十誤畳 シリアス返せ!!

倒れる父親に対して駆け寄るアンナ。


「死ぬ前にお前の花嫁姿を…」


ズドドーン

雷鳴のような音が響きわたる。


「すまんのぉ。久しぶりの戦に燃えてしまった。あ、そこの御仁死にかけておるな。ほいっ。」


美麗なエルフが放つ気の抜けた声とは裏腹にアンナの父は光輝いていく。


「まぶし…父さん大丈夫?」


「アンナよ。お迎えが…お迎えが来たんだな。」


あまりにも眩しい光なので、アンナの父は天国と勘違いしたらしい。


「失礼じゃのぉ。普通の回復魔法じゃ。ただし、足も手も無くなっとれば生えてくるがの。」


徐々に光が和らいでいくと、アンナの父のぱっくり空いた傷跡が巻き戻したように戻っていく。


「うそ、、ホントに魔導師?え、でもこんな、やっぱり神様?どっち?」


混乱するアンナの姿をみてアンナの父も


「神様、神様なのか。アンナもそばに…亡くなったのかアンナも。というと、アンナ!!親不孝ものが!!美しきエルフ様…こいつはまだこちらに来るべき人間ではありません」


と、アンナの父土下座を、美麗なエルフに対して行い混乱の連鎖を引き寄せる。


「お前達、回復魔法も見たこと無いのじゃな。すまないことをした。驚かせてしまって。」


美形エルフがやり過ぎを謝っているところで、


「シュエン!!お前ゴブリン周りにいる状態で放置すな!!一応、幼児だぞ。幼児」


「お前なら、余裕じゃろ。二匹くらい。それにワシの結界ならそんな大した傷はつかんはずじゃ。」


「シュエンと違ってチート無いの!ボロボロになってるだろ?!狼にも噛まれたから歯形付いてるし。あ、今日は飯抜きに…」


飯抜きと小声でハジメがいった瞬間、土下座の風習を知らないシュエンが綺麗に土下座を決めてきた。

心の中でハジメがシュエン恐ろしい子。と◯影先生風に言っていた事は内緒である。


「悪かった。飯は飯だけは…」


先ほどまで神様のようなことをしてくれたシュエンに対して、今も届かない足で小刻みに脛を蹴り続けるハジメこの光景を見たアンナ親子は唖然としていた。


蹴り続けるのを見ていたアンナがやっと息を吹き替えしたようにハジメの方を向いて気配を消した。


「「なに?!」」


ハジメとシュエン共に驚きを隠せなかったがハジメが後ろを振り向いた瞬間ハジメの首にチョークスリーパーを決めているアンナがそこにはいた。


「おのれ、人の父親の恩人に何してくれとんのじゃ!!クソガキ!!」


沸点の高いアンナは、鬼の形相になりさらに力を入れる。


「ギブギブギブ!!!やめるからやめるから!!」


喉に激痛を感じ必死に頼み込むハジメ


「そうじゃ!辞めろ飯が飯が!!!」


異世界料理がなくなる生活に絶望するシュエン。


そんな中、


「ハジメ~僕ねピュッピュッてして人間以外全部倒してきたよ~。偉い?」


とのほほんとメイが駆け寄ってきた。


「おがえり…めいざん。ガクッ…」


「「ハジメ~!!!」」


意識を失ったハジメに気がついたアンナが慌てて手を緩める。


「はっ。私なんてことを!!」


「ハジメ!!!起きろ!!ワシの飯はどうしてくれるんじゃ!!」


「ハジメ!!!僕のおやつは!!」


一向に目を開かないハジメに対してハジメの腹の上で高速で跳び跳ねるメイさん。食べ物に対する執念は酷いらしく、三十秒以上どんどんしていたら。


「ぐぼっ。はっ、お花畑見てこっち向いて汚い衣まとった爺さんがこっち見てあっちいけって手で払われた。てか、その時飯、飯、飯ずっと聞こえたけどお前らかーい!!」


「「ハジメと言えば食べ物だし」」


食欲に忠実な二人?である。


そんな時はもう一人意識を取り戻した人物がもう一人。


「あ、あ、あ、アンナが暗殺スキル持ちとは!!」


「「「驚くとこそこ!?」」」


アンナの父に対して三人揃っての突っ込みが入ったのは言うまでもない。


とにかく、ハジメの初戦闘が終わった。


平穏を取り戻した村の光景を見て一羽のカラスが人知れず飛び立ったことに気づくものは一人もいなかった。








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