さよなら平成

月下るい

第1話

車窓から見える景色はいつもと変わり映えしないものだ。街並みも、空の色もいつもと大差ない。

「平成最後の日がやってまいりました。」

スマホから流れて来る言葉にも、大して面白みはない。

「まもなく、終点。令和、令和です。」

アナウンスを聞いて多くの人がぞろぞろと出口に向かう。新しい時代、か。

「めんどうだな」

そう呟くと隣から声が聞こえた。


「えー、めんどうとか言っちゃう?わけわかめ」

「言いたくなるのもあたり前田のクラッカーだよ」

「気にし過ぎない方ががよくってよ」

「バンカラを消す訳にはいかぬ」

「何事も諸行無常なり」

「世が移りても、ちひさきものはみなうつくし」


「「「あなたは次の世をどう生きるの?」」」


「……私は」


そう口を開いた刹那、聞きなれた目覚ましの音が私の科白を遮った。見渡すと、何の変哲もない私の部屋だ。テレビからはいつものニュースキャスターの声が聞こえてくる。


今日も、他愛ない一日がはじまる。


「令和 元年の初日、皆さんはどのように過ごしますか?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さよなら平成 月下るい @rui_gekka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ