スペルバウンド
頑子
スペルバウンド
景気が悪いのも当たり前になった頃、
国という国の仲が険悪になり始めた。
それが当たり前になってしばらくした頃、
オレはパイロット候補生だった。
戦争には行きたくなかったが、仕方が無かった。
よほど逼迫していたのか、実戦は思ったよりずっと早かった。
一度だけ。
真っ向から斬り結んだ。
相手の顔をはっきりとみた。
生命は拾ったが左腕は動かなくなった。
墜ちたオマエの取り分だ。
オマエのことは忘れない。
戦争には勝った。
圧勝だったとメディアは騒ぐ。とんでもない。前線ではどちらも必死だ。
オレが今生きて在るのはたまたまだ。
障害年金と慰労金を元手に、
花を
動かなくなった左腕は、心の支えとしてはとてもよく動いてくれた。
交配した選抜花には‘Spiritus’と名付けた。
spirit of usだ。
墜としといて言う事でもないが、いいだろ?
……オレの歳が50を回った頃
かつての敵国の青年が訪れた。
オレの作品を何処かで知ってくれて
観に来てくれたのだ。
自分のやってきた事を認めて欲しくて
説明にも熱が入った。
青年は昔から在る銘個体と、
幾株かのSpiritus達を買ってくれた。
オレの最初で最後のお客様だった。
オレ達が死地へと向かった当時と似た空気。今はいつだろう?
かつての敵国に意識を向けると青年は初老を超えていた。
かつての青年の側には、いまの青年がいた。
……彼が青年やオレ達の「SPIRITUS」を継いでいくのだろう。
スペルバウンド 頑子 @RX-76Ganko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
問わず語り/頑子
★6 エッセイ・ノンフィクション 連載中 27話
ウォルトン・グランジ/頑子
★12 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます