ホウセンカ

黒井 猫左衛門

ホウセンカ

※注意書き


 このお話では『世にも奇妙な●●』チックな、非現実的な現象をテーマとしています。

 ファンタジー・SFなどを好まない方は控えるべきでしょう。

 なお、読み物のくせしてこの話は決して良い気分にはさせないでしょう。

 それでも読んでみたいんだゼ! という鋼のメンタルをお持ちの方。ぜひ、お楽しみくださいませ。






 01


 雨が好きだと、葉月浩子は言っていた。彼女の言い分によると、生き物にとって雨は、天からの恵みだという。

 恵みの雨だなんて言葉はよく聞くし、葉月浩子がごく普通の女子ならば、その理由で納得がいっただろう。雨によって元気に育つ植物や生き生きと活動する動物を見るのは、ぼくでも心地いいと感じる。

 浩子は雨が好きだ。

 ぼくは雨が嫌いだ。

 具体的にいうと、雨そのものが嫌なのだ。まず第一に、服が濡れて気持ち悪い。それに、傘という荷物が増える。傘はビニールのものでも一本500円ほどするため、途中で降り出した日なんかには少々痛い出費となる。逆に途中で晴れた日には、置いていた傘を忘れがちになるため、これまた面倒だ。雨によって良い方向へ影響される生き物に関しては、前述の通りだが、やはり雨は好かない。

「雨はいいよ。自分が生きているってことを実感できる時間だもの」

 ぼくとは対照的な考えを持つ浩子は、雨に濡れながら、人生最大の幸せを噛みしめるように言っていた。


 02


 葉月浩子と出会ったのは、5月の中旬のこと。クラス中が、彼女を差別的な視線で見つめていた。

 ぼくは、人を外見で判断するような人間ではないと自負しているつもりだけど、それにしたって浩子の容姿はあまりにも個性の強いものだった。

 まず、高校生とは思えないほどの童顔で、そして低い身長をしていた。見た目年齢だけでいうなら、浩子は幼稚園児レベル。

 この時点で既に十分すぎるくらい異質だが、まわりが差別的な視線を送る理由にはならない。

 浩子の肌や髪の毛は、どこかの宇宙人と見間違われてもおかしくないような色をしていた。これは何かの病気ではないのか? 親はなぜなにも言わないのか? 親の遺伝子がなにか劇的な変化を遂げたのか? そんな疑問よりも前に、ぼくには実にわかりやすくて醜い感想が浮かんだ。

 気持ち悪い。

 浩子の容姿なんかより、こんな気持ちが湧いてくるぼく自身の方が腐敗している。反省しているはずなのに、気持ち悪いなという思いは拭えなかった。

 幸いなことに、明確ないじめは起きなかったが、かといって自分から彼女に近づこうとする者は誰1人としていなかった。

 皆は静かに嫌悪し、忌避感を募らせる。

 不覚にも、浩子を哀れに思ったぼくは、仕方なく声をかけてあげることにした。ぼくが彼女とはじめて話したのはこの時だっただろう。実に軽率で愚かしいきっかけだったと後悔している。

 話してみると、意外と楽しい人間だった。というのはぼくの小さな期待であり、実際は稚拙で騒々しい性格の女子だった。

「なにしてるの?」

「おえかきー! ひろこ、おえかきだいすきなんだー!」

「へぇ……」

「ひろこはおえかきのてんさいだから、とくべつにおまえのかおもかいてやるのだ! かんしゃするのだ!」

 そして見せてきたイラストは、顔のようなウインナーのようなものに、得体のしれないなにかを塗りたくりましたー、という実にひどい仕上がりだった。ただでさえひどい容姿に我慢しているというのに、そんな絵を見せられては、さすがのぼくも言い返してしまった。

「君の絵はお世辞にも上手とは言えないね」

「え?」

「下手だと言っているんだよ。見せてやるとか、偉そうに豪語しておいてその出来は失望した。下手の横好きってわかるかな? 簡単にいえば、ジャイアンの歌やしずかちゃんのヴァイオリンみたいなものだね。君はそういうものと同じ部類に入るんだよ。もしこれで悲しんでいるのなら謝る。ごめんね。でもさ、人を期待させておいて、がっかりした絵を見せられるぼくの身にもなってよ。ちなみにぼくの心情は最悪だね。汚い言葉になるけど、反吐が出そうなくらいさ」

 ぼくがここまで言ったところで、浩子は泣き出してしまった。話し方といい泣き方といい、彼女の言動は幼稚じみていてさらに苛々した。ぼくは子供が苦手なのだ。

 その後、騒ぎを聞きつけた先生に注意を受けた後、しぶしぶ謝ったが、ぼくが悪いなんて考えはこれっぽっちも湧いてこなかった。


 03


 浩子の絵の出来事から1ヶ月ほどが経過したある日の朝。

 ぼくが学校までの道を歩んでいると、異星人肌の女性の姿が目に映った。

 身長は浩子より40センチほど高く、肌や髪の毛のことを含めたとしても、有名なモデルや女優に負けないくらいのルックスをしていた。ぼくと同じ学校の制服を着用している為、高校生であることには間違いない。

 なるほど、浩子にはお姉さんがいたのか。転校のタイミングが姉妹でずれるのは少々不思議だが、なんらかの事情があるのだろう。

 失礼な話ではあるが、家族だというのに外見は全く似ていないものだな、と軽蔑的な思考が生まれた。

 浩子の姉はぼくの姿に気づくと、少し気まずそうな顔をしてそっぽを向いた。

 推測するに、浩子から絵の件について色々聞いたのだろう。それも、ぼくがいかに悪党であるかを大げさに脚色した形で。

 不満に感じると同時に、少しばかし納得いかない点が浮上した。どんな理由にせよ、実の妹を泣かせた者と対面した場合、睨んだり非難したりと、攻撃的な仕草を見せる気がするのだが。浩子の姉の反応は、まるで罪悪感に苛まれているかのようだった。

 しかし、わざわざ聞き出そうとは思わない。浩子の姉が顔に出ない性分かもしれないし、詮索することによって、逆上させてしまうリスクもあるからだ。

 放置。無関心。不干渉。

 自分から行動しないことこそが大事なのだ。浩子の姉がアクションしてきた場合にのみ、謝罪や反省を装った顔を作ればいい。

 結局、浩子の姉から話しかけることはないまま、教室まで到着した。

 教室までは、なにごともなかったと言っていいだろう。

 なんの冗談なのか浩子の姉は、空いている浩子の席へと腰を下ろしたのだ。

 教室を間違えたとするなら、入った時点で気付いているだろう。一体この女はなにを考えているんだ。

 ぼくが不気味がっていると、またしても浩子の姉と目が合ってしまった。彼女はなにか考えるそぶりをした後、大きな本を持ってこちらへと向かってきた。

「あの……」

 浩子の姉はまたしても、気まずそうな顔をしてうつむく。

「ええと、どうかしました?」

 思わず敬語が出たが、そんなことは気にならなかった。ぼくになんの要件だろう。

「この前は、本当にごめんなさい!」

「え?」

 話の筋が全く読めない為、「人違い」という3文字の単語が頭に浮かんだ。

「やっぱり、冷静に考えてみたら、わたしの方が軽率な行動をしていたかなって思うんです。その時の絵を随分後になって見返してみると、相当ひどいなって自分でも感じるようになって。しかも、結構偉そうなこと言ってましたよねわたし。本当にごめんなさい!」

「ちょっと待ってください。なにについて謝罪しているのかはなんとなく理解したつもりですけど、別にあなたが謝る必要ないじゃないですか」

 浩子の姉の話し方は、まるで浩子本人が謝罪しているかのような言い回しになっていたが、絵の件に関しては浩子の口から聞きたいというのが、ぼくの本音だ。

「いいえ、わたしが悪いです。実際、山本くんは相当怒っていましたし」

「……」

 やはり、とても違和感のある言い回しだ。まるで目の前にいるのが、浩子本人であるかのようだ。

「山本くん? やっぱり怒ってます?」

「いや、怒ってないです。ただ、1つ質問したいことがあるのですが、いいですか?」

「うん」

 普段は無関心であり続けるぼくだが、これだけは気にならずにいられなかった。

「あなたのお名前は?」

「え?」

「とりあえず、言ってください」

「見ての通り、葉月浩子ですけど……」

 どう見ても浩子ではないだろうと思いつつ、予想外の返答にぼくは心の底から彼女を不気味に思った。

 ひょっとしてこの女、浩子の姉ではないのかもしれないと、途中で薄々勘付いてはいたが、まさか浩子であると名乗り出すだなんて。


 04


「成長期なんですよ」

 女はそう言っていたが、全然笑えなかった。だいたい、わずか1ヶ月で40センチほど背が伸びる成長期なんて、存在するはずがない。人を苛々させる性格の、あの少女はどこへ行ってしまったというのか。

 学校を終えて下校していると、追い出されたはずの女が校門の前でこちらを見ていた。

 自分には関係ないと暗示しつつ、女を避けるように校門を出ようとしたが、案の定呼び止められた。

「山本くん」

「……」

「やっぱり、信じてくれないのかな?」

「……。では、担任の先生の名前は?」

「榎本邦彦先生ですよね」

 一切間を開けず質問に答えた女に、ぼくは驚嘆した。

「そんなにびっくりした顔をされても。いくらわたしが転校生だからって、自分の担任の先生の名前くらいはさっと覚えますよ」

 女はさも当たり前であるかのように主張しながら、苦笑していた。

「わかった。君が葉月浩子だって、信じることにするよ」

「ほんとですか!?」

「1パーセントほど」

「少ないですね……」

 当たり前だ。先ほどは驚いたがよく考えてみれば、担任の名前ならぼくの母親も一応把握している。言おうと思えば案外言えるものだろう。

「あと、敬語じゃなくていいよ。君が仮に葉月浩子だというなら、ぼくたちは同級生だろう?」

「言われてみればそうですね。わかりました。じゃあ、今からタメ口でいくね。あと、わたしのことは浩子と呼んでくれればいいよ。君だと、ちょっと距離を感じるかな」

「わかった。じゃあ浩子(仮)」

「わたしは本物の浩子だって!」

「はいはい。そういえば浩子、教室に忘れ物していたよ。これは本じゃなくて、スケッチブックだったんだね」

 そう言ってぼくはスケッチブックを渡した。すると、女は恥ずかしそうに顔を伏せた後、

「見たの?」

 と、小さな声で呟いた。

「ちょっとね。でも、この前のとは比べものにならないくらい上達していると思うよ。というかむしろ、プロの画家が描いたんじゃないかってほど上手いと思う」

 スケッチブックに載っていたのは、桃色のとある植物のイラストだった。

「山本くんはお世辞がうまいなぁ」

「いや、今回のは本当にすごいと思ったんだけど……。ちなみに、あの花はなにかな? あいにく、ぼくは植物に疎いんだ」

「ホウセンカだよ」

「ホウセンカ? あぁ、小学生の頃そういえば育てていたかもしれない」

「そうなの?」

「そうだよ。教科書にも、実際のホウセンカの写真が載っていた記憶がうっすらとある。なるほど、やっと思い出したよ。ホウセンカね」

「うん」

 いまいち反応が薄いな。ひょっとすると、子供の頃育てたことがないのかもしれない。

「どうしてホウセンカを描こうと考えたの?」

「難しい質問だなぁ。でも、しいて言えば、自分を見つめ直すためになるのかな」

 その哲学的な答えの方が難しいと、ぼくは感じた。なにかを創作する者の思考はさっぱり読めない。

「山本くんは、ホウセンカのこと好き?」

「嫌いでもないけど、好きでもないね。花に寄ってくる虫さえなんとかなればいいんだけど」

「山本くんはわかってないなぁ。そりゃあ良くない虫さんもいるけど、虫さん達がいるからこそ、花粉が遠くまで飛ぶんだよ」

 飛ぶというより、運んでもらうのだろう。

「だとしたらなおさら苦手だな。ぼくは花粉症なんだよ」

「そっかー」

「植物が嫌いとは一言も言っていないけどね」

「そっかー!」

 肩を落としたり顔が明るくなったりと、一喜一憂が激しい女だな。

「じゃあ、そろそろ帰ることにするよ。あと、その姿だといつまでも学校に入れてもらえないだろうから、なんとかした方がいいよ」

 ぼくは立ちっぱなしに疲れてきたので、家に戻ることに決めた。返事も聞かずに歩き出すと、なぜか女は後ろをついてきた。

「偶然だね、わたしもこっちなんだ」

「そうかい」

 本当に同じ方角なのか? 1人の時間が削られてぼくは少々苛々した。

 だが、その後なにも話さないまま、空き地のところで女とは別れた。


 05


 なんだかんだ言って、クラスメイトの中で1番交流があったのは、あの女なのかもしれない。といっても、女はずっと学校へと入れないままなので、会うのは必然的に放課後になるのだが。

 ぼくはほぼ毎日、嫌々ながらも空き地で女の話をぼーっと聞き流していた。女はいつも、弁当に入ったチョコケーキのような土色のものを食べながら、絵のことや花のことについてだらだらと話す。

 楽しいかと聞かれればそうでもないが、しばらくすると慣れた。時にはぼくだって反応するし、話題だって振る。

 そんな日々が過ぎていき、いよいよ夏休みとなった。もちろん空き地には行かない。というか、行く必要がない。あれはあくまで暇つぶしだからだ。

 暇つぶしであると考えているにも関わらず、夏休みから1週間後のぼくは、買い物の帰りに空き地を覗きに行った。そう、行ってしまったのだ。

 空き地に女はいなかったが、そこには全く違う大人の女性が、見覚えのあるスケッチブックでなにかを描いていた。

 身長は180くらいだろうか。相当高いことは確かだ。肌や髪の毛は、既視感のあるエイリアンカラーではなく、鮮やかな花のような色をしていた。

 ぼくは、なんて美しいのだろうと感じた。不覚にも、一目惚れだった。

 女性はぼくに気づくと、おとなしい笑顔で手招きしていた。

「山本くん、久しぶり」

「……」

 透き通るような綺麗な声に、ぼくの心は震えた。女性のあまりに人間離れしている美しさに、ぼくはすでに虜となっていた。

「久しぶり、浩子」

 女性が、浩子であり、あの女であることに、不思議と違和感はなく、自然と言葉は出ていた。ぼくは買い物袋を落とし、吸い寄せられるように近づいていく。

 隣に腰を下ろしたぼくは、静かにスケッチブックを見つめた。

「ホウセンカがたくさんだね」

「そうね」

 浩子は機嫌良さそうに、絵の続きを描いた。

「みんなを描いている時と、山本くんと談笑している時が、私の数少ない幸せな時間なのよ」

「そうなんだ」

 その後、浩子は静かに絵の続きを描き、ぼくは黙って絵の観察を続けた。

 どのくらい時間が経過しただろう。

 日が暮れ始めた頃に、浩子の絵は完成した。とても素敵な絵だった。1つ1つのホウセンカが嬉しそうにしている気がして、見ていてなんとも微笑ましいものであると、ぼくは思う。

「ぼくさ、浩子と出会ってから、だんだんホウセンカが好きになっていったんだ。いや、違うな。自分でもびっくりだけど、たったいま好きになった」

「……」

「浩子の描くホウセンカをいつまでも見ていたい。浩子をいつまでも見ていたい。今のぼくにはその気持ちしかないよ」

「……」

 浩子は黙ったままだ。素直な気持ちを伝えたつもりだが、なにか気に障ってしまったのだろうか。

 すると浩子は、ホウセンカの絵が載ったスケッチブックをぼくに渡してきた。

「山本くん。あなたに、この絵をあげます」

「え?」

 ぼくが戸惑いながら、スケッチブックを受け取った時。

 ぼくの唇に、柔らかなものが触れた。

 それが離れた後、浩子は、一瞬の出来事でさらに混乱したぼくに言い放った。

「私も、山本くんにいつまでも見てもらいたいな」

 ぼくと浩子は、その日朝まで空き地にて、激しく愛を確かめ合った。


 06


 ぼくは激しく後悔した。あの時のぼくはどうして軽率で考えなしだったのかと、ひどく頭を悩ませた。

 夏休みの終わり頃、浩子の腹部は大きく膨れ上がっていたのだ。

「私と山本くんとの、赤ちゃんだね」

 ぼくは気持ち悪くて仕方なかった。

 2ヶ月前の行為から、こんな短期間で妊娠に至ってしまっていることに。

 そして、浩子の腹部が、岩の集合体のようにゴツゴツした形になっていることに。

「ねえ、さわってみてよ」

 さわるのもおぞましいと感じると同時に、どうしてこのような状態となってしまったのか、知っておきたい気持ちもあった。

 不干渉をモットーとするぼくはもう、消えてしまったらしい。

 ぼくは恐る恐る、浩子の腹部に手を当てた。

 その時。

 パアン!

 浩子の腹部が凄まじい音を立てて破裂した。思わずぼくは尻餅をついてしまった。そのせいで、浩子の腹部の中にあったものがぼくにかかる形となってしまった。

「あああああああああああ!」

「ふふふふふふふふふふふふ」

 無数の小さな黒い粒達が、ぼくの顔へと襲いかかる。浩子は倒れることなく、ただただ笑っていた。

 この場を逃れようとしたが、腰が抜けてしまっているのか、思うように立てない。ぼくは必死に這いずり、浩子から遠ざかろうとした。

「山本くん、どこに行くの? お祝いしましょうよ」

 体を損傷しているというのに、一滴も血を出さず、しかし、黒い塊をぽろぽろ落としながら、ぼくへと向かってくる。

「近づくな!」

 ぼくの叫び声に怯んだ様子を見せた浩子は、悲しそうな顔をする。

「どうして、そういうことを言うのかな?」

「その化け物みたいな体が気持ち悪いからに決まっているだろ! さっさとどっか行ってくれ!」

 浩子は相当ショックだったのか、泣き出しながらゆっくりと、どこかへ進んでいった。


 結末


 家に戻ると、一気に疲れが押し寄せたぼくは、着ていた上着やズボンを部屋に放り投げて下着姿になった後、思いっきりベッドに飛び込んだ。

 あの黒い粒にはどこか見覚えがあった。それを見たのは小学生の頃だっただろうか。

 だがもういい。黒い粒も、あの化け物じみた彼女も、今は考えたくもない。

 ぼくはなにかとてつもない不安に駆られながら、1日を終えた。

 そして、浩子の腹部の件から1週間が経過したが、特に何事も起こらなかった。とはいえ、ぼくは浩子との再会を恐れ、学校から家まで、いつもと違うルートで帰ることにしているので、それが幸いしているのかもしれない。ぼくはどんなことがあろうと、あの空き地には絶対行くまいと心がけた。

 心がけていたからこそ、ぼくは違う意味で油断していたのだろう。

 その日もぼくは、しっかりと空き地を避けて家へ戻り、自分の部屋のドアを開けた。


 部屋は、何十人もの宇宙人のような緑色の肌の赤子達で埋まっていた。


 それを見たぼくはしばらく固まり、ひとしきり笑った後、気を失った。






 あとがきのような解説のようなもの

(ネタバレを回避したい方は、先に本編を読むことをお勧め致します。)


 どうも、オーロラ猫です。

 初めましての方、お久しぶりですという方、『ホウセンカ』を読んでいただき、本当にありがとうございます。あとがきが先の人もいるのかな? ぜひぜひ本編の方も読んでみてください。

 今回の話のテーマはタイトルの通り、「ホウセンカ」。

 ざっくり解説すると、ホウセンカが成長し、肥料を得て開花した後、実を残します。そして、今度はできた種が成長していく、という感じですかね。

 なんか、ものすごく理科っぽい話に聞こえますね……。ジャンルはホラーに設定してあるんだけどなぁ。

 ホウセンカの実に触れると、そこから種が飛び出すそうなのですが、この光景を擬人化したらなかなか血生臭いことになりそう……。って戦慄したのが、『ホウセンカ』を書こうと思ったきっかけですね。

 ここから先は余談になりますが、ボクが小学生の頃にはホウセンカ以外にも、アサガオやチューリップを育てました。

 ホウセンカとアサガオはうまく育った記憶があるのですが、チューリップだけはたしか水のやりすぎで腐らせちゃった記憶があるなぁ……。あの時のチューリップさん、本当にすみませんでした。

 でもやっぱり、昔のボクは変に生真面目だったというか。花は水をあげればあげるほど、どんどん成長する生き物だと思い込んで、うきうきしながら洪水になるほどにあげてましたね。なにやってんだよボク。

 それでは、あとがきを終えたいと思います。

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