剣と魔法、時々ハーレム。

アスラ

第1話 こうして俺の無意味な日常が終わりを告げたんだ

カーテンの隙間から陽光が差し込む。朝の訪れを感じさせると同時に枕元に置いてあった携帯の目覚ましが鳴り響いた。けたたましい音に耳を塞ぎつつアラームを止める。しかし携帯の五月蠅い音とは対照的に気分は沈んでいた。もう少し布団という安寧の地で過ごしていたい。が、そういう訳にもいかず、渋々ベッドから抜け出すと無造作に制服に着替える。そして重い足取りで食卓へと向かった。

 

 食卓には誰もいない。両親は共働きで早朝から仕事に行っていて、二つ下の妹は自分と俺の分の朝食を作るとすぐに学校へと向かったみたいだ。妹特製のフレンチトーストは申し分なく美味いのだが、今朝はなんとなく食欲がないので手早くコーヒーを飲み下し、フレンチトーストを掻き込むと、通学鞄を引っ提げて玄関を出た。

通学路の途中で自分と同じ服装の集団とすれ違ったが、特段知り合いというわけでもないのでそのままスルーして電車に乗る。俺の学校は家の最寄り駅から四駅の所にあるが、電車の中で特にすることもなく窓からぼんやりと外を眺めた。海岸沿いを走る電車には初夏の爽やかな潮風が吹き込んでくる。そして水平線には数艘のヨットが浮かび、カモメが大きく空を旋回していた。

 

 景色を見ながらもの思いにふけっていると、高校近くの駅への到着を告げるアナウンスが鳴った。駅から学校までの途中で何度か同じクラスの生徒と遭遇するも。彼らは俺に眼もくれず友達と談笑して通り過ぎる。

 三年一組の教室に入ると話しかけてくるような友人と呼べる存在もいないので黙って席に着くと、腕を枕代わりにして机に突っ伏していた。授業が始まり淡々と時間が過ぎる。気付くと七限目も終わり、帰りのホームルームが始まったところだった。

 

 ホームルームが終わると部活に行く生徒、寄り道の予定を検討している生徒たちの群れがぞろぞろと教室から出ていく。俺は帰宅部に所属しているのでそのまま帰路に就いた。見慣れた通学路を歩きながら、ふと思う。俺は何で生きてるんだ?こんな無味乾燥で退屈で孤独な人生に意味を見出せるのか?

 その時だった。交差点の向こうにボールを追いかけた子供が道路に飛び出し、青信号で走ってきたトラックが見えた。その瞬間、俺は迷わず子供の下へ駆け出し、トラックが接近してきた間一髪のところで子供を突き飛ばした。しかし、ブレーキが間に合わないトラックが容赦なくぶつかってくる。それでも、こんな意味のない人間が最期に誰かの命を救ったのならばそれで満足だった。そして、ガツンと鈍い音がして死を意識するよりも早く急速に意識が飛びのいていった。

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剣と魔法、時々ハーレム。 アスラ @asura831

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