第42話 悪魔再び
「これが歌姫様が入手された結界の……」
「はい、入手先はお伝えすることは出来ませんが、結界さえ壊せばわたしの信頼する友人達がきっと駆けつけてくださいます」
ハイル殿下麾下の騎士さん達と共に結界を作る装置の一箇所を破壊する作戦です。
1番さんが言うには、少しでも結界が緩めば皆さんがこの法都に入れるそうですので。
わたしとゼロさん、ハイル殿下と数名の騎士さんは一足先に法王様が捕らえられているとされる場所へと向かうことになっています。
魂さん達が無事に法都に入れればゼロさんが教えてくれることになっていますので、そのタイミングで突入することになりました。
「どうか皆様、ご無事で……」
「ははっ、こっちには歌姫様の御加護があるんです。全員で帰って来ますよ」
「よし!作戦開始だ!」
こうして私達は深夜の法都に散って行きました。
『ひま……ですね』
『ひまだな』
『……………』
『はいっ!そこっ!トランプしない!』
『え?あっ!ぐわぁっ!ババだっ!』
四箇所ある結界の要になっている場所はどこもかなりの警備がしてあってそう簡単には破壊出来るようなものではありません。
当然ランスさんが私達に接触したことは知れているでしょう。
「よし……行くぞ……いち、にい、さんっ!」
「うおりゃあぁぁぁぁぁ!」
「!!て、敵襲だ〜!!」
「ここは俺達がっ!隊長は早く要を!」
私達とハイルさんが城の隠し階段の近くに身を潜めていると、にわかに街のほうが騒がしくなりました。
「どうやら取り掛かったようだな」
「……姫様……まだで……す」
「はい……皆さん、どうかご無事で」
私が祈りをささげているとゼロさんが空を見上げました。
「姫様……大丈夫です……」
『って何やってんだ?あの人達はっ!』
「え!では……」
「はい、突入……しましょう」
『ははは、会長、ババ引いてやんの!』
「よしっ!では突……は?」
ハイルさんがそう言って階段の扉に手をかけた瞬間……轟音と共に私達の前にあった城壁が跡形もなく吹き飛びました。
『会長!会長!中に入れましたよ!会長?』
『ぐぐぐ……ババがっ』
『頼みますから働いてくださいよ』
『会長はダメだ!ここからは私が指揮をとる』
『おおっ!副会長がヤル気だ!』
『61番さん!城壁を吹き飛ばしてやりなさい!』
『はい!』
『続いて15番さん!瓦礫を排除!16番さんと48番さんから50番さんは道の舗装!急げっ!』
跡形もなく吹き飛んだ城壁の後には綺麗に舗装された道が出来ていました。
「……えーっと?」
「大丈夫です、さぁ行きましょう」
隣でゼロさんが軽く頷きます。
どうやら皆さん無事に法都に入れたみたいでよかったです。
私達が道を歩いていると城の方から禍々しい気配が漂ってきました。
やはり悪魔がいるようです。それもこの感じは……
「ケケケケケケケ久しぶりだなぁ?歌ひ……ひぶしっ!!」
ゆっくりと歩いてきたのはあの時の山羊の頭を持つ悪魔でした……が。
『19番さんっ!見せてあげなさい!』
『おおっ!ついに2番さんの自信作が本気を出すのか!』
『戦闘形態!トランスフォームっ!!』
私の横を一瞬で駆け抜けたゼロさんの拳が悪魔を捉えます。
悪魔は大きく吹き飛ばされて彼方の壁に激突しました。
「ハイル殿下と皆さんはこの隙に法王様を!」
「わかった!歌姫殿もどうかご無事で!」
ハイル殿下と騎士さん達が急いで地下へと消えていきます。
「きっきさまぁぁぁっ!!殺してやっへぶしっ!」
瓦礫から立ち上がって悪魔をゼロさんが更に追撃します。拳で。
よく見ればゼロさんの身体が幾らか大きくなっていてすごい力が溢れているのが分かりました。
きっとこれも魂さん達のおかげなのでしょう。
『今回って私と貴方がやるんじゃなかったでしたっけ』
『……会長がババ抜きで全権を副会長にやっちまったんだとよ』
『…………私達いりますかね?』
『…………さぁ?』
「ちょっ!ぐべっ!き、貴様!ちょっと話を!ひぐべっ!」
「さぁ……我が剣技……特と味わえ!」
「な、の、な、な、なぁ〜っ!そ、それはっ!勇者の聖剣技っ!き、貴様っ!まさかっ!」
前回はあれほど手こずった悪魔ですが、ゼロさんがあっさりと追い詰めています。
『でもあれ一発打てばあの身体もたないよね』
『多分考えてないんでしょうね、あのバカ勇者は』
『どうします?副会長』
『……30番さんと40番さんを呼んでください』
『はいっ!』
「く……らえ……グランド……クロス……」
「ば、馬鹿なっ!こ、こんな、い、いやだ……いやだぁ!た、たすけ〜ぇぇぇ!」
プシュっと音がして悪魔は跡形もなく消え去り……
「ゼロさんっ!」
ゼロさんの身体もサラサラと砂になって崩れていきます。
「ゼロさんっ!」
「姫様……大丈夫です……また……空から……お守り致しますゆえ……」
「ゼロさん……」
ゼロさんの身体は砂になって崩れ、風に流されていきました。
ゼロさん……ありがとうございます……
『いや、何か俺死んだみたいになってない!?』
『嗚呼さようなら……19番さん……貴方の勇姿は忘れません』
『いやっ!死んでねーし!』
『初めから死んでるじゃないですか?』
『…………』
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