第30話 すこサイダー

 暦が秋を告げると、暑さは厳しいというのに、なぜだかもう、夏の盛りは過ぎてしまったのだなと寂しくなります。


 さて、地ビールがあるように、地サイダーというのも、全国各地にあるのをご存知でしょうか。

 地元でのみ流通していることがほとんどで、ふだんは目にすることはありません。


 物産展が開催される時に、さまざまな郷土食品と一緒に並んでいるのをタイミングよく見つけたら、手にすることができます。

 最近では、アンテナショップで購入できますね。


 ネット上のつぶやきで見かけて、あれ、これって、食べたことはあるけど飲みものになってるの? と思い、福井のアンテナショップで見つけたのが、奥越発信の地サイダー、その名もすこサイダーです。


 正式名称は、「名水すこサイダー」。

 天然ピンクに、ハートが描かれたラベル。

 ほんのり甘酸っぱいのも、ハートラベルとマッチしています。

 

 すこサイダーを開発したのは、奥越穴馬のある和泉地区を含む福井県大野市です。

 正確には、大野商工会議所内の名水すこサイダー実行委員会です。


 日本百名山に福井県で唯一選ばれている荒島岳。

 その荒島岳を含む1,000m級の山々に囲まれた大野盆地に湧きだす地下水は、町の至るとこに清水しょうずと呼ばれる湧水地となって湧き出ていて、大野の人々に親しまれています。

 大野の名産品として知られている、この暮らしに欠かせない清らかで美味しい水で育った里芋と名水が、すこサイダー誕生のもとになっています。


 では、すこサイダーの正体について、今少しみてみましょう。

 

 まず、「すこ」は、奥越前大野の郷土料理です。

 八つ頭、サトイモの茎の部分を、赤芋茎ずいきといいます。

 このずいきの酢漬けのことを、「すこ」といいます。

 郷土料理を英訳した本を見ましたら、「Suko (Red taro stems)」となってました。


 すこですが、各家庭で多少違いはあるものの、概ね次のような作り方をします。



「すこの作り方(郷里版)」


材料

 赤芽のずいき(里芋の茎の赤いの)

 酢、砂糖、塩、酒


作り方

 薄皮をむいて適当な食べやすい大きさに切って塩をふって、鍋でからいりします。

 すると汁が出てきます。

 そこに酢を入れます。

 さらに、砂糖、塩、酒を入れて味をととのえます。


※通常は秋の里芋のとれる頃に作ります。



 淡いピンク色のすこサイダー。

 すこは濃い赤ですが、煮汁はピンクです。

 名水すこサイダーは、赤ずいきの酢漬け味と謳っています。


 飲み口は、炭酸にしては意外にやさしく、ほんのり甘くて飲みやすかったです。


 里芋の葉を模したハートの描かれたラベルのピンク色の甘酸っぱい炭酸飲料、往く夏を惜しむ蝉の鳴き声とともにいかがでしょうか。



※奥越の夏の風物と「すこ」が登場する奥越昔語り、よろしかったらご覧ください。


『奥越奇譚拾遺』


「蝉の声」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884526082/episodes/1177354054890396828


「山のばば」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884526082/episodes/1177354054890748903



 








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