鈍感

@_hisashi

鈍感


 わたしね、実はずっと子供でいたかったの。


隠す気あったのか、それ。

こぼれ落ちたような言葉に咄嗟に反応した私の発言は彼女にとって不快では無かったらしい。防波堤に俯いて座り込んだ彼女の小さな笑い声が揺れ、波へと拾われていく。

波が何度も行き来しテトラポットにぶつかった。更には暑いからとアスファルトに撒いた海水が蒸発した。彼女の影の部分で跳ねた海水も乾いている。しばらく経って、再び顔を上げこちらの瞳を見るようにして彼女は声を落とした。瞳が太陽に晒されキラキラと反射している。


「気づいてたんだ。」


一言発してすぐに逸らされた彼女の続きの音は聞き取ることが出来なかった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鈍感 @_hisashi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ