第43話 戦いの終わり
こうして法都に巣くっていた悪魔は退治された……かのように見えました。
枢機卿を装っていた悪魔はゼロさんに敗れたのですが、他にいたはずの悪魔の姿はもうありませんでした。
いなくなった枢機卿は4名、他にもかなりの人数の神官さんがいなくなっていたと聞いています。
『どうやら悪魔は撤退したようですね』
『……会長、最後に出て来て何上手いことまとめようとしてるんですか』
『全く役に立ってなかったくせに』
『いや、だって……ババがね?』
法王猊下は地下室に囚われているのをハイル殿下が救出し、事なきを得ました。
ランスさんも枢機卿に復帰して、共に法王庁の復興に励むそうです。
そして……私達はというと。
「あの?大丈夫でしょうか?わたしこういった服は着たことがあまりなくて……」
「最高です!最高!」
「……天使か……」
「嗚呼……神よ……」
法王庁の醜聞を外部に漏らすわけにもいかない為、私達は後日内密に法王猊下とお会いすることになりました。
ですので、わたしも街の仕立屋さんでドレスを見繕ってもらったのですが……
何分こんな綺麗な格好はほとんどしたことがないので正直どうしていいのかわかりません。
『22番!!写真はっ!』
『当然撮り終えてます!万事抜かりなしです!』
『よしっ!』
『なぁ、会長って今回何しに来たんだろうな?』
『保護者的な何かか?』
王国からの特使ということもあり、ハイル殿下や他の騎士さんと大きなお城で法王猊下に謁見したあと、私達は別室へと通されました。
緊張します……
かちゃりと扉が開いてランスさんと優しそうな年配の男性が入ってきました。
さっきは遠目からでしたのではっきりとは見えませんでしたが、この方が法王猊下だそうです。
幾分やつれてはいますが、しっかりとした足取りを見て、ほっとしました。
ハイル殿下や皆さんが頭を下げて礼をするのを手で止めて法王猊下は声をかけて下さります。
「ハイル殿下、礼を言わなければならないのは私の方です。本当にありがとう」
「いえ、当然の事をしたまでです」
「猊下、彼らがいなければ法王庁は悪魔に乗っ取られるところでした」
法王猊下はランスさんの言葉に大きく頷き、再び感謝の言葉を言われました。
「して、悪魔を討ったという方は……どちらに?」
法王猊下──ヨハネス猊下の問いに私達は顔を見合わせます。
だってゼロさんはもう……
「な、なんと……悪魔と相討ちに……」
「はい。見事な最後でした」
『なんか俺、死んだことになってんだけど?』
『そりゃ仕方ないだろ?ってか初めから死んでるし』
ヨハネス猊下はポロポロと涙を流しながら私の手を取ろうと……
「いたっ!?」
『47番、電撃(小)』
『はい!』
『どさくさ紛れに姫様の手を触ろうなどと』
『……いや、今のはいいんじゃないか?』
パチッと私に触ろうとしたヨハネス猊下の手に電撃が走ります。
「あっ!す、すみません!あの……」
「ふむ……なるほどなるほど……」
ヨハネス猊下は手を見てから私に視線を移して何か分かった様に頷きました。
『何か分かったみたいな顔で頷いてるぞ?じいさん』
『じいさんじゃなくて法王猊下ね』
『じいさんはじいさんだろ?』
『……あんた大物だよ』
「それでは法王猊下……」
「うむ、歌姫殿が異端者であるというのは当然撤回じゃ。ワシが不甲斐ないばかりに不快な思いをさせ本当に申し訳ない」
「い、いえ、そんな!お顔をお上げ下さい!」
「すまぬ。それに……いや、これは後程にしておこうか」
「?」
こうして私にかけられていた異端者という濡衣はなくなったのでした。
そして今、私は別室で法王猊下とふたりきりで話をしています。
何かとても大事な話があるとか。
「歌姫殿……ミィス殿と呼んでよろしいかな?」
「は、はい」
こんな偉い人とお話をする機会なんて、戦勝会の時の国王陛下以来です。
緊張してしまいます。
「それではミィス殿、単刀直入にお聞きしますぞ。ミィス殿は死者が見える……若しくは操れるのですな?」
「!?」
「ふふふ、驚かれるのも無理はないですな。何故ならワシにも見えるのですよ」
「法王猊下も……ですか?」
『なぁ、法王さんに俺達が見えるってまずくないか?』
『何でだよ?』
『だって法王庁って死者とか魔物を認めてないんじゃなかったか』
『あ……言われてみればそうかも』
驚いたことに法王猊下は死者さんが見えるそうです。
そして更に……
「ワシ個人としては死者も魔物も否定したりはせんのじゃよ」
「え?」
「ぶっちゃけワシも死者に守られておったからの」
これって聞いて大丈夫なカミングアウトなのでしょうか?
歌姫ミィスと100人(+α)の影。死者達が過保護過ぎます。 揣 仁希(低浮上) @hakariniki
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