はたらく消臭剤
しろめし
最終話「さらば消臭剤、世界は悪臭に包まれる」
「ババアにはこれがお似合いだぜ」
私の手に握られたトイレの芳香剤。私の手を離れ緩やかな放物線を描くと、ババアのだらしなく開かれた口へと吸い込まれていく。
どうも、トイレの芳香剤です。
職業は消臭。趣味はジャズミュージックを聞くことです。
今日も悪臭成敗のためにひと仕事いたします。
今日の職場は地獄だった。ババアの口内は今までのどの戦場よりも悲惨だった。
「アアア!消臭力!奪われる!」
ババアの長年培われてきた食べかすと虫歯菌が醸し出す不協和音が、消臭剤の長年積み上げてきた実績をあざ笑うように奏でられる。
「アアア!」
無色透明な消臭剤がどす黒い茶色に変色していく。
「このババア!ウンコよりもウンコらしい口臭だ!」
この状態の消臭剤を取り出し部屋の中に置いたならば、たちまち辺り一面公衆便所スメルになってしまうだろう。
paint it black。漆黒は全てを塗りつぶす。
「モガ!モガガ!カァーッ!ペェエェェェェェェエエェェエイイイ!」
「アオオオ!痰!逃れられない!」
ジャイロ回転をまとったババアの痰が消臭剤に突き刺さる。海辺に建てられた砂の城を踏み潰すように、儚く、軽々と消臭剤は砕け散った。
そして粉末と化した消臭剤を喉につまらせババアは死んだ。
なんだこれ。
おしまい。
はたらく消臭剤 しろめし @hakumai_daisuki
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます