最終巻 愛華・美樹・政樹の新作は無事に完成するのか?それぞれの想いを胸に、これまでの気持ち、そしてこれからの気持ち!
政樹「愛華・・・」
愛華「・・・・・・・・・先輩・・・って言ってた」
政樹「あぁ、そうだな・・・」
何分?何十分?どれだけ時間が過ぎたのか私には分からなかった。
ただ、私の中で強く残っていた美樹ちゃんの言葉・・・
もう・・・「師匠」じゃなくなってしまったのかな?
美樹ちゃんの中で私はもうただの学校の先輩になってしまったのだろうか?
そう思った途端、私の目から溢れんばかりの涙が流れて来た。
政樹「愛華、お前は何も悪くない。俺が保障する!」
愛華「・・・・・・・政樹・・・」
バタンッ!!!
政樹「おい、愛華!愛華しっかりしろ!愛華、愛華ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
総合病院
担当医師「随分と無理をされていますね。目の下にもクマが出来ていますが、何より子の状況のまま、万が一倒れなければきっと過労死になっていても不思議ではありませんでした。一先ず、安静にして様子を伺いますが、まだお若いのに・・・」
茜「ご迷惑をお掛け致しました」
政樹「・・・・・・・・・・・・」
愛華は過労で倒れた。ここの所ずっと張り詰めていた状態が続き、身体が限界に近かったのだろう。本人はそれすら隠しながらずっと耐えていたのだろう。俺がもっと早く止めておけば良かった。俺が変な事言って2人に意欲を奮い立たせてしまった事が災いとなったのだろう。
茜「政樹君、ありがとう・・・」
政樹「いえ、俺は・・・ごめんなさい。俺が・・・俺が愛華たちをやる気にさせてしまったから・・・秋月さんたちも学業や自分の連載などで大変だろうからって気を遣ってくれていたのに・・・俺が、彼女たちを追い込んだんです」
茜「ううん、貴方はむしろ愛華たちを助けてくれていると思う。愛華は貴方が死んでしまったと思って絶望の淵に立たされていた。けれど貴方が無事でいてくれて、愛華が会いに行った時にちゃんと応えてくれた。それからあの子は更に成長する事が出来た。これは嘘偽りの無い事実・・・貴方があの子を助けてくれたの」
政樹「茜さん・・・」
それでも俺は自分を責めた、俺は俺の加減で物を言っていた様に思った。
俺なら耐えられる事が必ずしも他者が耐えられるとは限らないからだ。
俺は表面上で考えた振りをしていただけに過ぎない。愛華や美樹ちゃんの本当の気持ちを考えずに、ただ己の感覚だけで、感情であの様な事を言ってしまった。
穂希「はぁはぁはぁはぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・こんばんは・・・連絡受けて急いで駆けつけたのですが、愛華ちゃんが倒れたって聞いて・・・」
茜「ごめんなさい、不安にさせてしまって・・・今、ようやく落ち着いた所で、しばらく入院すれば回復するだろうって・・・」
穂希「そう・・・ですか。しばらく周りから様子を伺っていたのですが、私が想像する以上に彼女に負担が掛かってしまっていた様子ですね。もう少し早く私も気付いていれば声を掛けられたのに・・・」
茜「ううん、そんな事はないわ。そうやってあの子の事を考えてくれているだけでどれ程彼女が報われた事かと考えると頭を下げても下げ足りない程だから・・・」
穂希さんは大急ぎで向かってくれたのだろう。汗をかきながら息も切らして駆けつけてくれた。
小波「こんばんは。ご連絡頂いて駆けつけました」
舞「茜!愛華ちゃんは?」
茜「こんばんは。お忙しい所、恐れ入ります。舞、ごめんね?今落ち着いた所だから・・・しばらく休息する様に入院する事になったわ」
急いで秋月さんと舞さんも駆けつけてくれた。
秋月さんと舞さんも愛華の様子がここの所違った為気に掛けてくれていた。
舞「すまない。私が追い打ちを掛けてしまったよ・・・」
茜「丁度今、政樹君ともお話していた所だったんだ。彼も自分を責めている。でもそれは違うって・・・貴女も、自分を責めないで?お願いだから」
小波「いいえ、今回の一件は私に非があります。3人に負荷を掛けてしまった経緯は十分にあります。3人だけで決断させてしまった私に非が・・・」
茜「秋月さんもどうかご自分を責めないで下さい。愛華に可能性を頂けた恩人なのですから。これは愛華自身の問題なのかも知れません」
茜さんは涙を浮かべながら舞さんと秋月さんにも同じ様に告げた。
舞「茜・・・すまない。君にも辛い思いをさせてしまった」
小波「・・・・・・・・」
強く茜さんを抱き締める舞さん。きっと俺と同じ様に自分を責めていたのだろうとこの時俺は感じた。
しばらくして、クラスメイトたちもやって来た。
夏葉「愛華さんが倒れられたと伺って・・・」
智也「大丈夫なんですか?」
茜「ありがとう。えぇ、愛華は病室にいるわ。少し疲れが溜まってしまっていたみたいだからしばらく入院して回復させる事になったの。ごめんなさいね?」
この後もクラスメイトや愛華の知人たちが様子を伺いに来てくれた。
その中に美樹ちゃんの姿は無かった。でも、片桐さんがやって来てくれた。
加奈子「こんばんは。すみません、遅くなってしまいました、愛華先輩のお体の方は?」
政樹「あぁ、しばらく入院する事になったけど安静にしていれば回復するみたいだ。騒がせる事態になってしまって、ごめん」
加奈子「いいえ、随分とここの所頑張っていて顔色も悪いと言う事を聞いていましたから・・・ごめんなさい、美樹も呼んだのですが・・・」
政樹「いや、美樹ちゃんは美樹ちゃんで色々と思う所があったんだろう。仕方無いよ」
加奈子「加賀谷先輩・・・」
翌日の学校・・・
夏葉「愛華さんはずっと自分を追い込んでしまわれていたのかも知れませんわね。ですがこればかりはご本人でしか分かり兼ねない事・・・ですが」
智也「強いんだよ・・・いや、強過ぎるんだよ。だからいつも耐えて耐えて耐え忍んで・・・」
政樹「・・・・・2人とも・・・」
心配そうな表情を浮かべながら2人は語った。
愛華はきっと今を大切にしようと頑張っているんだろう。
俺の事故の一件から愛華は変わってしまったのかも知れない。
俺がいない間の事も色々とこの2人や愛華自身の口からは聞いていた。
だから、今を頑張って生きる、生きた事を後から証明出来る様に頑張っているのかも知れない。
更に数日後の放課後・・・
政樹「さっき連絡が入って、愛華、早ければ来週退院出来そうだって」
夏葉「あら!それは良かったですわ!退院祝いも何かしなくてはいけませんわね!」
智也「そうだな。盛大に・・・夏葉の自宅でパーティーと洒落こもうか?」
夏葉「あら?智也がそれを言うのかしら?それは私のセリフですわ」
政樹「ありがとう!」
愛華の退院の連絡が入り心をなで下ろしていた時だった。学校の門を出ようとした所で2人の女子生徒が俺たちの方へ歩いて来た。
加奈子「ほら、美樹?・・・ちゃんと理由を説明しようよ?」
美樹「・・・・・・・・う・・・ん・・・」
片桐さんに諭されながら美樹ちゃんが重い足取りでこちらへ来た。
政樹「最初の頃の様だね」
美樹「あの・・・」
重い口を無理矢理開けて何かを告げようとしていた美樹ちゃん。
だが既に俺は美樹ちゃんの考えている事が手に取る様に分かっていた。
きっとこの後美樹ちゃんは謝るだろうと・・・どうしてあの様な事を言っていたのか、途中まで順調に進んでいた新作の仕事を拒んだのかを・・・
美樹「私、間違っていましたか?」
謝るとばかりに思っていた彼女の言葉は全く別の角度から入って来たのだ。
俺は一瞬焦ったけれど・・・
政樹「いいや、間違っていたのは俺の方だよ」
これは、俺が2人を追い詰めた事に対しての言葉だ。
美樹「なら・・・良かったです」
政樹「あぁ・・・」
美樹「・・・愛華先輩は?」
政樹「無事に退院だそうだ・・・このままいけば来週には・・・」
美樹「そうですか・・・それじゃぁ、さようなら」
政樹「なぁ、美樹ちゃん?愛華ってどう言う人間だと思う?」
美樹「え?・・・愛華先輩ですか・・・そうですね。優し過ぎる人だと思います・・・それでいて、繊細な・・・壊れやすい存在でしょうか?」
政樹「分かっているんだな。何年経っても分からなかった俺と違って美樹ちゃんはほんの数年も経たない時間で愛華の事をしっかりと知ってくれていた」
美樹「分かりますよ。香波愛華さんは・・・愛瀬瑠奈先生は私の・・・私の・・・」
そこまで告げると美樹ちゃんはそれ以上のセリフを口に出来ないまま座り込み大泣きしてしまった。
俺はそれでもその続きの言葉を求めようと何もせず彼女の口から直接その言葉を聞こうと待った。
加奈子「美樹・・・」
夏葉「・・・・」
智也「・・・・」
美樹「私の・・・最愛の師匠だから・・・」
政樹「ありがとう、美樹ちゃん」
これで確信する事が出来た。あの日、どうして美樹ちゃんはあの様な事を言ったのかを。
後は、愛華が戻ってくれるのを待つだけだ。
だが、今回の一件で俺は二度と同じ様な状態を繰り返さない様に2人を助けなければいけない。
愛華退院の日・・・
担当医「無理だけは謹んで下さい。人間1人が出来る事と言えば限られています。限界を越えてしまう事は大変危険な事です。ご自身の身体の事をしっかりと見つめて下さいね?退院おめでとうございます。大切な人の為にも、先ずはご自身の身体を労(いた)わって下さい」
愛華「はい。ご迷惑をお掛けしました。これからはもっと自分の事を考えていきます。皆もきょうは忙しいのに来てくれてありがとう♪凄く嬉しいよ」
少しくどく担当医に叱られながらも愛華の退院の日に集まってくれた仲間たちに対しては笑顔で喜びを告げた。
そして退院祝いだと言っていた夏葉や智也の企画で俺たちは夏葉の自宅へ招かれた。
夏葉「きょうは清々しい晴れ模様でまるで愛華さんの退院を祝福してくれているかの様ですわね!皆さま、お集り頂き深く感謝致しますわ。きょうは心行くまでお楽しみ下さいませ」
♪パチパチパチパチパチパチ~
愛華「色々とごめんね?迷惑掛けちゃったね」
政樹「いいや、俺が背中を押し過ぎたせいで・・・本当にごめんな?」
愛華「ううん!これは誰のせいでも無いんだ・・・」
そう言って愛華は祝福してくれている空を見上げながら何故だろう?少し物憂げに告げた。
政樹「美樹ちゃん・・・」
愛華「うん・・・分かってるよ」
政樹「お前は察しが良いな?俺とは違って・・・」
愛華「まぁ、あの日突然あんな事を言い出したから驚いちゃったけど、急に止めちゃうとか言うような子じゃないから・・・」
政樹「最愛の師匠だってさ」
愛華「そうなんだ・・・最愛の・・・師匠か・・・ごめんね・・・うっ・・・うぐっ・・・」
政樹「愛華!?どうしたんだ!?突然泣き出して?」
俺は慌てた。突然泣き崩れた愛華が何処かか弱くて手の届かない所に行ってしまう様な悪寒がした。理由は分からないけど、無性に怖くなって、息が出来ない程に苦しくて・・・
夏葉「愛華さん!?如何なさいました?」
愛華「ごめんね?ごめんなさい・・・ちょっと、色々と思い出しちゃったから・・・うっ・・・でも・・・大丈夫・・・大丈夫だよ?」
夏葉「愛華さん・・・あまりご無理はなさらないで下さいね?もしお疲れのご様子でしたら日を改めますのでご遠慮なく仰って下さいませ?」
愛華「あ、ありがとう・・・大丈夫だよ!元気だから・・・ね?」
愛華の顔色が病院を出る時、いや、今日会った時から悪い様な気がした。
誰も気が付いていないのだろうか?それともしばらく入院していたからだろうか?
だが、この時俺は凄く嫌な予感がしていた。
数日後・・・
美樹「あの・・・その・・・」
愛華「・・・・・・・・・・・・」
政樹「えぇっと・・・」
美樹「どうしてですか?どうして・・・どうして隠すんですか?」
美樹ちゃんが話だした時俺は話の意図が全く見えなかった。
てっきり愛華に詫びを入れるのだろうと思っていたから・・・
だが、美樹ちゃんは表情を硬くして愛華をじっと見つめながら言った。
愛華「ごめんね?・・・」
美樹「謝るって言う事は自分が悪い事をしていると言う自覚があるからですよね?」
愛華「うん・・・そうだよね・・・悪い事・・・になっちゃうのかな・・・」
美樹「そんなに私たちの事を信用出来ないんですか?私が何を思ってこんな事言っているのか分かっているんでしょう?だったらどうして正面から向き合ってくれないんですか?」
愛華「それは・・・」
政樹「美樹ちゃん!?何を言ってるんだ!愛華は色々と考えがあってだな・・・ったく、ちゃんと分かってくれたのかとばかり思っていたのに・・・」
美樹「時間がありません!愛瀬瑠奈先生じゃなくて、今は香波愛華先輩に向けて話をしているんです!私が愛している愛瀬瑠奈先生じゃなくて、私が尊敬している香波愛華先輩に言っているんです!貴女はそんな軽薄な人間だったのですか!?」
政樹「いい加減にしてくれ!愛華は病み上がりなんだぞ?もっと考えろ!!」
俺は何故か感情的になってしまい、美樹ちゃんに怒鳴り付けてしまった。
政樹「ご・・・ごめん・・・けど、今のは酷過ぎるんじゃないのか?」
美樹「こうして貴女を大切に想ってくれている人たちに偽りの自分を見せ続けるのですか?最終的に絶望させちゃう事は貴女なら容易に分かる事じゃないんですか!?」
政樹「美樹ちゃん・・・本当にいい加減にしてくれ・・・愛華は・・・」
愛華「ごめん、政樹・・・美樹ちゃんの言っている事は正しい事なの。でも、今は、今は・・・まだ・・・言えない・・・」
美樹「じゃぁ、私もお仕事の件は再開出来ません」
政樹「一体どうしたって言うんだよ?2人とも何かあったんだろ?ちゃんと俺にも説明してくれよ?」
美樹「私、帰ります」
こうして険悪なムードのまま美樹ちゃんは帰ってしまった。
だが、俺の嫌な予感が的中してしまったのであれば、この2人に生じている展開はきっと俺を絶望の淵へと追いやる事になるだろう。
愛華「政樹・・・悪いけど、新作の件はこのまま2人で続けよう?」
政樹「おい、それ本気で言ってるのか?」
愛華が妙にらしからぬ事を言い出した。
その様子から捉えられる事と言えば、何か焦りを感じている様な俺が初めて目の当たりにする愛華の感情だった。
愛華「もう・・・時間が無い・・・から」
政樹「時間が無い?・・・どう言う事だ!?落ち着いてからでもいいだろ?お前は身体を壊していたんだぞ?少し休んでからでも間に合うはずだろ?何かあれば俺からも言ってやるから・・・それに秋月さんたちもそんな急かす事なんてしない!お前が入院している時にも色々と話をしたから、だから・・・」
愛華「ごめんなさい。早くしなきゃ私の意欲が無くなっちゃうの。だから今ならまだ出来ると思うから・・・」
妙に消極的な言い方をして来る。
いつもの愛華なら事が落ち着いてから進める事でさえも焦っている気がする。
ふと頭に嫌な感覚が走った。だがこれを言ってしまえば、この疑問を愛華に投げかけてしまったら俺は終わる気がしていた。だからこの時俺はこれ以上何も言わなかった。
1週間が経過した頃、部屋で執筆していた愛華とイラストをイメージしながら描いていた俺は、無言で作業を続けていた。すると・・・
愛華「ねぇ、政樹?このお話の結末ってハッピーエンドにしたい?それともバッドエンドにしたい?」
突然愛華は重々しい口調で尋ねて来た。
その質問に俺は・・・
政樹「勿論、ハッピーエンドが良いんじゃないのか?って言っても書くのは愛華自身だし、この作品って俺たちの現状をテーマに書いているんだよな?だったら言わなくても分かるんじゃないのか?」
愛華「そう・・・だよね。私たちの事をテーマに書いているから・・・うん、ありがとう。決まった!結末、決まったよ」
久しぶりに見た愛華の笑顔は何処か遠くを見つめる様な切ない感じがした。
この状態が1週間ほど続いた。
やはり、美樹ちゃんがいない今の状態は大切な物が抜けている空虚な状態に思えてならない。このまま愛華が執筆を続けていてもきっと満足出来る結末には到底及ばないだろうとこの時俺は予感した。
愛華の描いた結末、一応完成と言う事になるのだろうか、秋月さんも自宅へ呼び確認しておらう事にした。
小波「・・・・・・・先生らしさが何処か途中から抜けてしまっている気がします」
愛華「・・・・・・・・・・」
小波「まなせ先生が戻られるのを待つ事は出来ないのでしょうか?」
愛華「・・・・・・・・はい。きっと彼女はもう戻っては来ないと思います」
小波「・・・・・・・・これは、ある2人の少女の行き違いが生んだ物語・・・」
政樹「秋月さん?」
小波「2人はとても仲が良くて常にべったりだった。ところがある日、この2人の仲がすれ違う事になります。理由はとってもシンプルなもので、お互いを大切に想うその想いからだったのです。片方の女の子は家の事情から遠くへ引っ越しする事になりました。この子の事をAちゃんだとします。その事をもう1人の女の子、Bちゃんね、そのBちゃんに伝えるべきか、引っ越しする事を聞いた直後から引っ越しをするまでの間ずっと悩んでいました。このまま引っ越しをしちゃったらもう会えなくなるんだと・・・その期間は一時的なものなのか永遠のものなのかその時の少女は真剣に悩みました。そうこうしている内にBちゃんは悩んでいるAちゃんの様子に気が付きました。ずっと一緒にいたから分かるんだと・・・Bちゃんが「お姉ちゃんは何を悩んでいるの?」と尋ねました。するとAちゃんは「大丈夫」とただただそのセリフだけを繰り返しました。Bちゃんはいつも「大丈夫」だと言うAちゃんの事が心配になって来ました。ある日、BちゃんはAちゃんに思い切って話を持ち掛ける事にしました。Bちゃんはいつもとは違った面持ちで真剣に怒る様にして「Aちゃん、私に何を隠しているの?大事な事なんじゃないの?私だってそのくらい分かるんだよ?」・・・と、その目は強く芯が通っていました。Aちゃんはその時も「大丈夫だよ?」と笑顔でその様に答えました。さて、ここからクイズを出しちゃいます。この後この2人はどうなったでしょう?」
政樹「秋月さん・・・それって・・・」
愛華「・・・・・・」
小波「分からないですか?じゃぁ答えを言いますね。BちゃんはAちゃんの頬を叩きました。そこから2人は喧嘩を始めちゃいました。いつも穏やかで優しい笑顔を見せていたAちゃんもこの時ばかりは必死にBちゃんの事を叩き怒鳴り合ったのです」
愛華「・・・・・・・」
小波「Bちゃんは言いました「どうしてAちゃんはいつも耐えようとするの?辛い事とか苦しい事とかあったら誰かを頼っていいんだよ?Aちゃんの為なら私なんでも出来る!して見せる!だからお願い、私を信じて?私に甘えて?」と・・・それを聞いたAちゃんは引っ越しの事を正直に伝えました。BちゃんはAちゃんが1人で抱えている枷を外したかった。Aちゃんは自分がいなくなる事によってBちゃんを悲しませたくはなかった・・・」
愛華「私・・・Aちゃんと同じだ・・・」
小波「分かります。愛華ちゃん、辛いよね、苦しいよね・・・でもね?そんな辛くて苦しい事なんて1人で抱え込む必要なんて無いの!貴女が隠そうとしている事は相手を、皆を悲しませたく無いから・・・Aちゃん・・・つまり私と同じなのだと・・・」
政樹「秋月さん・・・」
小波「貴女はとても優しい子、それでいて繊細・・・数々の苦難を乗り越えて来た強さは持っているけれど、それには荷が重過ぎた・・・貴女は望めば生き続ける事は十分に可能です。ですが、私は・・・私は、余命宣告を受けています。だから・・・貴女には生き続けて欲しい。まだまだ若いし才能が開花しきれていない。周りには貴女の事が大好きな優しい人たちで埋め尽くされている。だからこそ、今、自身に降りかかっている事実と向き合って、皆に応援してもらって、人生を謳歌して欲しいの!これは・・・1人の弱い女の子がある1人の強い女の子が挫折しようとしている時に心の底から願ったただ1つの望みのお話・・・香波愛華ちゃん?1人の雑誌編集者からでは無く、出逢ってから今日まで関わりを持って接して来た秋月小波と言う1人の脆くて弱い女性からの最期のお願いです。どうか・・・どうか外国へ行って手術を受けて下さい。お願いします。本気でお願いします。悲しませずに済む人たちに悲しませないで下さい。生きる事が出来るのにそれを拒まないで下さい。私が貴女に惚れ込んだあの作品の主人公・・・そう、貴女の強い気持ち、想いをどうか・・・どうかこの先も持ち続けて下さい」
愛華「秋月・・・さん・・・どうして?・・・秋月さんが余命宣告って?・・・」
小波「私は治療は不可能です。それだけ進行しています。今はこうして無理矢理健康状態を維持出来ていますが、そろそろ難しい・・・いいえ、せめて3人の新刊が出せるまでは生き続けようと考えていました。ですが、このお仕事で愛華ちゃんたちを逆に苦しめてしまった様ですね。本当に人生って上手くいかない事だらけですよね・・・ケホッ、コホッ・・・ごめんなさい。薬を飲んでも症状が現れてしまう様になって・・・ゲホッゲホッ・・・」
愛華「そんな・・・秋月さんが・・・秋月さんが!?」
小波「今は私の心配なんてしている場合じゃないですよ!?ちゃんと美樹ちゃんに・・・まなせ先生に・・・」
愛華「はい!私、目が覚めました!ごめんなさい。ちゃんと、ちゃんと3人で新刊が出せる様に頑張りますからどうか・・・どうかちゃんと見て下さい!」
秋月さんの事実を知り私はこんな事をしている場合じゃないと悟り、急いで美樹ちゃんに謝る為に会う約束をした。
近所の公園にて・・・
美樹「先輩・・・お話はなんですか?」
愛華「美樹ちゃん私は大丈夫だから・・・」
美樹「何が大丈夫なんですか?全然大丈夫そうじゃありませんが?目の下のクマ、顔色は悪くなる一方・・・そんな状態になっているのにまだ強がりを言っちゃうんですか?」
愛華「うん!私はこれから先も生きるから!絶対に生きて見せるから!大丈夫・・・」
美樹「まだそんな事言っているんですか?もういい加減にして下さい!」
タッタッタッタッタッ・・・
愛華「1歩ずつだけどちゃんと、確実に美樹ちゃんの所まで歩いて来たよ?私が生きた証、生きている証拠だよ?」
美樹「止めて下さい。もう、私なんかの事は放っておいて下さい!」
愛華「ごめんね?・・・いっぱい、いっぱい愛華を愛してくれて・・・美樹ちゃんの優しさはずっと感じていたよ?だからあの日も凄く苦しくて辛くて・・・でもそれは私がいけないんだって分かったから・・・だからもう・・・大丈夫」
美樹「うぅぅぅ・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん愛華先輩、愛華せんぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい私、私~・・・・」
愛華「大丈夫、大丈夫だから・・・」
舞「一体何が起きたのか心臓が止まりそうだったけれど、お姉ちゃん、話をしたんだね?」
小波「えぇ・・・ゲホッ、ゲホッ・・・愛瀬瑠奈先生・・・いいえ、香波愛華ちゃんは、私に・・・そしてまなせ先生・・・片桐加奈子ちゃんは貴女・・・何だか自分を見ている様な気持ちになるわね?あの時、貴女にぶたれなかったら気付かなかった貴女の本当の気持ち、嬉しかった・・・」
舞「お姉ちゃん・・・あぁ、そうだね。私もお姉ちゃんに覚悟を決めて向かい合った事を誇りに思うよ」
それから私たちは再び小説の続きを完成させた。
小波「ごめんなさい・・・ゲホッ・・・ゲホッ・・・病室なんかでお仕事の段取りなんて・・・」
愛華「いいえ!少し長いですが3人で考えながら創り上げました。どうか、ご査収下さい」
小波「えぇ、チェック入れます。少し時間を要してしまいますが必ずご連絡差し上げますのでしばらくお時間を・・・」
こうして秋月さんに完成した原稿を渡して私たちは帰宅した。
美樹「じゃぁ、これから手術を受けられるんですね?」
愛華「うん、もう私も放置していたら長くは無いって宣告受ける直前みたいだし・・・何とか本が出せたら直ぐにでも・・・」
政樹「秋月さんが言っていた通り、お前は生きる事を望めば生きられるんだからな。それにしても何か秋月さんや愛華たちは運命的な出逢いなんじゃないかなって思うんだ」
愛華「そうだね・・・私もここの所ずっとその事を考えていたよ。秋月さん、本当に凄い人だけど、どこか儚い感じはしていたから・・・」
こうして秋月さんに原稿を直接渡した翌々日の事だった。
愛華「はい、直ぐに向かいます!」
病院から連絡を受け直ぐに秋月さんの病室へ向かった私たちは・・・
小波「はぁ・・・はぁ・・・ご・・・めんなさい・・・息が続かなくて・・・はぁはぁ・・・原稿・・・バッチリでした・・・訂正箇所はいつもの通りです・・・はぁはぁ・・・店頭に並ぶまではせめて・・・そう、思って・・・いましたが・・・はぁはぁ・・・どうやら・・・それも・・・叶わない状態・・・のようです・・・はぁはぁ・・・どうか、皆さんは・・・生き続けて・・・下さい・・・・はぁはぁはぁ・・・最期に・・・今まで・・・ありがとう・・・はぁはぁ・・・ござい・・・ました・・・愛華ちゃん・・・はぁはぁ・・・どこか私と・・・似ている気が・・・しました・・・美樹ちゃんは・・・舞と・・・はぁはぁ・・・これからも・・・2人仲良く・・・絆を深めて・・・下さい・・・愛華ちゃんは・・・政樹君がいるし・・・頼りになる・・・彼氏が・・・はぁはぁはぁはぁ・・・うっ・・・ダメ・・・最期に・・・ううっ・・・皆・・・しあわせに・・・ね?・・・・・・」
皆の幸せを願い秋月さんは逝ってしまった。
私たちは黙ったまま涙を流しながら立ちすくんでいた。
自宅にて・・・
舞「お姉ちゃん・・・小波は無事にあっちの世界へ旅立てたと思います・・・本当に今までお世話になりました。それから、葬儀の方も色々とお世話になり、深く感謝致します。きっと向こうの世界でゆっくりと好きな小説を堪能しているはずです」
淡々と話をしているはずの舞さんは見えない様に唇を強く噛みしめ一言一句強く話をしてくれました。
きっと誰よりも苦痛で叫びたいことだろうと思った。
書籍発売日・・・
愛華「じゃ、じゃぁ、この企画を立ち上げたのは・・・」
舞「実は私なんだ。小波が望んでいた事でもあるけれど、小波の容体に異変が生じ始めていた事を感じた私は最期の大役を務めて欲しくて・・・ああ見えて彼女は脆いから・・・自分の容体は誰にも悟られたくないと言って聞かなかった。けれど・・・私にだけは正直に話をしてくれた。これは、昔私たちに起きたある事が切っ掛けなんだ」
そうして舞さんも過去に秋月・・・小波さんが引っ越しする事になった事について話をしてくれた。とても大切な人を想う気持ちが強く伝わって来て、この話を聞くのは2度目なのに私は涙が溢れて来た。
美樹「素敵な関係です・・・私も師匠と・・・」
愛華「うん!私、元気になって戻って来るから・・・その時まで待ってて欲しいな?」
美樹「勿論です!楽しみに待っていますから!」
愛華旅立ちの日・・・
愛華「こ、こんなに沢山の人が!?私を見送りに?」
夏葉「こちらをご覧になってもまだ弱気な事を仰られますか?」
愛華「えぇっと・・・私・・・元気に戻って来るから!絶対に!だからその日まで待っててね!?それで戻って来たらまた連載の続きとか新しい作品とか出せる様に頑張るから!!」
智也「ファンとしてはその日を楽しみに待っているからな!絶対に実現してくれよな!」
加奈子「先生、そして先輩、私たちはずっと貴女のファンであり、師でもあります。最初に書かれた作品からずっと先生の事憧れていた者にとって、また先生の作品を目に出来る最大の喜びはこれ以上ない喜びです!だから絶対に元気に帰って来て下さい」
穂希「愛華ちゃん、向こうで何かあったら直ぐに連絡が欲しいんだ!期間は聞いていないからどれくらいで戻って来られるのかも私たちは知らない。だからもし、連絡する事が出来るなら・・・」
1人1人の私へ向けた言葉に私は全力で返した。
そして・・・
舞「あまり気を持ち過ぎずにリラックスすれば良いよ・・・とは言え見えない事にどうリラックスすれば良いのかって言われると答えられないけれど・・・ただ、君は1人じゃない!こうして君を支持してくれる、応援してくれている皆がいるから。君は安心して立ち向かえば良いと思うんだ。そして小波が天国から見守ってくれているはずだ!」
茜「そうよ。貴女には皆がついているから。自信を持って?いつでも連絡くれれば良いからね。お父さんとお母さんも現地に向かうって言ってくれているし、そろそろ帰国出来る段取りだったみたいだから帰って来ればもっと楽しくなるわよ?」
政樹「なら、俺は通いになってしまいそうですね?」
茜「だったら家族になれば良いのに?あっ!そうだ!帰って来たら結婚の話とか進めてみるのも良いんじゃないかしら?」
政樹「そ、それはまだ・・・早いと言うか!?俺たちまだ高校生なんですよ?」
茜「愛華は結婚出来る年齢よね?君は後少ししたら♪」
政樹「えっと・・・分かりました!俺、愛華が戻って来たら結婚の話をご両親に・・・」
愛華「政樹!?・・・それ・・・ホント?」
政樹「あっ、あぁ!俺も出来れば早い方が良い気がしているんだ!だから!絶対に戻って来いよ!」
嬉しくて、涙が零れ落ちた。
愛華「じゃ、じゃぁ、私絶対に戻って来なきゃね?」
そして私は手術を受けた。
半年後・・・
政樹「(ガクブルガクブル)」
智也「何だ、きょうは政樹がアレやってるのか?ってまぁ、それはそうだよな!流石に今回については俺も何も言わない。だが無事に帰国なんだし安心だな!」
夏葉「あまりにも強い感情でおもら・・・いいえ、気絶しそうじゃありませんか?」
智也「いや、それは無いだろ!・・・っていつまでも引っ張って来るな、夏葉?」
今日は遂に愛華が手術から帰って来る日だ。
午前中だけ授業を受けて午後から休ませてもらって愛華を迎えに行く事になっている。
空港にて・・・
智也「あの飛行機じゃないのか?もう直ぐだぜ!政樹?」
政樹「あ、あぁ・・・そうだな。ああ、あ、あい、愛華ががが・・・」
夏葉「その状態で「おもら・・・気絶しそうだ」と仰ってみて下さいな?」
智也「お前、政樹にまで何吹き込もうとしてるんだよ!いい加減に止めてくれないか?」
美樹「あっ、着地しましたよ!?もう少しです!」
刻一刻と愛華が帰って来る時間が迫って来る。俺は内心ドキドキしながら緊張感が途絶えず、ただひたすら愛華が俺の目の前で元気に「只今、帰ったよ♪」と言ってくれる事を待ち続けた。
数十分後・・・
智也「ちょっと遅くないか?・・・そろそろここに来ても良い時間じゃないか?」
夏葉「あっ!参りましたわ!愛華さ~ん!!」
約半年後の再開・・・
愛華「只今、帰って来たよ♪皆♪」
政樹「愛華!愛華ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
久しぶりの日本、到着して早々政樹が私に抱きついて来た。きっと凄くモヤモヤしながら待ってくれていたんだろうな。
私も嬉しくなって政樹を抱き返した。
智也「おぉ!いい雰囲気じゃん!」
夏葉「ふふふ♪私たちもあったではありませんか?こう言う熱~い抱擁が♪」
智也「おぃっ!今それを言うなって・・・恥ずかしいだろ!?」
美樹「師匠!!・・・愛華先輩♪待っていました!本当に・・・良かった・・・うっ・・・うぐっ・・・」
愛華「ごめんね?色々と心配掛けてしまって・・・でももう大丈夫だから!ね?本当の本当に大丈夫だから♪」
美樹「はい!その大丈夫は100%信じます♪」
加奈子「良かったです。お元気になられて・・・向こうに行かれてから美樹ったらずっと悲しい顔をしていたんですよ?」
美樹「ちょっ!!加奈子ったら何を言って・・・」
愛華「ごめんね?でもありがとう、私の事心配してくれて・・・」
香波 勇輝 (かなみ ゆうき)「愛華、お疲れ様。それからずっと留守にさせてすまなかったな」
香波 弥生 (かなみ やよい)「無事に成功した時も嬉しかったけれど、またこうやって日本で一緒に暮らせる事が本当に嬉しくて・・・私・・・」
愛華「お父さん、お母さん・・・ううん、こうやって手術を受けられたのもお父さんとお母さんのおかげだし、それに・・・ね?」
政樹「あ、あぁ・・・じゃぁ、コホンッ!えぇっと・・・この様な場所で恐縮です!香波愛華さん、俺はずっと貴女の事が好きでした。来年、俺たちが卒業したら結婚してくれませんか?」
愛華「・・・はい、不束者ですが宜しくお願いします♡」
政樹「そして、同時になってしまいますが、香波 勇輝さん、そして香波 弥生さん・・・俺、加賀谷 政樹は、たった今、元気な姿で帰国されたあなた方の娘である香波 愛華さんと来年、卒業したら結婚する考えです。どうか、俺に・・・愛華さんを下さい。必ず幸せだと言ってくれる様な家庭を作ります。だから・・・宜しくお願い致します」
♪パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
政樹は、私が帰って来たら結婚する事を両親に伝える事を覚えてくれていて、当日どの様に告げるのかを考えていた。
そして帰って来たこの空港で皆が見守る中、私と両親に同時告白する事を考え出したのだ。
勇輝「・・・・・・・・・・・・ダメだ!」
政樹「そ、それでも俺は諦めません!愛華さんは俺がこの世で一番愛している女性だから!必ず、必ず許可してもらえる様に頑張ります!俺は諦めません!!」
弥生「あなた?」
勇輝「ははははは♪いや、こう言う茶番劇一度やってみたくてね・・・私たちも君たちと似た感じだったからね?まぁ、政樹君は昔から頼れる子だとは分かっていたからね、むしろ愛華に決めてくれないか考えていた事もあったから・・・少し早い気は、正直言ってするんだけどね・・・まぁ、若いっていいもんだね!この様な娘だが、これからも宜しく頼むよ?政樹君!」
弥生「えぇ、私たちは大賛成よ?政樹君は誠意があるし、昔からこの人の言っている通り頼り甲斐があるなって思っていたし、何より本人同士が望んでいる事だもの。それを見守るのは親の仕事だと思うから・・・何か困った事があれば遠慮なく相談しに来てね?」
政樹「あ、あぁ・・・ありがとう御座います!!俺、絶対に大切にしますから!愛華さんを!」
♪パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
周りにいるメンバーたち、そして空港内にいる聞えていた人たちからも温かい拍手喝采でこの場は無事に落ち着いた。
加賀谷家
愛華「ご報告が遅くなりすみませんでした。無事に手術は成功して戻って来る事が出来ました」
加賀谷 俊司 (かがや しゅんじ)「いや、本当によく頑張られました。色々と苦労があっただろうと思われますが、よくぞ戻って来てくれました」
加賀谷 美咲 (かがや みさき)「息子の件の事も、それからその後も本当に愛華さんにはお世話になりっぱなしで、おかげ様で息子も新たに大きな1歩を踏み出す事が出来ました。本当に・・・本当にありがとうございます」
愛華「い、いえ、私の方こそ政樹君にずっと支えてもらっていました。手術の前も手術の時もその後も時折私の所へ来てくれましたし、思いもしないサプライズでした。政樹君が私を成長させてくれました。そして動かしてくれました。だから・・・だから、きょうはおじさまとおばさまにご報告しなければいけない事がありこちらへ寄せて頂きました」
俊司「はい・・・」
美咲「はい・・・」
愛華「私、香波愛華は、来年の高校卒業後加賀谷政樹さんと結婚する約束をしました。どうか、そのお許しを頂きたいと思います。政樹さんが辛い時、寄り添える、分かり合えるパートナーとして、そして彼に全てを捧げるつもりです。どうか、ご許可をお願い致します」
俊司「改めて言われてみると感慨深いモノがありますね。むしろ、こちらからお願いに上がりたい想いです。本当に家の息子で良いのかと・・・」
政樹「ちょっと父さん!?」
俊司「ははは♪いやはや、それはさておき、この様な奴ではありますが、どうかこれからも宜しくお願いします。色々とご迷惑ばかり掛けて参りましたが、その分これからはお前が愛華さんをしっかりと支えて行かないといけないな?頼んだぞ?」
政樹「あ、あぁ!勿論だ!」
美咲「ふふふ♪本当に幸せにしなければいけないわよ?」
政樹「精一杯頑張るよ!」
こうして両家の両親への挨拶が終わり、晴れて私たちは親公認の仲となりました。
お墓にて・・・
舞「お姉ちゃん、向こうでは元気にしているだろうか?愛華ちゃん、無事に手術が成功して帰って来てくれたよ?それからきょうはね、2人から報告があるんだってさ?」
愛華「秋月さん・・・ううん、小波さん?聞いてくれていますか?あの日に小波さんが教えてくれた2人の女の子のお話、私はずっと鮮明に覚えています。あのお話が無ければここまで前向きに生きて行けなかったかも知れません。私、半ば諦めていました。でも・・・小波さんが私と似ているねって言ってくれた時、小波さん、小波お姉ちゃんの事が凄く愛しくなって・・・自分の辛さを置いて私の事を考えてくれて・・・とても・・・とても温かい気持ちになれました。だから、こうやって今日ここへ来れた事が嬉しくて・・・ずっと小波おねえちゃんには迷惑ばかり掛けて来ました。だからこれからは小波お姉ちゃんを安心させたいって思うんだ。きょうは、多分勘が鋭いお姉ちゃんなら分かるかも知れないね?そうです♪私の隣にいる加賀谷政樹君と来年、結婚する事にしました♪どうか・・・天国から見守っててくれると嬉しいな♪」
政樹「秋月さん・・・小波さん、本当に俺たちを支えてくれてありがとうございます。俺も小波さんには色々と勇気や自信を与えてくれたと思っています。今回、愛華に告白する事も小波さんの与えてくれた色々なモノと共通しているんだろうなって思います。一緒に仕事をする事はもう出来ませんが、これからは俺たち、小波さんの力が無くてもしっかり前へ進んで行ける様に頑張るから・・・どうか・・・どうかこれからも俺たちを見守っていて下さい。お願いします」
茜「それから、私からご報告があります。秋月さんのお仕事の代理の件なのですが、常々、秋月さんが私にお仕事の件で色々と教えて頂いていた理由が分かりました。お話が来てお受けする事に致しました。秋月さんの様な出来る女ではありませんが、少しでも貴女に近付ける様に日々精進したいと思っています。舞の部署の隣でもあるので色々と運命的なモノも感じています。本当に色々とありがとうございます。この御恩を返せる様に頑張りますのでどうか、私たちをこれからも温かく見守ってくれると嬉しく思います」
翌年・・・
茜「愛華?早くしないと式に間に合わないわよ?」
愛華「えっ!?もうそんな時間!?早くしなきゃ!!政樹はもう着いてるのかな?」
結婚式場・・・
政樹「おっ!智也と夏葉さん!きょうはありがとう」
智也「おめでとう♪先を越されてしまったな?まぁ、俺たちも近々って感じだからその時は連絡するよ!もう、話は進んでいるからさ」
夏葉「こんにちは♪この度はおめでとうございます。私たちの披露宴でも色々とお楽しみ頂けるものを考えておりますわ♪」
時間までに何とか間に合った愛華・・・
美樹「愛華先輩!ご結婚おめでとうございます。どうかこれからもお2人ともお幸せに!」
愛華「ありがとう♪ずっと一緒だったから延長線上の様な感じかも知れないけど、皆のおかげでここまで来られたから、次は美樹ちゃんたちだよ?」
加奈子「え、えっと・・・この度はご結婚おめでとうございます。と、とても素敵です!綺麗です!!」
愛華「ふふふ♪ありがとう。でもいつもにない加奈子ちゃんの様子だね?」
美樹「加奈子、愛華先輩があまりにも綺麗だから緊張しちゃってるんですよ?あまり緊張しないのに今日に限って♪」
加奈子「ちょっ!ちょっと美樹・・・それは言わないでって・・・」
愛華「嬉しいな♪そんな風に言ってくれて♪」
そして無事に結婚式は進み・・・
愛華「緊張したけど、何だか終わってみると寂しいね?」
政樹「あぁ・・・でもこれからだからな?それに周りの人の結婚もこの後あるだろうし・・・俺たちは俺たちの道を歩いて行くだけさ」
愛華「あぁ!?ちょっとキザなセリフ吐いたよね?格好良いけど似合わないかな?」
政樹「おぃ、そこは流してくれる所じゃないのか?」
こうして私たちは晴れて夫婦になったのでした。
新婚旅行、そしてまた始まる日常・・・
大学へ進んだ私たちは仕事と平行線上でこれまで通り歩いていく・・・
小波さん、私たち小波さんが望んでいた事を必ず実現します。
貴女が望んでいた、自分が育てた作家たちをもっともっと活躍させたいと言う望みを!
「と言うお話よ?素敵でしょ?」
「そうだったんだ!・・・でもこのお話だとママは死んじゃうよね?」
「そうね・・・でも、この本を読んでくれた人の心の中では生き続けているのよ?」
「そうか・・・ママは凄い人なんだね!僕もママみたいに凄い人になりたいな♪」
「凄い人・・・か・・・そうね、凄い人はこの世界に住んでいる全ての人の事なのよ?だから貴方も凄い人だから・・・」
「うん!じゃぁ、大きくなって頑張ってもっともっと凄い人になれるようになるね?」
「うふふ♪そうね。楽しみにしているわね♪」
私の名前は香波 小波・・・香波は旧姓、現在は加賀谷 小波。私はあの日、愛華さんが亡くなる直前、このお話を書く事を伝えた。愛華さんは快く承諾して下さった。
仕事が出来て頼れる存在の彼女を私はとても尊敬していた。
このお話を書く時に、登場人物の名前を出す時に苦労した。
そのままの名前にするのは違和感があり、ノンフィクションチックになってしまうからと思い、色々な名前を考えた。けれどどれもしっくり来なくて悩んでいた時に、愛華さんのあるお話が頭を過った。
「私は過去に小説を書いていた時期がありました。その時登場人物の名前を考える事に苦労をしました。ですが、私が憧れる人の名前と自分の名前を織り交ぜて使う事でより身近にその作品を感じられて、更にその憧れる人と繋がっている気持ちが強くてとても素敵な気持ちになれました。だからもしこの先貴女が登場人物の名前を付ける所で苦戦した場合は、貴女が憧れる方のお名前と自身のお名前を掛け合わせてみるのも面白いかと思いますよ?」
お茶目にウインクをしながら語ったその話が私はとてもしっくり来てどことなく安堵感があった。
私がこの世で一番尊敬している人・・・秋月 愛華さん・・・
これでまた一つ私は、貴女のアドバイスを受け入れる事が出来たのでしょうか?
この小説はもう何年も前に書いたものですが・・・私は今でも貴女と繋がれている気がします。何か困った事や苦しんでいる時はこの本を思い出しながら貴女のくれた様々なモノを思い返し、乗り越えています。
そんな優しくて、温かくて、尊敬出来る貴女と出逢えた事を私は誇りに思います。
そして・・・
政樹「もう、眠ったみたいだな?」
小波「えぇ、安心した様な笑顔を浮かべながら・・・貴方に似て可愛いわね。きっと将来は貴方の様に頼れる子に育ってくれるでしょうね♪」
政樹「おい・・・相変わらず恥ずかしい事を淡々と・・・」
小波「遅くまでお疲れ様♪ご飯にする?お風呂にする?それとも・・・わ♡た♡し?」
政樹「ちょっ!!何言って・・・風呂入って飯にするよ・・・」
小波「ふふふ♡ホントいつになっても初心なんだから♪じゃぁ、入って来て?その間に温めておくわね?」
私たち、貴女の理想とする人間になれたでしょうか?
私は、あれから様々な小説を執筆し、政樹もずっと私専属でイラストを描いてくれています。
お姉ちゃんもプロのモデルとして活躍中。
周りの美樹ちゃんや加奈子ちゃんもそれぞれ確立したプロの小説家となり成長していると思います。
夏葉ちゃん、智也君たちも業界で活躍中です。
舞さんも貴女の後をしっかりと引き継いでいるそうです。
穂希ちゃんもその従姉妹の姿をしっかりと見詰め、プロの格闘アイドルをやっています。
これからもどうか、私たちを見守っていて下さいね?愛華さん・・・
最終巻 終
後書き
「売れっ子官能小説家は超絶美少女JK(Job Known)だった?」
をご覧頂きありがとう御座いました。
途中より更新頻度にばらつきが生じてしまい、初めからお読み頂いている方には本当に申し訳ありませんでした。
スタート当初のシリアスな展開から一変して途中ラブコメディー要素を採り入れさせて頂いたり、後輩側も小説家であると言う内容になり、最終的に合作と言う実は、別名義の方で同じ趣味として執筆をされている方にお声掛け頂き合作を進めていたりしていまして、最後の方であまり小説同士での合作と言う展開は私は見掛けた記憶がありませんでしたが、この様な展開も素敵だろうなと師弟としての作品を最後のお話に持って来ました。
裏話になりますが、秋月小波は、途中で死ぬお話で書いていたのですが少し重たいと感じ没にしています。ですが、やはり秋月小波と言う人物は愛華たちの成長をある過程では促してくれる良い人物である反面、途中で成長を止めてしまう恐れがあるのも事実だろうなと自身の中では非常に優秀な「出来る女」と言う位置づけでした。
結末の方をご覧頂いた時にどの様に読者様がお感じになられるか様々だろうなと考えながらこの結末に結び付けさせて頂きました。
私のこれまでの執筆活動の主体は、感じた、思った事を執筆しながら辿って行くものでした。
ですが、やはり肝要である土台が出来ていない部分では自由奔放であると同時に不安定な展開になる可能性がどうしても出て来ます。
その結果が最初の頃の話の流れ、そして安定した後の展開などです。
結果はどの様になったかは別としてやはり重要なプロット作りから練って行く必要も十分にあるだろうと感じています。
今後は出来る限り先にプロットを作成した後にストーリーを組み立てて行く流れに考えています。
初めてシリーズ作品として書かせて頂いた作品よりは若干でも読んで頂ける方が増えた事が嬉しく、今日まで続けて参りました。
最後は、愛華は小波、そして小波は愛華であると言うこれまでの展開を1つの小説として自身の子供に読み聞かせると言うお話でしたが、絵本では無いまた別の角度から自分たちの体験談を創作として読み聞かせてあげる親と言うイメージを持ちながら最後のパートを書かせて頂きました。
個性を特に強く持った生徒たちが通う高校でのお話から、その高校生の人生に関わる重要な部分、そして将来を見据えた部分、あらゆる人間が歩んで来る「人生」と言う長い道のりをどの様なスタイルで描くのか、そう言う事も少し考えていました。
どこかの一部分でも構いません。何かがこの作品を読んで下さる方に伝わればこれ以上この作品を続けて来た喜びは無いだろうと思います。
本当に拙作ではありましたが、最後まで読んで下さりありがとう御座いました。
私、小鳥遊の作品自体は今後も継続し、短編小説の方も手掛けられる時には投稿もさせて頂く予定です。今後も小鳥遊凛音の作品を宜しければご覧頂けましたら幸いです。
長くなりました、本当にありがとう御座いました。
2021年3月
小鳥遊凛音
売れっ子官能小説家は超絶美少女JK(Job Known)だった? 小鳥遊凛音 @rion_takanashi9652
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