いじわるサンドスター

あきなろ

そんな日々

「ふーっ、サンドスターの研究って思ってたより全然楽じゃないね」


分厚い本を閉じ、かばんは背もたれに頭を預けるようにして一息ついた。


「弱音ですか?やると言い始めたのはおまえなのですよ」


呆れたような顔で博士がかばんを見る。


「だって、コレ見てよ。似たような名前が多くて多くて」


「??なになに・・・、サンドスターの類似種がいくつか確認されており・・・

 これらは似ているようでサンドスターとは全く違う効果をもたらすものもあるので注意が・・・ふむ」


「そこ、その下にだーっと書いてあるやつ。博士も読んでみてよ」


「サンドスター、サンダラスター・・・ですか」


「そこからずーっと下まで読んでごらん、私の気持ちがわかるから」


「サンダースター、ランドスター、サンバスター、サドンスター、サヴァンスター

 サギンスター、サイバスター、サンガリアースター・・・

 バカなのですか、昔ここにいたヒト達は」


「でしょ!?いくらなんでもちょっと酷いと思わない?」


「・・・ふむ、まあ気持ちはわかりますが、ゆくゆくのパークの発展に繋がるというのなら

 これも必要な知識なのです、私と助手がちゃんとサポートするので一緒に頑張るのですよ」


「ふぇーい」


もたれた椅子をぎっこぎっこと揺らし、かばんが生返事を返す。


「でー、その助手さんはー」


「別の資料をとりにいったのですよ」


「ずいぶん前じゃない、きっとつまみ食いでもしてるんでしょー」


「やれやれ、だらだらモードになった時のかばんはこれだから・・・」


そう言いつつも博士がかばんの背中にまわり、軽く肩を揉んでやる。


「う゛あ゛~~~」


「肩がカチカチなのです、また本を読みっぱなしでヘンな体勢のまま寝ましたね?」


「気づいたら寝てたんだからわざとじゃないよ~、あ、もっと内側」


「はいはい、わかったのです ここですね」


ぐり


「あいだだだだ!!はかせっ、痛いっ!」



「・・・・・まったく、二人で何を遊んでいるのですか」


そんな二人を横目に助手が戻って来る。


「おや、助手。遅かったですね、つまみ食いですか」


「はがせっ いだいって」


「つまみ食いはしましたけども、それ以上に大変なものを見つけたのです」


「大変なもの・・・?」


ぐりり


「ひぃっ、いだだ」



―――――――――



「この本を見て欲しいのです」


そういって助手が広げた分厚い本を3人でのぞき込む。


「この本にはですね、サンドスターと似て非なるものの存在が書かれているのです

 これは大発見ですよ、主に私の」


「おお、助手はエラいね よしよし」


かばんが助手を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めてゆらゆらと揺れる。

この二人は他のフレンズがいなければ普段はこんなもんだ。

甘えん坊というか、素直というか・・・


「かばん、お前の助手は私なのです。その助手の助手の功績は、助手の功績でもあるのですよ」


「やだ、さっきいじわるされたから撫でないよ」


「ぐぬぬ、覚えてろなのですよ」


「博士、怒らないでほしいのです」


そう言って助手が博士の頭を撫でるが、さみしさと不機嫌で膨らましたほっぺたはそのままであった。


「で、助手。どこに大変な部分が書いてあるのですか」


「ここなのです、似たような文字が多いからしっかり目を開いて読むのですよ」


二人はもう頭をくっつけ合って、本に夢中になっていた。


(いいなぁ、もふもふでお団子みたい。・・・たまーに、私も鳥のフレンズだったらなぁって思う)


二人の仲睦まじい姿にほっこりしつつ、助手が指さす部分をなぞるようにかばんが読んでいく。


「なになに・・・、センドスター、シンダースター、サンディーター、セィンドスーター・・・」


「「はぁ・・・」」


かばんと博士は大きな溜息をついた。


「な、なんなんのですか二人共、これは私の大変な発見で・・・」


「博士、ちょっと早いけどお昼ご飯にしようか」


「いいですね、名案なのです」


「あっ、なんなのですかっ ちょっと!待つのですよ!」


早々に投げだしてキッチンへ向かう二人を、慌てて助手が追いかける。


「かばんは疲れてるのでしょう、料理は私がやるから座っててもいいのですよ」


「・・・」


ぽむっ、とかばんが博士の頭に手を置いてやる。


「ん。」


「・・・・・・ん??」


そのままでいると、博士が顔を真っ赤にしてかばんをにらみつけた。


「なんのつもりなのですか」


「なんにも?」


「むあーっ!撫でるならさっさとするのです!」


「手を置きやすいとこに頭があったから。置いただけだよ、撫でませーん」


「きいーーっ!」



ぱたぱたと追いかけ合う二人。

こんな楽しい日々があって、ボクらはここにいて


――――キミだけが、ここにいないけれど



きっとまた、いつか、会える日が来るのかな。



                      おわり。

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いじわるサンドスター あきなろ @akinaro0105

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