塩分過多 三十と一夜の短篇第37回

白川津 中々

第1話

 空を眺めていたら何かが光った。

 低く風を切る一閃の一線。程なくして爆発音が響く。落下したのだろうか。


 隕石かな?


 そう思った矢先に訪れる熱波悪臭。そして悲鳴。見れば人々が塩の柱となっていく。絶叫したそばから沈黙していく地獄絵図。頭に描くはソドムとゴモラの堕落都市。あぁ。人類はとうとう神の怒りに触れてしまったのかと無常観。



「あぁ神よ。どうかお助けください」


 二年前に伊勢神宮に参ったくらいの信心しかなかったが俺はとにかく祈った。自分だけが助かればそれでよかった。

 死にたくない。死にたくない。死にたくない! 南無阿弥陀!


 目を瞑り念仏を唱える事しばらく。音と熱はなくなった(臭いは酷いままであったが)。

 恐る恐るまなこを開けばそこはやはり塩の柱が立ち並ぶ見慣れた街角。生存者は俺一人だと直感。


「thank you 神様!」


 神に感謝を示し、俺はピンクのふしだらな服を着ていた女がいた場所に立っている塩の柱を暴いた。するとビンゴである。中には、そのピンクのふしだらな服を着ていた女がアンチョビとなっていたのだ。これはもう背徳するしかない。


 悪臭の中、俺は漬物となった女を犯し、果てた後はスライスにして焼いて食べた。


 野蛮の極致。天に唾吐く悪徳。だが、それを咎める者はいない。

 焚き火に照らされる女の二の腕を見て、また唆る。あぁ。俺は狂ってしまったのかもしれない。

 だがそれでもいい。いや、それがいい。

 縛られ生きる人間社会とは違い、俺の魂は今、眩く、キラキラと輝いているのだから。

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塩分過多 三十と一夜の短篇第37回 白川津 中々 @taka1212384

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