1-2 問い

「…これは、知っての通り、オアシス神話にある歌だ。


『光速の矢で貫く』とは、遺伝子変化の早さを表すのだろう。


我々は早く大人になり、早く死ぬようになったとか…。

人は生まれてすぐ歩き、10才で結婚。30才を越えれば老人。


老人とは、昔は60を越えてなってから言ったらしい。

しかし、今は半分に縮んだ。


人体の代謝が早くなったのは、

太陽が膨張をして暑くなったからか、

それで地球自体の自転が早まったせいかは、知らない…。


『頭を失った』は、環境を無視した合理的理論の破滅だろう。

自然の力が人間を遥かに凌駕する時、

精神は屈服か、親和するに、落ち着く。


…ジナよ。

戦いの果てに、世界は失われたのだ。

分かっているだろ。


そうと知っても、お前は行くのか?

この廃村だって、充分生きてけるじゃないか!」


白髪混じりの男・アーマナが、小屋の入り口で、訊ねる。


武器倉庫らしい小屋の中には男が居た。 ジナと呼ばれた彼は答えず、武装を続ける。


13才になったジナは、中肉中背であるものの、よく筋肉がついている。

この時代で言えば、立派な青年だ。


麻の長袖の上から鎧を着け、 ボサボサの髪を、半球の金具の兜で固めた。


まだ何ごとか言うアーマナに、ジナは振り返る。

「皆を頼んだぜ」


アーマナを避けて、ジナは小屋を出た。

外に居た、似たよう格好の男達が出迎えていた。


少し話すと、そのまま全員で、村を出ていく。


辺りは、夕闇に包まれていた。


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砂漠のダンサー 岡島安里 @anri05

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