第41話 法王救出作戦



「それは……間違いないのですか?」

「はい……残念ながら」


 わたしは昨日聞いた話をハイル殿下はじめ騎士団の皆さんと冒険者さん達に伝えていました。


「情報の出所は……教えてもらえませんよね?」

「すみませんが……」

「ふむ、しかし我々としてもはいそうですか、と動くわけにもいかないのですよ」

「はい、それもよく分かっています」


 ハイル殿下は腕組みをして難しい顔をして黙りこんでいます。

 もちろんわたしにも分かっています、急に法王様が亡くなっているかもしれないだの悪魔がいるだのと言われても信じることなど出来ないでしょうから。


「とりあえず皆と相談してからですね」

「はい、お願いします」



『会長、よかったんですか?あれで』

『何がです?』

『何も姫様と冒険者に頼らずとも30番さんと40番さんに任せればすぐに終わるんじゃ?』

『そういうわけにもいかない理由があるのですよ』

『理由ですか?』

『そうです、基本的に神はこの世界に不干渉であるべきなのですよ。あくまで姫様に助力するのみです』

『でも……あの人達って……』

『ときには見て見ぬ振りも大事です』

『はぁ……』



 こうして何事もなく時間だけが過ぎていきました。

 そんなある日のことでした。


「え?法王様の使いの方がですか?」

「はい、下にお見えになられておられますが、どう致しましょうか?」


 話に聞くには法王様は……いえ、もしかしたらまだご存命かもしれません。


「すぐにお会いしましょう。ハイル殿下にもご連絡をお願いします」

「わかりました」


 わたし達の部屋に入ってきたのは騎士さんや神官ではなく普通の町人の格好をした男性でした。

 訝しげに男性を見るハイル殿下以下騎士の皆さん。


わたくしは法王猊下の元家臣でランスと申します」


 そう言って頭を下げるランスさん。


「ランス……もしや枢機卿ランス・エルダーランド殿か?」

「はは……元です。今はただの町人でございます」


 ハイル殿下がよくわからないわたしに説明してくれます。


 枢機卿ランス・エルダーランド

 法王様直下の枢機卿で清廉潔白にして世界有数の神聖魔法の使い手としてしられていたが3年程前に突如として姿を消したと。


 ランスさんが言うには法王様の命により野に下り機を伺っていたそうです。

 現在、法王様は法都の城の地下に監禁されているそうでまだご存命だそうです。


「でもどうして悪魔は法王様を殺さないのですか?」

「はい、それには訳がありまして……法王猊下は世界に散らばる聖遺物の1つの在り処をご存知だからでしょう」

「聖遺物?」


 ここでもハイル殿下が説明してくれます。


 聖遺物とは古の時代の魔法道具でありその一つ一つが強力な武器であったり防具であったり、またはそれに準ずるような力を秘めているそうです。


「法王猊下の知る聖遺物は……支配の錫杖なのです」

「なんと!まさか……本当に……?」

「はい、故に悪魔供はその在処を法王猊下から聞き出すまでは命をとるようなことはしないでしょう」


 支配の錫杖……それを持つものは世界の全てを支配出来るとも言われる聖遺物の中でも一二を争うほどの希少品だそうです。


「ですが、どうしてランスさんはこのタイミングで我々の元に?」

「はい、それは昨日私の夢に神より神託があったのでございます。遠方より来たる歌姫に縋れ、と」

「歌姫様に……ですか?」

「はい、何卒!何卒!法王猊下をお助けください!」


 頭を擦り付けるように下げるランスさん。


「頭をお上げください、ランス様」


 わたしはランスさんの手をとり皆さんに告げました。


「わたしはランスさんに協力しようと思います。皆さんは……」


 わたしが聞くまでもなく皆さんは笑顔で頷いてくれました。


「皆様……くっうぅぅっ」

「ランス様、泣くのは法王様をお助けしてからにしましょう、ね?」

「はっ、はい!」


「よし、では作戦会議を始める!おそらくはランス卿が我々に接触したことは悪魔も掴んでいるだろう!今日明日にでも決行する必要がある!」

「はい!」


 こうしてわたし達は法王様救出作戦を展開することにしたのでした。








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