【ЯGW5】狂乱のリレー小説。逆走編

越智屋ノマ@ネトコン入賞2024

只野 人志 は ただの ひと(ハゲ気味)

 4月27日(土) 8:00am


「にゅあ~♪」

 愛猫マリーが上機嫌で刺身を平らげる様子を、いとおしげに見つめる少女。彼女の名は、神代かみしろりりす。

 

 誰もが知らない事実だが、彼女はかつて魔法少女リリスとして神にあらがい、勝利を収めた英雄だ。


 世界を神の呪縛から解放し、自らも記憶と魔力を消滅させて、今ではただの少女として自由な日々を送っている。


 りりすは、ふと壁の時計を見た。

「あ! もうこんな時間!」

 

 いけない。急がなきゃ! 今日はGWゴールデンウイーク初日だから、いつもより開店時間早いんだった。


 そんな独り言を漏らしながら、身支度を整える。


「行くよ、マリー。早くケージに入って。嫌がらないの! お刺身ぜんぶ食べたでしょ?」

「にゅあ~、にゅ、にゅあ(汗)」

「留守番なんてダメに決まってるでしょ。マリーがいなきゃ、お客さん帰っちゃうよ!」


 りりすは愛猫をケージに押し込め、全速力で家を出た。


 * *

 

 りりすは自転車の荷かごに猫用ケージをくくりつけ、バイト先へと急いだ。


 りりすとマリーは、駅前の猫カフェで一緒にバイトしている。

 毛足の長い白猫であるマリーは店で一番人気の猫で、人間以上に時給が高い。


 今年のGWは超大型の十連休だから、店が忙しくなることは間違いない。


「さ、稼いで美味しいものどんどん買おうねマリー!」


 坂道を下りきったそのとき。

 いきなり。

 奇妙な情景が脳によみがえった。


 それは、緋色のドレスをまとい4枚の羽根を背に宿した自分の姿。

 黄金の鍵を握りしめ、怪しい男と対峙する自分。

 魔法のような、光の奔流。


「……?」


 フラッシュバックは一瞬で終わった。


 りりすは過去にも、この場面を見ることが何度かあった。


「……アニメの身過ぎかなぁ」

 コスプレ趣味はないんだけどな、と苦笑して首を傾げ、


「ま、いっか。よし行くよマリーっ」

「にゅあ~!」


 気合いを入れ直して、バイト先へと急いだ。


 * * *


 一方。

 坂道を下って遠ざかる少女の背中に、熱い視線を注ぐ男がいた。

 

「あぁ……りりすたん、りりすたん、りりすたん、りりすたん……、むはぁ……!」


 気持ち悪い桃色吐息ももいろといきを漏らす、40代後半のこの男。

 名を只野ただの人志ひとしと言う。


 誰も知らない事実であるが、この男はかつてガチで神だった。

 ”神の箱庭”にリリスを囲ってムハムハしていた。


 しかしリリスに反逆されて、神としての記憶も力も奪われた。


 この世にはもう、神はない。

 

 いまや只野は、ただの人だ。日雇いバイトで生計を立てる、内気で微妙な中年おやじである。


「りりすたん……」


 只野にとって、神代りりすとの出会いは、まさに運命だった。

 

 ただコンビニですれ違っただけの出会いなのだが、只野は瞬時に理解したーーこれは運命の出会いなのだと。


 神が作ったとしか思えない、ボン・キュ・ボンの最高プロポーション。只野の好みを全部詰め込んだような、美の化身……

 りりすは只野の、理想の少女だった。


 彼は密かにりりすの尾行を続け、りりすの家やバイト先など、主な生活の場を把握していた。


 今日こそは、勇気を出そう。りりすたんとお話して、僕の気持ちを伝えよう。


 そう決心した只野は、りりすが勤める猫カフェの、ドアを開いた。



「りりすた………………っ、え??」


 猫カフェに踏み込んだ只野は、想定外の光景に息をのんだ。


 その、光景とはーーーー  


                    to be continued...

続きは竹千代氏の作品↓↓↓

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889459258

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