電波の種類

ツイッターなるものを、始めてみた。


調子に乗った訳じゃない。

日々気付いた事や、おかしな事を書き込めば投稿のヒントになるかもしれないと思っただけだ。

「友達いないし、フォロワーいないからただのメモ帳だけど」

アカウント名はブラックトータス、昔似たような高価なカードが…なんか、前も言った気がする。


『たまに「頑張ってもいない人を誰も助けたいと思わないよ?」と言っている奴がいるけど、単純に頑張ってるのに報われない人を助けて自分が英雄になりたいだけだと思う。』

文字の制限難しいな

「送信っと‥、送信でいいのか?」

反映されてる。

イイネなんて求めてない、正式な反応が見たい。全ては優遇マフラーの為に

「さて、今日も聴くか‥」

今日は月曜日、当然優遇マフラーはやらない。


「えーっと、22時からだよな?」

聴いている番組は優遇マフラーだけでは無い。面白い話を聴き続けているとどうしても、普通の人の話も偶に聴きたくなる。

月曜はアイドルの

菅戸 独崋(かんど ひそか)がアシスタントを務めるラジオ

『アルバム・ガール』を敢えて聴く。

メインパーソナリティーは中堅芸人の「かぜぎみ・ガリ」なのだが、彼女のファンしか聴いていない為、適度な相槌を継続して繰り返している。かといって菅戸の話が特別面白い訳では無く、普通の話を延々と繰り返すから終始何も起こらない。

「でもそれが必要なんだ」

普通の話を挟まないと、面白い話を聴き続ける事が出来ない。謂わばこのラジオは、来たる木曜日の前座。

ゲボマンの鼓膜慣らしだ


「俺の耳の糧となれ。」

誤解が無いように言っておきたいのは

俺は菅戸 独崋のファンじゃない。画像とかで検索して、可愛いとか思った事は無い。俺がファンな訳はない。


『皆さんこんばんは、かぜぎみガリです!』

『菅戸 独崋です!』

『いやぁ〜GWも終わりましてね、また忙しくなりますけども』

『そうですねー。』

『菅田さんは休みの間どこか行かれましたか?』

『私ですか?

私は友達とテーマパークに行って来ました!』

『テーマパークですか、どこの?』

『いや、それははっきりとは言えないんですけど、有名な所です。』

『そうなんだ、でも行って来たんだ』

『はい、行ってきました。

乗り物が沢山ありまして、お土産まで買って来ちゃいまして、お母さんに「買って来すぎよ」って怒られちゃいましたよ。』

『そうなんだ、でも楽しかったなら良かったですよ!』

『そうですね!』

よし、のっけから期待を裏切らない普通トーク、安定の低クオリティだ。


「私ですか?って他に誰がいるって話だし言わなくてもいいよな。」

でも有名なテーマパークを気遣い敢えて名を出さない配慮は慎ましい。もう一度言うが俺は別にファンじゃない。


『お、今日もね、一杯きてますよ?

早速あのコーナーいってみよう!』

『はい。

菅戸先生の深夜相談室〜!』

出た、人生相談コーナー

投稿者の殆どが大学生で似たような悩みばかり送ってくる正式な答えが皆んな「知らねぇよ」で済むコーナーだ。

「よくこんな悩み毎週聞いてるよな」


『ラジオネーム

餃子を好きなままではいられない。』

『おー!』

それっぽいネーム、おー!ってなんだ


『僕は今大学一年生の新入生なのですが、高校の友達と離れ離れになってしまい新しい友達が出来るか心配です。どうすれば皆と仲良くなれますか?』

『新入生か、新しい環境に身を置き始めた訳だね。』

『そうですねー、早速お電話繋いでみましょう』

そうだ、このラジオは相談者と電話を繋いで直接話を聞くスタイル。しかしその電話がまた変哲が無く、只のファンとの交流に近い内容だ。


『こんばんわー。』

『あ、こんばんわー』

『お電話有難うね。』『いえいえ』

『友達まだ出来てないの?』

『そうなんですよまだ出来てなくて』

『不安だよねー』『不安ですね。』

無機質な電話が五感のどこも刺激しない、何の負担もかからない会話。

「流石だアイドルラジオ、何かを起こそうという危うさが一切無い」

これを聴くことは、一種の瞑想に近いのかもしれない。


『でもさ、友達なんて自然にできるよ高校みたいにクラスじゃないから自由だし。』

『そうですかねー。』


『なんかこう、趣味とかは無いの?

ずっと好きですみたいな物とかさ』

『あー確かに、そういうものあったら仲良くなりやすいかも』


『えー趣味ですか?』

『何か、好きなものはないの?』


『うーん..でもやっぱりひそっかーですかね。』

『えー嬉しい!

わたしの事好きなんだー』

『はっはっは!』

普通だ。

フワフワと浮きながらありがちな事を言って最後にファンですというテンプレートトーク!

「いいぞ、今回も今のところ何も起きていない。」

菅戸独華の良い所は下手に狙いに行かない所だ。面白い事を言おうとせず只放送に没頭する。

「在り方としては優遇マフラーに近いものがあるのかもな」

しつこいが決してファンではない。


っていうメールを送ろうと思う。

僕はラジオリスナー。

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電波のムシロ アリエッティ @56513

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