第30話 恋人だからできること

 ゆりかちゃんは僕に身体を預けたまま、寝息を立てて眠っている。


その寝顔はまるで小さな子供のようで、あどけない。


そうだったのかと思う。


『執事』だなんて言ったのはこういう事だったのだ。


本来、父親にしてほしかったこと、欲しかった言葉、それらを恋人に求めたのだろう。


それを考えると僕の胸は切なくなった。


でも、、、。


これからは僕が彼女の心に空いた隙間を塞ぎ、満たすのだ。


僕は決して彼女の父親にはなれない。

彼女もそれをわかっている。


だからこそ、『父親』ではなく『執事』と表現したのだ。


僕は改めて心に誓った。


彼女が寂しくないように、たくさんの愛情を注ごう。

彼女のワガママを沢山聞いて、沢山甘えさせてあげよう。


僕は彼女の父親にはなれない。

でも、僕は彼女の恋人なのだから。



彼女は僕の膝を枕にしてスヤスヤと眠っていた。

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私の執事は彼女いない歴50年でした。 さとこは執筆中 @python8

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