第232話完成披露パーティー

4月5日 日曜日

 朝から天気がいい。

 パオを連れて代々木公園まで歩く。


 1時間ほどをパオと散歩して帰り、幸恵が用意した朝食を娘達と食べる。

 

 中本寮の完成披露パーティーは11時からだ。自分の部屋に戻ってシャワーを浴びる。


 シャワーを終えてパンツ1枚でベッドに横になる。

 ウトウトしていると娘達が部屋に入ってきた。

 綾香はミニスカート、マキはショートパンツで、2人共に綺麗な脚をしている。

 2人は俺の両脇に寝転んだ。

 両側から俺に抱きついて来る。

 俺は自分を抑えるのが大変だ。

 

 8時になり朝食を食べる。

 俺はバタートーストと味噌汁だ。

 厚切りのハムも1枚焼いてもらう。

 お歳暮で届いたハムを未だに食べきっていない。


 リクライニングソファーに座ってテレビを眺める。

 ニュースでは百済県のストライキ騒動の顛末を報じている。


 先月、百済県の電器機器工場でストライキが起こった。元韓国人が煽動して起こした騒動で、直ぐに会社側は張本人の首を切ったが、出来たばかりの労働組合が反発し工場は一時休業となった。

 会社側は警察の介入を受け入れ、ストライキに参加していた社員は排除され、全員が解雇された。

 全社員の3分の1が解雇された訳だが、工場は直ぐに平常業務に戻れた。

 組合に入り、会社側に抗議ばかりを言う連中は其ほどの戦力になっていなかったのが証明された。

 会社側は残った社員の給料を一律20%上げた。

 組合の賃上げ要求は10%だったのだが、それには応えずにストライキに突入させ解雇に追い込み、優秀な社員だけを残した会社側の戦略的勝利だった。


 解雇されたほぼ全ての従業員は元々反日で慰安婦像の設置にも関わっていた連中だったのが判明していた。


 午前9時半、二階堂が来る。

 NPO責任者の香川は既に中本寮に行って準備をしているらしい。パーティーの進行などを俺に説明する。


 司会はNPOスタッフで、元はアナウンサー志望だった女性がやると言う。

 パーティーの参加者は、地元の区会議員や国会議員、文部科学省の役人に加えて安部総理も顔を出してくれるらしい。寮生も参加する。


 南千住の現地には神原の運転するアルファードで11時15分前に到着した。

 娘達も来たいと言うので連れてきた。

 駐車場には黒塗りの車が並んでいる。


 中庭に置かれた約200の椅子に着席した参加者が見守るなかで、中本寮の完成式典が行われた。

 議員や教育関係者の挨拶が続く中、安倍総理が到着し、マイクの前に立っていた地元議員は話を切り上げて総理にマイクを譲った。

 総理の話は簡潔で、施設完成のお祝いと奨学金供与等に対しての政府をあげてのお礼だった。

 演壇から降りた総理は俺の方に歩いて来て握手をした。

 司会者が俺の名前を呼ぶ。俺が座っていた椅子を総理に勧める。


 演壇に立って列席者の顔を眺めた。

 皆がにこやかな笑顔をしているが、頭の後に黒い霧が掛かっている者もいる。

 マイクの前に立った。

「本日は中本寮の完成披露にお集まり頂き有難うございます。当NPOでは学生への奨学金も出していますが、この寮は、基本的に各部門での突出した学生のみを受け入れています。平均的に高い得点を取る学生では有りません。何かを目指し、理想の実現に向けての努力をする学生達の応援をしたいと思っています。当NPOは本日より形を変え、中本財団として活動をより活発な物にして行きます・・・」

 俺のスピーチは約5分で終わった。

 シャンパングラスが配られ、演壇で受け取った俺の隣に安倍総理が立った。

 中本寮を建てた土地の、前の所有者だったJRから来た副社長が乾杯の音頭を取った。 

 俺は総理とグラスを合わせながら言った。

「こう言うの面倒ですね」

 総理は笑いながら応える。

「まあまあ、中本さん、そう言わないで。私なんか年に500回は乾杯してますよ・・・でも今日は特別ですから」

 グラスのシャンパンを飲み干して、総理は俺の肩を軽く抱いて退席した。


 完成パーティーは2棟の寮の間に建てられたレストラン等の共有スペースになっている広間で行われた。立食だ。

 入寮を許された学生達と話をしながら用意された料理を食べる。

 天才肌と言うか、少し変わった学生が多かった。

 

 式典に参加していた何人もが名刺を持って近づいて来た。当たり障りの無い話をして、30分程で逃げ出す。


 自宅で一休みしてセブに向かって飛び立つ。

 日本の将来も大事だが、家族はもっと大事だ。

 

 


 


 

 

 

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