「ざまぁ」では癒やされない現実を、少し癒やしてくれる

現実も家族も理不尽で、会社も同僚も理解不能な事をよくするし、ふとした瞬間になんの予告もなく人生の最底まで叩き落とされる事だって、別に珍しくもない世の中。
不倫に、親ガチャに、将来の生活資金不足、不安や不満を上げればきりがない。
自分にも欠点があり、全く完璧ではない。
そんな諸々へのストレスを「ざまぁ」な小説を読むことで少し発散している人は多いのではないでしょうか。
私もその一人なのですが…どうも「ざまぁ」では、娯楽として楽しめてスッキリしたように感じる程度、一時的に気がそれただけなんですよね。

この作品は、このどうしようもない世の中を、包み隠さず「どうしようもなく」描きます。
けれど、けっして、希望の無い物語ではありません。
逆にこの「どうしようもない現実」と共に「どう生きていくのか」を、主人公とともに考えながら読み進める、そんなお話しです。

結末も、きっと最初の主人公なら歯牙にもかけず鼻で笑うでしょう。
けれど、最後の主人公なら。
最後まで読み進めた読者なら。
静かに納得し、そしてその頃には、少し心が癒えているのではないでしょうか。