第233話 光り輝くマリア

4月5日 日曜日

 午後5時。セブ、バランバンの自宅の庭でビールを飲む。西の空が赤くなり、プチは入り込んできたネコを威嚇して吠えている。


 俺の膝の上には娘のマリアがいる。

 目を開けて俺を見ている。

 頬をつつくと笑う。


 意識の声が聞こえる。

「あんまり飲んじゃダメだよ」

「分かってるよ。お前のかーちゃんにも言われてる」


 イザベルが母家から出て来た。

 俺の横に椅子を置いて座る。

 何も言わず、俺達を見ている。

「イザベル・・前に言ってたよな。俺みたいに手を当てて治療が出来たって」

「ああ、あれはマリアが生まれてから出来なくなったの。多分、この子の力ね」

 俺はマリアに話しかける。

「お前も俺みたいな力を授かったのか?」

 意識の声。

「たぶん。パパより強いかも知れない」

「そりゃ凄いな」

 イザベルが言う。

「ズルい。マリアと何を話してるの?」

「俺みたいな力が有るってさ。俺よりも強いかも知れないって」

「そうなんだ・・・普通に育ってくれてもいいんだけど」

「いいじゃないか。スーパーウーマンになるってのも」

「でも、あなたみたいに争いに関わったりして欲しくないわ」

「確かにそうだな」

 マリアに言う。

「いいか、マリア。お前の力は平和的な事だけに使うんだぞ」

 マリアは笑った。

 俺に似ず、人形の様な綺麗な笑顔だ。生後3ヶ月半にして美人になっている。


 海からの風が吹き、辺りの落ち葉が舞い上がる。


 俺達は家の中に入った。

 2階の寝室に行き、マリアをベッドに寝かせる。

 俺とイザベルは肩を寄せてマリアを見下ろした。

 マリアが笑う。

 そして口を開いた。

「パパ・・・ママ・・・」

 それは、はっきりとした言葉だった。

 イザベルがマリアに言う。

「カム アゲイン」

 マリアが再び口を開く。

「ママ・・パパ・・」

 そして笑う。


 俺の視界が歪む。涙が出てきた。

 イザベルが俺の腕に抱きつきマリアに言う。

「アイ ラヴ ユー ベィビイ」

 俺も言う。

「アイ ラヴ ユー マリア」

 マリアが声を出して笑い、そして言う。

「アイ ラヴ ユー・・・」


 マリアの全身が光り輝いていた。


         第2部 完




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 長い間、お付き合い頂き、有難うございました。

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欲望まみれの還暦スーパーマン 北条誠 @makoto0822

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