新しい靴下の消失

 靴下が消えた。

 二足セットの新しい靴下だ。リビングで開封して、寝室に持って行ったときにはすでに一足だけになっていた。

 自分の動作を思い出しながらリビングまで戻ったけれど、廊下には何も落ちていなかった。大した距離ではないし、陰になるものもない。何もないのだ。

 途方に暮れた私は、リビングにいた彼に詳しく説明した。すると、彼は腕組みをする。

「召喚されたのかな」

「召喚? 靴下が?」

「今日は寒いみたいだからさ」

「ああ、吹雪マークついてたもんね」

 隣の平行世界はもうずいぶんと寒いらしい。それにしても、靴下くらいあるだろうに。最新の発熱素材だからか。

「うーん、誰かの役に立ってるなら、仕方ないか」

 納得はいかないけど。


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2019.12.08 00:18

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夜、二人、髪の結び目を切る。 葉原あきよ @oakiyo

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