ハナ ノ捌【了】

-月日は流れ、流れて


桜の乱れ咲く季節が訪れた頃




かつて「蝮」の異名で呼ばれた報道屋の男は、自身が設立した新聞社の執務室にて一人、新聞を眺めていた


「-嗚呼、遠くへと行ってしまった」

溜息一つ、席を立ち。自社の新聞を手の平で叩き、遠く窓の外を見つめて呟いた



「もはや私の、手の届かぬ処に」







花咲、桜吹雪

淡い桃の色味に塗れる中


数多、花見の人々が和気藹々


其の中には、文學結社を設立した面々の姿も在る



-だが、其処には青年と友人の姿は無かった。






舞う、淡い小さな花びら



凡て覆う様に舞い散る其れを嬉々と眺める花見の面々


其処から遠く、離れた場所に

青年と友人の姿は在った



青年は元通りの美しい顔立ちにて

友人は元通りの精悍な顔立ちにて



二人、微笑み合い


其うして固く



固く手を握り合っていた-




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ミヤコ ノ ハナ 青沼キヨスケ @aonuma_kiyosuke

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ