第16話 暖かな陽の光の中へ


 僕は噴水池の草むらに腰かけている。

 冬が終わり、少しずつだが陽が延び始めて温かい時間も長くなった。片手にはマリーさんからもらった筆、もう片方にはスケッチブック。さらさらと花の絵を描き続けている。

 絵を描き続けていてわかったのだが、この筆、念じることで水彩絵の具のような淡い色を出せることがわかった。一体どうなっているのか全くもって理解はできなかったが、出来るのであれば出来ると結論を付けた。

「コーギィ、何をしている」

 早めの仕事の終わりのマリーさんが僕を見つけて声をかけてきた。

「あ、マリーさん。ちょうどよかった」

「ちょうどいい?」

「はい」

 その合図と共にスケッチブックの中の絵がペリペリとはがれていき、ふわりと宙に浮いた。

「ほう、綺麗じゃないか」

 色々な花が描かれた花冠。それがゆっくりとマリーさんの頭の上に乗っかった。

「マリーさんにプレゼントです」

「な……」

 恥ずかしがっているのか、マリーさんの言葉が途切れる。

「似合ってますよ」

「ま、まぁな……。そ、それより家に帰ってお茶としようか」

「そうですね」

 彼女は手を差し出す。僕はその手を握り、家に向かって歩き出す。

「マリーさん」

「ん、なんだ?」

 僕は少し甘えるように、彼女の腰に抱き着いた。

「あの時、僕を見つけてくれてありがとう!」


 マリーさんと僕は気持ちよく晴れた空の下、暖かな陽の光の中へ歩を進めていった。

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コーギィと魔女(前編) 高柳寛 @kkfactory2020

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