六話/これからも続いてく

「おはよう」


「ん、おはよう、木幡くん」


 一週間の入院を終えて、完全にアウェーな教室に入る。


 挨拶は戸波さんからだけ帰ってきた。遠巻きに奇異の視線だけはあったけれど、気にしたところでどうも出来ない。どうせ害もないしね。


「木幡くん木幡くん、学校分かんないことがあったら何でも聞いてね?」


 戸波さんが目と鼻の先まで接近してる。何でこんな近づく必要があるんですかね良い匂いする……。


「木幡くん?」


「あ、いや。そうだね、うん。確かにそうした方が良いよね……頼りにさせてもらおうか」


「うん、私をちゃんと頼ってね!」


 戸波さんが笑った。陰りの無いその笑顔が眩しくて、俺は目を逸らした。


 ──高校デビューには失敗したことからも目を逸らしたかったけれど、現実は甘くないみたいで。


「よぉ、ズル休み? 楽しそうだなぁ」


「ヒッ!?」


 ダン、と俺の机に置かれたのは、プリントの束。見上げれば強面の男。同級生だが。悲鳴も致し方なしと言えよう。


「俺も混ぜろよ?」


 ──高校生活は始まったばかりなのだ。楽しく生活しろよ?


 何かどっかで運命の神とかそんな奴が高笑いしていそうだな、と俺は思いながら戸波さんを見る。


「ひゅー、ひゅー」


 吹けもしない口笛を吹いているフリ。すっとぼけ方、古いな!?


「なぁ?」


 強面くんが笑う。


 ……あー、アーー、楽しくなりそうだナー高校生活ー!!


──尚彼は単純に俺に課された課題の解き方を教えに来てくれた生粋のいい人でした。はい。

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戸波衣澄は霊感がない リョウゴ @Tiarith

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