1-2 三人組の中心格・御先幸人
「んー?」
見れば、十歳位の少女が、妹らしき女の子を抱えて回っていた。その目は喜びに輝き、満面の笑みを湛えている。
「何だろ、あれ。何かあったんですかねぇ?」
「決まってんだろう。これだよ、これ」
両隣から視線を受け、
「……何だ、二人共」
「何だって、なぁ、不破?」
「ねぇ、カナさん?」
意味ありげな目配せを交わす二人に、幸人はゆっくりと目を瞬かせる。
「私は何もしていないぞ」
「何もしてなくても、幸人はなぁ。もう存在がなぁ」
「まぁ、若ですからねぇ。仕方ないのかもしれませんけどねぇ」
片や諦め混じりに、片や嬉しそうに笑われ、幸人はもう一つ目を瞬く。
「ま、気にすんな。どうせお前には分かんねぇよ」
「そうそう。そんな事より、聞いて下さいよぉ」
功太郎の明るい声が辺りに響く。面白可笑しく語られる内容に、要は呆れ、何度となく突っ込んだ。その度功太郎も言い返し、馬鹿馬鹿しい話を続けた。
そんなやり取りがされる中、一人黙り込む幸人。
普段も聞き役に徹している事が多いが、本日は功太郎と要の会話にも耳を貸していない。
只管、考え込んでいた。
(え、要の言う『これ』って、本当に何だ? 私は一体何をしてしまったんだろう。娘さん達が悲鳴を上げるような事なんて、していない、よな? 直前に、たまたま目が合っただけだし……
え、まさか、それが原因?
う、嘘だろう、そんな事で悲鳴を上げられただなんて。
確かに、一瞬変な空気は漂ったけどさ。でもすぐに逸らしましたからっ。帽子を被り直すふりをして、すぐに前を向きましたからっ。だからこれしきの事で不審者扱いはされていない筈、だと、思うけど……でも、要も功太郎も『お前、理解していないな』みたいな顔をよくするし……
もしかしたら私、実は普段から不審者っぽいのか? だからよく遠巻きに様子を窺われたり、こちらを見ながらひそひそ話されたりするのか……? だ、だから、友達が功太郎と要しか、いないのか……)
幸人の背中が、僅かに丸くなる。だがほんの僅か過ぎて、誰も気付いていない。
表情もほぼ動かず、涼しげなまま。動揺のどの字も見当たらない。
(……これも、我が家に代々伝わる呪いのせいだ。よりによって不審者だなんて……うぅ)
しかし、内心は見た目程平静でもなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます