを巻きこんで無視を始めると、一帆を気に入っていた同級生さえ、わざわざ一帆に声をかけなくなっていった。

 一帆もそれに気がついたようで、ついには学校でほとんど話さない子になった。

 和佳奈にしてみれば、覇権を奪われた仕返しであるとともに、日に日に迫る中学進級後の上下関係を決定づけるための闘いでもあったのだろう。無視に加わらなかったクラスメイトに対しても敵対的になるなど、その態度は先鋭化する一方だった。

 無視が続いて一か月経ったころ、一度だけ、わたしは和佳奈に諫言したことがある。

「和佳奈、そろそろよくない? もう無視をやめたって、あの子はもう生意気な口をきけるわけがないもん」

「じゃあ、無視し続けても変わらないよね?」

 こんな調子なので、わたしはこれ以上止めようと思えなかったし、ほかに止めようとする子も現れなかった。

 そんなある日、和佳奈たちとおしゃべりして、少し遅くなった帰り道だった。

 通学路は団地の中を通り抜ける。その団地に住む同級生も何人かいたはずだが、一緒に帰るほど仲の良い子はいなくて、いつもひとりで歩く。団地の中の小さな公園の脇を通りがかったとき、ふと、ベンチに座る少女に気がついた。

 一帆だった。

「こんなところで何してるの?」

 後ろから近付いて声をかけると、一帆はびくりと震えて膝の上に置いていた本を落とした。

「あ、ごめん」

 一応謝っておいたが、驚かせたつもりはなかった。むしろ穏やかに話しかけたのだから、一帆は行為ではなくわたしに対して肩を震わせるリアクションを取ったのだ。

「そんなにビビらないでよ。わたし、別に一帆が嫌いだから無視してるわけじゃないし。というか、どう考えても和佳奈が悪いってことくらい、わかってるから」

 それでもまだほっとできないようなので、少し強引かもしれないが、わたしは一帆の赤いランドセルをどかせて、彼女の隣に腰掛けた。本も拾ってあげる。

「家、留守なの?」

「え?」

「いや、こんなところで本を読んで過ごすなんて、そういうことしか思いつかないでしょ」

 一帆は黙ってこくりと頷いた。わたしから本を受け取る。バーコードが記載されたシールには、学校の名前が書かれている。

「家の鍵、持ってないんだ」

「きょうはたまたま忘れちゃったみたいで……」

 曰く、母親はパートに出かけている日が多いのだという。夕方まで帰ってこないそうだ。

「ふうん。じゃあ、何か話そうよ」

「え?」

 わたしの提案に、一帆はまた驚いた。いちいちリアクションが大きいのは、諦めることにした。怖がらせてしまったわたしが悪い。

「なんていうか、話し足りないんだよね。さっきまで学校で和佳奈たちと話してたけど、和佳奈が一帆の悪口を言うばっかりで、全然話題が広がらないの」

「……ええと」

「わたしは一帆の悪口は言わないし、まさか面と向かって言うわけがないよ。暇なんだったらいいでしょ。わたしも暇だし。ひとりでこんなところにいると、攫われるよ?」

「……帰らなくていいの?」

「うちも共働きなの」

 ランドセルに付けている巾着袋から家の鍵を取りだして見せると、ようやく、一帆は表情を緩めた。

 その日一帆とおしゃべりしたこと――好きな食べ物の話とか、雨の日の家での過ごし方とか――は、いまも忘れないでよく憶えている。なぜなら、一帆は自分から話題を提供しようとしないし、わたしも和佳奈がちらつく学校の話を切り出せないせいで、クソつまらない会話だったから。




「ねえ、話を遮って悪いんだけど」

 耐えきれなくなったというふうに、ひとりが一帆の話を遮った。

「いつまでも男が話に出てこないんだけど、一帆の初恋の相手って、そのエミって女の子?」

「うん、そうだよ。何がおかしいの?」

 何がおかしくないの? という三人の表情。

 私の友達はこんなにバカだったかな――一帆は危うくその言葉を奥歯で噛みつぶした。

「じゃあ、一帆はつまり……女の子を好きになる人ってこと?」

 もう一回言ってやった。

「そうだよ。何がおかしいの?」

 自分にとっては当たり前でも、身の回りの人にとってはそうではないと、一帆は重々承知している。聞かされる相手にしてみれば、単なる「恋バナ」ではなく「告白カミングアウト」であり、未知との遭遇にも等しい、青天の霹靂なのだ。

 それでも当然とする一帆の態度は、呆れや怒り、嘲笑など、雑多に濁った感情の表出である。

「いや、でも」友人は戸惑いの表情を引き締めて、声を張った。酔いから醒めはじめているようだった。「私は気にしない。どんな一帆でも、友達として受け容れる。そういう人がいても普通のことだもの。もう世の中、そういうのは自由でしょ?」

 残るふたりの友人も続いた。力強く頷いて、同じようなことをのたまう。

 ありがたい話ではあるし、それ相応に嬉しい。受け容れてくれない人には、何度も出会ったことがある。

 しかし、一帆に言わせれば、そういう物言いが出てくるところが「普通」でないと思っている証左であった。もし本当に「普通」ならば気を張って「受け容れる」必要はないし、世の中がどうであるかは関係ない。「自由」の尺度で議論されることでもない。それに、初恋の相手が女子だったことを根拠にレズビアンと推定したようだが、バイセクシュアルやその他の可能性はまったく思い浮かばなかったのだろうか。

 一帆は、下戸ながら酒が飲みたい気分だった。

 ところで、と口を挟む者がいる。自らの肩を抱くジェスチャー。

「もしかして、私たちも……」

「安心して。わたしにも好みってものがあるの。第一みんなだって、どんな関係の誰とでも、男ってだけでヤリたいと思うわけではないでしょ」

 ごめんなさい、と身を小さくする三人を見た一帆は、酔っ払いを相手にきつく言いすぎたと少し反省する。反省するが、間違った発言はしていないと思う。ここで冗談を聞いたときにするような愛想笑いを返していたら、一生の溝になったに違いない。

 少し教えてやるくらいの気持ちで話してもいいのかな、と思いはじめていた。




 何度か放課後に会って話していれば、一帆とは自然に親しくなった。

 怯えがちだった一帆も、わたしの態度が学校とその外とでまったく異なることを理解してからは、わたしのことをむしろ気に入ったようだった。学校では無視されるのだが、放課後になって、クラスメイトの目に触れないであろうときには、彼女のほうから歩み寄ってくることもあった。

 放課後に人目がないことを確認しては、公園でおしゃべりしていた。相変わらず一帆のほうから話題を振ってくれることは少なく、つまらない話のほうが多かったのかもしれないが、いつの間にかその時間を好きになっていた。

 そのうちに、お互いが放課後の秘密の仲を特別に思うようになっていた。

「ねえ、わたしたち、秘密のあだ名で呼び合うことにしない?」

 わたしからそう提案したのは、卒業式を間近に控えた三月だった。

「秘密のあだ名?」

「そう。特別な友情の証」

 その時期に提案した理由は、中学生になっても友情が続くことをはっきりさせたかったからなのかもしれない。

「そんなことして、和佳奈ちゃんに嫌な顔されない?」

 和佳奈も同じ公立中学校に進学する予定だった。受験をして落ちたという噂もあった。

「大丈夫、ふたりのときだけそうやって呼ぶの。ほかの誰も呼ばない、わたしたちだけが使えるあだ名。だから、秘密のあだ名。嫌かな?」

 そうすることで、和佳奈に睨まれることもなく、特別感も増す。

 一帆は白くてキレイな肌を紅潮させて、首を横に振った。

「ううん、そんなことない。特別な呼び方、嬉しいかも」

「よかった、じゃあ、何て呼ぼうかな……『いーちゃん』なんてどう?」

「……どうして?」

「一帆の『かず』は数字の『一』でしょ。だから、いーちゃん」

 我ながら安易な発想だ。でも、一帆のことを誰もそうは呼ばない。

「ふうん……」

 呼ばれる側はというと、驚いた様子であった。わたしが呼び方を決めるのにさほど悩まず、あまりにも簡単なネーミングをしたものだから、拍子抜けしたのだろう。

「一帆はわたしのこと、何て呼ぶ? 何でもいいよ」

「じゃあ……『さっちゃん』って呼びたい。咲の漢字は『咲く』って字だから」

「うん、わかった。なんだかワクワクするなぁ」

「……そうだね。これは特別、特別だもの」

 顔を合わせて、クスクスと笑った。これだけのことが楽しかった。



 ふたりの少女の特別な友情は、本当の意味で特別になってしまった。

 中学生にもなれば、グループの優劣を決定する方法が変わってくる。小学生のころは、単に他者から評価される「何か」があるだけで勢力図が決まっていたものだが、中学生では違う。小学生のころの残滓がないでもないものの、男子からの視線という物差しが存在感を主張しはじめる。

 夏休みに、一帆に告白する男子が現れた。

 それが悪いことに、異性の視線――特に和佳奈の――を最も集める男子だった。

「いーちゃんは絶対に悪くない。和佳奈は、昔からああいう子なんだし、諦めてこっちから無視してやればいいんだよ」

 ランドセルを背負っていたのが、セーラー服を身に纏うようになっても、公園のベンチにわたしたちは並んで座っていた。

 学校の話は滅多にしない。でも、二学期が始まって数日、一帆とベンチに座るのも二学期の最初という日は、その話題しか考えられなかった。学校で過ごしたほんの数日、しかも学期の最初だからまだ午前で帰宅するようなわずかなあいだに、和佳奈を中心としたクラスメイトから一帆に向けられる視線の変化を痛感していた。

「いーちゃん、いつまでくよくよしているのさ。正しい判断だったよ」

「だって、つ、付き合ってダメだったことにしたほうが、波風立たなかったのかなって」

 確かに、そのほうが付き合っているという建前が通用するあいだは、和佳奈から攻撃されることはなかっただろう。好きな男子が好きな女子に、意地悪をすることは難しい。しかし、和佳奈のことだ。カップルが成立した時点で怒り狂ったかもしれないし、その後別れることになったら、それはそれで一帆を追い詰める言動をしたに違いない。

「好きでもないのに好きって言うなんて、無理でしょ?」

 和佳奈に気に入られている彼も、どちらかと言えば悪ガキに分類されるような男子だ。たぶん一帆の顔しか見ていなかっただろうし、はっきりと拒絶しないと不幸になることは目に見えていた。

「うん……誰かを好きになったことなんて、ないもん」

 声は震えていた。彼に好かれたことは、和佳奈に限らず何人かの女子たちの憎しみを買った。隣のクラスにも、気に入らないと思う奴がいるだろう。敵だらけの環境であることを、ほんの数日で察したのだから――怯えないほうがおかしいというものだ。

 その敵だらけの状況が生まれた原因には、少しばかり、一帆の失策が含まれている。

「それならどうして『ほかに好きな人がいる』なんて言っちゃったかなぁ」

 一帆は彼の申し込みを断るにあたって、そんな嘘を吐いた。そのほうが、きっぱりと諦めてもらえるし、それ以外の理由で断ると彼の人格を否定したことになるから。

 しかし、自分の好意を保留してしまったことで、これからも男子の注目を集めることになる。男子からの視線に耐えることもさることながら、女子の反感をますます浴びることになるのは、想像するだけで恐ろしい。

「どうしよう……私、いじめられちゃうのかな?」

 たぶん、そうなる。

「そうなったら、わたしも一緒にいじめられるよ。ずっと和佳奈をシメてやりたいとは思っていたから、ぎゃふんと言わせてから潔くいじめられることにする。和佳奈はどうせ、わたしのことを仲間だと思いこんでいるもん、わたしに反撃されたらどんな顔をするか。想像するだけで良い気味だね」

 勇気づけるつもりで放った言葉に、一帆は食いついた。

「だ、ダメだよ! さっちゃんがひどい目に遭うなんて耐えられない!」

 そうだった、一帆は冗談が通じないタイプだった。学校生活に不安があるだけに、わたしの言葉を、発せられた言葉の通りに受け止めるだけでも精いっぱいなのだ。

「さっちゃんは、いままで通り特別な友達でいてくれれば、それでいいから。私はさっちゃんみたいに強くないから、大切なさっちゃんがいじめられるのは見ていられないの」

「う、うん、もちろん」

 縋りついてくる一帆に、今度はわたしが怯んでしまっていた。

「わたしは和佳奈のグループだと思われているから、関係がバレないうちは、陰でできるだけのことはする。それとなく止めようとするし、こっそり助けてあげる。和佳奈に目を付けられないように、いーちゃんを守るから」

「ありがとう……ごめんね」

 わたしの胸の中で震えて泣いていた。まだ具体的に何をされたわけでもないのに、恐ろしくて仕方がないのだ。いま、彼女にとって、頼れるのはわたししかいない。日に日に四面楚歌になっていく教室の中では、最も長く続いている友情にしか、救いを求める先がなかった。

 わたし以外にいないのだ。

 わたしが守らなければならない。




「それで、いじめられたの?」

 愚問。

 いい加減話すことに疲れを感じはじめていた一帆は、ミネラルウォーターのペットボトルを冷蔵庫から取りだした。

「いじめられたよ。女子特有の、思い切り陰湿なやつ。教科書を隠されるとか、変な噂を流されるとか。体育着が男子更衣室から見つかったこともあったね。上手なものだよ、犯人は明らかでも、証明できないようにやるんだから」

 笑みを引っ込め神妙な顔つきの三人には、いじめられた経験がないようだ。いじめと無縁だったとは思えない。ひょっとすると、加担する側だったのかもしれないし、傍観していたのかもしれない。

 やっかむつもりはないが、一帆は思う――幸せな人生を歩んできたのなら、勇気を出した親友に対して無神経なことを言うくらいには、鈍感になっても仕方がなかろう。

 冷たい水で喉を潤した。

「さっちゃんは助けてくれた?」

「うん。それはもう、何度も。隠し場所を教えてくれたり、時々行き過ぎたいじめにストップをかけてくれたりしたよ。まあ、何より嬉しかったのは、変わらずベンチで一緒に話してくれたことだけどね」

 一帆の記憶の中の咲は、嘘を吐かない人物だった。実際には、和佳奈に嫌われないよう上手に世渡りする、嘘にまみれた賢い少女だということはわかっていたが、その範囲内で一帆を守るという約束を守ってくれたのだ。澄ました顔で同級生たちを転がしながら、胸の奥には熱い正義感を抱いていた。

「そりゃ、好きにもなるよね……」

 聴衆からそんな言葉が漏れて、一帆は自分が初恋の話をしているのだと、ようやく思い出すのだった。

「それで、このあいだ再会したときの話になるんだけど――」

「え、どうしてそんなに話を飛ばしちゃうの?」

 待ったがかかった。

 強引な話の展開には物言いがあるだろうと一帆自身も想像していたので、思った通りの言動をとる彼女たちの単純さに、つい失笑してしまう。

「だって、これは恋の話でしょ? さっちゃんが私の味方をしていたのがバレて、ふたりまとめていじめられるようになって、別々の高校に進学して疎遠になった話なんて、必要ないと思うな。そのいじめも、ますますひどくなるんだよ? ほかに好きな人がいるって私が嘘を吐いたせいで、たくさんの男子を振らなきゃいけなくなって、結果ほとんどのクラスメイトの恨みを買って孤立、和佳奈ちゃんと同じ進学先の高校では、フラれた男子から謂れもなく淫乱呼ばわりされたり、男子を好きにならない気色悪い同性愛者だって噂を流されたりして、最後には不登校にもなったんだけど……そういう話をしてもいいかな?」

 嫌な顔をされた。

 いま話題は恋と愛について絞られているのだから、それでいい――一帆はそう思いつつも、つらいいじめの経験を聞かずに済ませようとする友人たちに、寂しさを感じずにはいられないのであった。




 就職も決まり、卒業論文に注力するようになってから、成人式でも顔を見せなかった一帆に、地元で不意に再会した。

「もしかして、いーちゃん?」

 団地の中を歩く、その風景に似合わないくらいの美女が歩いていると気がついたとき、それが一帆だとすぐにわかった。知らず知らずのうちに、彼女を探していたせいかもしれない。会って謝りたいと思っていたから。

「久しぶりだね、咲」

 幸福そうな笑顔にわたしはほっとしたのだが、特別でも何でもないその呼び方に、心臓にヒビが入ったかのような痛みを覚えた。

「あの……久しぶりに会って早々で悪いんだけど、ずっと謝りたかったの。ごめんね、わたし、いーちゃんを最後まで守れなくて――」

「久しぶりに会って早々で悪いと思うなら、場所を変えない?」

 彼女のその物言いが自分のそれに似ていて、わたしは心底驚いたのだった。



 駅前には色気のない居酒屋くらいしかなかった。それでも一帆は、安く済むならそれでいい、と遠慮とも諦めともつかないふうに、煙草臭い座敷の店に入ることを同意してくれた。

 コートを脱いだ彼女は、スーツを身に纏っていた。

「あ、ごめん。臭いがつくようなところで」

「この店でいいって言ったのは私だから、気にしないで。それに、なんとかできないわけではないから」

 優しい物言いの中に、どこかわたしを突っぱねるようなところがある。

 やはり、嫌われているらしい。

「きょうは何をしていたの?」

「内定もらった会社から呼ばれたの。ガイダンスみたいなものかな? 先月内定をもらったばかりなんだ」

 わたしよりも数か月遅い内定、よほど苦労したのだろう。

 その苦労の一端に、わたしがいたのだろうか。彼女のあらゆる苦悩は間違いなく、わたしが彼女に寄り添えなかったこととつながっている。

 高校生のあいだ離れ離れになっていても、彼女がいじめられているとか、不登校になったとかいう風の便りは耳に入っていた。その便りを届けてくれたのが、わたしとともに和佳奈の取り巻きをつくっていたひとりであることには、自分で自分を嘲笑してやりたい。

 場末の居酒屋にも、お洒落でおいしい甘いお酒がいくらか置いてあった。彼女が一杯しか飲まなかったので、わたしも一杯でやめることにしたのだが、お酒があるだけで雰囲気は違った。他愛無い話で一時間以上笑っていることができた。

 嫌っていてもこれだけ相手をしてくれるなら、それでいいと思えた。しかし、胸の奥に刺さった棘を抜かない限り、この時間が終わったあとにはまた息苦しくなる。一帆もそうだろう。わたしも一帆も、この苦しみから救われなければならない。

 就職に苦労した愚痴を話しているとき、わたしは決心して切り出した。

「ねえ、いーちゃん。いーちゃんに散々苦労させたわたしのことは、嫌い?」

 唐突な問いかけに、一帆は眉間に皺を寄せた。

「そんなことないよ。私を守ってくれて感謝してるし、いまでも友達だと思ってる」

「特別な友達? 途中で逃げ出して、いーちゃんを最後まで守れなかったのに?」

「うん、そうだね。特別だよ」

 相変わらず長い髪がきらきらと輝いている。アルコールで少し紅潮した頬が可愛らしい。首筋にはかつてなかった色気が浮かびはじめているようだ。大学生活でも、多くの男たちを虜にしてきたに違いない。

 そんな彼女を守り抜けなかった反省は尽きないが、それでも感謝してくれることが誇らしかった。


「ねえ、いーちゃん。私と付き合うって選択肢は……ないかな?」


 人生の中でこれほどまで勇気を振り絞ったことがあっただろうか。和佳奈のいじめから彼女を守るときにも、そうしたいからそうしたまでであって、勇気を要した経験はない。自分がいじめられているあいだも、言い返すことに恐怖はなかった。

 でも、いまは一帆の顔を見ることができない。

 一帆は穏やかな声で訊いてきた。

「咲、どうしてそんなふうに考えたか、聞かせてくれる?」

 まだ顔は上げられない。

「ずっと引っかかってたの。いーちゃんは、いないはずの好きな人がいることにして、男子からの告白を断り続けていた。でも、変だよね? 最初のうちは、適当に付き合ってから振る手もあると思っていたはずなのに、一度もそうしなかった。関係がこじれるからそうできない気持ちもわかるけれど、嘘に片をつけるほうがいーちゃんにとっては大切だったかもしれない。断り続けていじめられるなら、違う手を打とうとも考えられる。だから、最近考えるようになったの。もしかして、いーちゃんは男の人と恋愛するのが、たとえそれが形だけでも嫌だったんじゃないかって。女の人と恋をする人なんじゃないかって。噂で聞いたからそう思ったのも否定しないけれど、わたしは自分の経験からそう思うの。いーちゃんがわたしを好きでいてくれたなら、そういうことがあっても受け容れようって」

 ほかに好きな人がいるという方便が、嘘ではなかったとしたら。

 男子が代わる代わる告白しても、そのたびに告げられる方便。それがほかに好きな「男性」がいるという意味だったなら、本命がいつまでも見つからない謎が生じてしまう。でも、好きな「女性」がいたならばどうか。

 高校生たちは、それに気がついて彼女を罵ったようだが、わたしはそうしない。わたしは今度こそ、いーちゃんのそばにいたいのだ。

「咲はそれでいいの?」

「うん、迷いはない。何人か男の人と付き合ったこともあるけれど、どれも満たされなかった。でも、いーちゃんが相手なら、きっと幸せになれる。だから、わたしもいーちゃんを幸せにしたい」

 顔を上げると、一帆は穏やかな笑みを湛えていた。

「プロポーズみたいだね、びっくりした」

「ええと……」

「咲の言う通り、私は女の人を好きになる。咲のことも、ずっと好きだったよ」

 その言葉に、わたしがどれだけ救われたことか。

 涙が出るのを堪え、わたしは彼女の微笑みに応える。

「ごめんね、いままでずっと気がつかなくて。いーちゃん、生きにくい世の中で苦しかったよね。わたしが気づかなかったばっかりに、嘘に始まり、就活まで尾を引いて――」

「でも」

 息が止まった。


「ごめん。気持ちは嬉しいけれど、いまの咲と付き合う気にはなれないかな」




「でも、どうして断っちゃったの?」

「最初に話した通りだよ。わかっているようで、わかっていないから。さっちゃんは昔からそういう子だったの」

 どういう子だったのかと改めて問われ、一帆は言葉を整える。

「結局さ、正義感が自己満足だったんだよ。私に頼られて、いい気になっていたっていうのかな? 私の一番の理解者になったつもりで、私のことを勝手に想像する、そういう子なのね。久しぶりに会ったときには、申し訳なさと寂しさのせいか、悪い性癖に拍車がかかっていたのもあの子らしい。本当に申し訳ないなら、私をダシに心を満たしていたことを反省すべきなのに、まるで気が付かないの」

 咲は、和佳奈たちに一帆を庇っていたことが知られ、自身までもいじめられるようになるまで、和佳奈の取り巻きでいることをやめなかった。いざいじめられるようになると、一帆を助ける余裕はなくなり、進学後は連絡も取らなくなった。どのような事情にせよ、自分もいじめられる立場だった一帆には共感できなくもない。しかし、次第に許せなくなってしまうのも確かだった。

 最後まで風に靡いていた複雑な心境は、三人の鈍感な親友たちにも伝わっていた。

「振る気持ちはわかったけど……」

「さっちゃんに共感できなくもないというか」

 一帆にしてみれば、三人も咲の側の人間だ。共感して当然である。

 そして、核心的な問いが生まれる。

「さっちゃんをどうしても許せない、決定的なことがあったの?」

 それを訊いてほしかったのだ。一帆が散々この話を渋った理由は、親友たちに明かしておきたいもうひとつの事実にある。それを話す勇気を持てるとしたら、就職が決まり、卒業が決まり、奨学金のレポートも書き終え、友と過ごす卒業旅行最後の夜、あらゆる未練から解放されるこの瞬間しかありえない。

「それはね、呼び方なの。『いーちゃん』って、いまは平気だけど、本当は、ふたりきりのときでも呼んでほしくなかったんだ」

 咲はいつも、弱い一帆を一方的に定義した。

 交際を申し出た彼女は、一帆の苦労に理解を示しているようで、大きな誤解をしていた。

 一帆は、同性愛者であったから就活に苦戦したのではない。困る場面もないではなかったが、一帆の場合は、それほどでもなかった。なぜならば、自身が同性愛者であると伝えない限りは、そうだとは知られないからだ。そして、それ以上にひどい攻撃を受けるものを抱えていたからだ。それは、高校時代のいじめにおいても攻撃対象になった――入り口こそ同性愛でも、一度罵倒が始まってしまえば、その後はどんな要素でも人格否定のためにつぎ込まれる。

 咲は、小学生のころからずっと、一帆が秘密にしてきたそれに気がつかなかった。「いーちゃん」という呼び名は、それに少しだけ触れてしまっていた。


「私ね、本名は一帆イーファンっていうの」




「一帆の『かず』は数字の『一』でしょ。だから、いーちゃん」


 咲からそう提案されて、私の心臓がどきりと跳ねた。その呼び方は、普段学校で使う言葉から考える限り、親から隠しておくように言われた自分の本当の名前に、少しだけ似ていたから。

「ふうん……」

 私はとりあえず相槌で以て、思いがけず襲い掛かってきた緊張を落ち着けた。

 母親が私に秘密にするよう言っていたことは、名前に限らずいくつかある。親の話は学校の先生以外に聞かれてはいけないし、家の中と外とで使う言葉を間違えてはいけない。食事のときの作法や物の呼び方もいろいろと注意された。

 秘密はあっても、陰でこそこそ生きていたつもりはない。家族も自分も、やましいことはしていないのだから。でも、母から聞かされていた、秘密が知られてしまったときに起こることがあまりにも恐ろしくて、言われた通り秘密を守るしかなかった。

 曰く、秘密を知られると、少なくとも誰かひとり――それもきのうまで親しかったかもしれない人――から「出ていけ」と言われることになる、と。

 子どもに語るその話は、多少大げさなところがあったのかもしれない。それでも、それが決して嘘ではなかったことを、高校生のころと、就職活動のころに思い知ることになる。


 咲が私の恐ろしい秘密に少しだけ触れていたことに、それほどの怒りはない。知らないのは仕方のないことで、ある意味では、秘密がよく守られていたという証明である。私が一方的に警戒していて、しかもそれを口にしなかっただけのこと。

 それでも、私が女性を好きになることに気づき、私のすべてを知ったつもりでいるのなら、もうひとつの秘密にも気づいていてほしかった。それが無理な話であるならば、結局のところ、私は彼女から卒業したかったのかもしれない。許せないと感じる建前を作って、もはや頼るまでもなくなった彼女に「さよなら」を告げようと。

 細かいところで無神経だった咲と一緒になる気にはなれなかった。でも、彼女に感謝しているのも、恋をしていたのも本心だ。私は彼女からたくさんのものをもらった。

「特別」の意味を教えてくれた彼女に、私は憧れていた。


「……そうだね。これは特別、特別だもの」


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Sail 大和麻也 @maya-yamato

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