※小説は絶対評価だ、ということで星の数は適当です。
※最後まで読んだ感想です。
個人的な信条として、それがどんな方法であれ、「自分に襲ってきた痛みを受け止める奴は偉いんだ」というのがあります。
どうも年を取ると、痛みを引き受けることよりも痛みを受け流すほうに力点を置いてしまう。「しょうがないよね」とか「ちっぽけな人間一人、どうしようもできない事ってあるからね」とか、それが悪いとも思いませんが。
この小説の主人公である高校生の潤一は、テロリストに家族を奪われ、葉月という女性からテロリストを狩る組織への勧誘を受けます。
個人的に、このスカウトのセリフが非常に印象的だったので、一部引用して紹介します。
『目には目を歯には歯をだ。君には、こいつら(テロリスト)を殺す権利がある』
『もし復讐しないのならば、君のご家族は君にとって、死んでも復讐してもらえないという、『その程度の存在だった』ということだ』
(第四話より一部引用)
これを言ったのがいい年した大人なら「物を知らない高校生の子供焚き付けて傭兵まがいのテロでもさせる気か」と、ペテン師の疑いをかけるところですが、葉月もまた、潤一と同じような痛みを抱える十代の少女だと知ると、印象が変わります。
復讐だって、傍から見れば非合法な殺しでしかないわけで、「結果として、憎いテロリストと同じ土俵に上がってどうするよ」と批判するのは簡単。でも、彼らは、そうすることで痛みを引き受けようとしている。簡単に切って捨てたくないと思います。
若さゆえの“痛み”と“イタさ”を、容赦なく描ける作品だと思いました。
とはいえ、やっぱり少年少女たちが集まっているせいか、潤一、葉月、そして仲間の一人である狙撃手和也との三角関係が出来上がってしまいます。
「ラブコメなんぞやっとる場合か」「いや、このまま復讐なんてやめて、適当にお茶濁して青春ラブコメモノにシフトするのもありか」いずれにせよ、彼らが辿る道の果てを見てみたくなります。
と、思ったら、実は四角関係になりつつあることが分かってきました(???「これが若さか」)。目が離せない、テロと青春の日々。
2019.12/3追記
完結まで読ませていただきました。
潤一に秘められた過去と確執と、別離と決戦、短い中にギュッと詰め込んで、まだまだテロと青春の日々は続いていくのだな、彼らの物語の続きを、できればハッピーエンドを読んでみたいなと思いました。