花のチャルカ

あまぎ(sab)

黒百合 1

私を目覚めさせたのは露。

唸るような木の葉のざわめきが、私の頬へ滴を叩きつけたようだった。

ミシッとどこかで音がして、ふと俯くと気味の悪いほどふくらんだ緑葉が、汁の滴る断面を覗かせていた。

「……!」


人間だって、動物だってそうだろう?生き物の破壊された身体というのは誰でも恐怖を抱く。私は小さく悲鳴をあげた。

しかし、数秒とたたない間に私は思考をはじめた。そして足元で折れた緑葉の上で小さく頭を垂れた。それは自分の手足ではなかった。名も知らぬどこかの草花の憐れな死に、私の頭を伝った雨露がぽたりと弾けた。私だけの、小さな埋葬だった。草花はゆっくりと変色した後、どこかから吹いてきた強風に根から拐われてしまった。ぽたりとまた頭の滴を、今度は草花のいた土にかけ、私は温かい湯船にずぶずぶと浸っていくような感覚でそこに深く根を張った。そのお陰で、いまでなお、強風にも気荒れた鳥にも拐われたことがない。今思うと、生物なんてみんなこんなように生きてるんだろうなと思った。そのまま数日は雨露と木漏れ日を飲んで、深くなった根の上でくつろいでいた。

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花のチャルカ あまぎ(sab) @yurineko0317_levy

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