終章 あれから一千年後

最終話 拓海君とルナが出会ってから一千年後

 俺は心地よい風が吹く草原にいる。場所はコン様の家がある《古代神の楽園》。隣にはルナがお昼寝をしている。


 ルナと出会ったのは一千年前。あの頃のルナは美少女だった。


 今は成長して誰もが振り返る美女になっている。背中の純白の四枚翼の美しさもそのままだ。


 着ている服も可愛いフリフリの服ではない。体のラインが分かる、白色のスカート丈の長いスリットの入ったドレス。髪のツインテールは健在。


 俺は獅子王拓海の生涯を終えてから、その後みんなを嫁にもらい、古代神の楽園で暮らしている。


 第一夫人のルナ、第二夫人のリン、第三夫人のソラ。そしてレイナさん、コン様、イムカさん、神威。


 七人のお嫁さんだ。


「……ふぁ。拓海君、おはよう」


 お昼寝から目が覚め、欠伸をしながら俺に挨拶をするルナ。


「ルナ、おはよ」


「みんなはもう出かけた?」


「だいぶ前に出たよ」


「そっか、私達も出発しないとねー」


「ルナ、俺達は何処に行くか覚えている?」


「覚えているよ。人間界にある剣と魔法の星。惑星イグナールでしょ?」


「では何をしに行くのかな?」


「ドラゴンのドラ君が、彼女を人族に寝取られ暴れているからなだめに行くんだよね?」


「そう。惑星イグナールの人族はまだドラゴンには勝てないからね」


 俺達は今、神世界の《バランサー》として活動している。そこに居る住人の手に負えない案件を神世界情報機関から依頼され解決している。


「そう言った色恋沙汰は自分達で解決して貰いたいよね」


「……その色恋沙汰で惑星イグナールの人族が滅ぶから依頼が来たんだよな……」


「リンちゃん達は先に行っているよね? 大丈夫かなぁ」


 リン、ソラ、レイナさんが先行してドラゴンを説得に行っている。


 コン様、イムカさん、神威は家でゴロゴロしている。俺はルナが起きるまで待っていた。


「リン達は大丈夫と思う……ソラとレイナさんがいるから、リンが説得を聞かないドラ君にキレて、消滅しようとするのを止めるだろう」


「拓海、ルナ! 大変だ。ソラがキレた!」


 俺とルナが会話をしているとリンが目の前に現れ叫んだ。


 リンも成長して美しい女性になっている。銀髪は変わらない。腰から左右に一枚ずつ漆黒の翼が生えている。一千年前は小ぶりな胸も、今ではルナに負けず劣らずのたわわな果実になっている。


 リンは体のラインが分かる漆黒のフルプレートメイルを装備。兜は無し。左右の腰に細身の剣を一本ずつ提げている。


「ソラがキレた⁉︎ どうして?」


「それが……ドラの彼女が酷くてな。悪女だった。彼女と対峙して分かったが結婚詐欺師だった」


「「はい?」」


「それを知ってソラがキレた。ドラと一緒に暴れている」


 ソラ……バランサーが一緒に暴れるなよ……


「仕方ないよね。ソラちゃんはドラ君と仲が良かったから」


「まぁ、そうだな。それに惑星イグナールはソラッ教が布教していたな。慈愛の大天使ソラ様。ソラが暴れても誰も怒らないから大丈夫だろう」


「拓海、何を呑気に言っている。ソラは私やルナより強くなったんだ。私では止められない。姉上も私と同格の魔人王になったが、もちろんソラは止められない」


「分かった、分かった。急いで行こうか。よっこらしょ」


「拓海、おっさんになったな」


「見た目は昔の十六歳のままなのにね」


 ルナとリンは俺を見てクスクスと笑っている。


「むぅ。俺はまだまだ若いです。昨日だって七人同時に——」


「そっ、そんな事は言わなくていい。さっさと行くぞ!」


「拓海君、行こう! ソラちゃんを止めて!」


 二人の顔が赤い。照れているのか?


「はいはい。ではソラのもとへ行くとしましょうかー」


 そして俺とルナとリンは転移を使い暴れているソラの所へ行った——




 現地に着くとソラはドラゴンのドラ君と大暴れをしていた。


 ソラも身長が伸び美少女から絶世の美女へと成長している。背中には二枚の翼。絶壁だった胸もたわわな果実が実っている。


 装備はリンと色違いのフルプレートメイル。色はゴールド。武器は槍。


 レイナさんは止めるのを諦めている。姿は一千年前と変わらない。装備はルナと同じドレス。色は黒。


 俺はとりあえずドラ君をなだめた。すぐに暴れるのをやめた。そして大暴れしているソラのもとへ。


「ソラ、落ち着け」


「落ち着けない! あの女! 僕の親友のドラ君を騙すなんて許さない!」


 ソラが目くじらを立て言ったあの女……雌のドラゴン。ドラゴンにも悪女で結婚詐欺師はいるのね。


「とりあえず落ち着け。俺が《煉獄へ送る者》になって反省させるから」


 俺は煉獄へ送る者へクラスチェンジして、ドラゴンの悪女を倒し煉獄へと送った。


「まったく、バランサーが暴れてどうする」


「……僕、謝らないもん。悪くないもん」


 ソラは頬を膨らませている。


「ソラ。ドラ君が生まれた時から仲良しだったから怒るのは分かるけど、おまえはバランサーとしての自覚をもう少し持とう」


「拓海君。いいじゃない。ドラ君も暴れすぎを反省しているし」


 ルナが優しい声で俺に話しかけてきた。


「まぁ、そんなソラだからこそ、この星で崇拝されているからな。俺が怒るのは違うか」


「そうだよ。この星では拓海君より僕の方が偉いのだ! みんなの中で僕が一番人気なんだよ」


「はいはい。慈愛の大天使ソラ様。えらいえらい。さっ、みんな古代神の楽園に帰るか」


「「「「はーい」」」」


 ソラの機嫌も治り、俺達は古代神の楽園へと転移で帰った——


 古代神の楽園へ帰ると、いつものまったりとした平和な日常へ戻った。


『女神達が俺のお嫁さんになりたいそうです。』——完。







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女神達が俺のお嫁さんになりたいそうです。 さとうはるき @satou-haruki

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