第78話 共闘

 混乱の中、僕はルナの隣で戦っていた。彼女の黄金の剣がキメラを次々と切り裂く。僕も彼女に合わせ、剣を振るう。僕たちは共に戦っている。それだけで、何か心強い。


「前島!」


 僕は叫ぶ。彼女はその場に立ち、妙な笑みを浮かべている。彼女のエンド、『マッドサイクロン』は、彼女の周りに渦巻く狂気のよう。その力は、『魔物(ガリウス)を操る力』とシュバルツは説明している。


 彼女は笑いながら言った。


「ねえ? スリルを楽しまない? こういう戦いって最高だよね!」


 狂気じみたその言葉が、戦場に響き渡る。僕は心の中で怒りを感じつつも、冷静さを保つことに努める。


 その時、ルナが僕の隣に寄ってきて、静かに言った。


「落ち着け、優……冷静に、一つ一つ対処していくぞ」




「落ち着け」


 ルナの声が僕の耳に届く。でも、僕には無理だった。この場所、この状況、全てが僕を苛立たせる。前島の顔を見るたびに、過去の記憶と怒りが蘇る。彼女は許されない。


 復讐。その一言が僕の心を支配していく。僕の中で何かが壊れていく音が聞こえるようだ。


 そこに、相棒のシュバルツが声をかけてきた。


『落ち着け、優! あいつのエンド『マッドサイクロン』は厄介だ。そして、このキメラも全てあいつのせいだ』


 シュバルツの言葉にもかかわらず、僕の怒りは沸騰していた。前島に対する憎しみが、僕の中で渦巻く。僕は前島とキメラに向けて歩みを進める。それはもはや止められない動きだった。


 剣を握りしめながら、僕は心の中で叫ぶ。この怒り、この復讐、僕はこれを止めることはできない。僕はもはや、ただの戦士ではない。僕は復讐者だ。


 前島の笑顔が僕の怒りを煽る。彼女は僕たちの苦しみを楽しんでいる。僕の剣がキメラを切り裂く。一つ、また一つと。これが、僕の戦い方だ。


「前島!」


 僕は叫びながら彼女に向かっていく。



 僕が前島に近づくと、彼女の嘲笑う声が耳に飛び込んできた。


「ねえ、笹森? あなたのこと、クラスメイトたちはどう思ってると思う? みんな悲しいだろうね。こんな面白くないやつに殺されるなんてさ」


 彼女の言葉が、僕の心をえぐる。そんなはずはない。彼女の言うことは、全部嘘だ。


「楓も、風間君も、あんたなんか眼中にないからね」


 彼女の言葉はさらに僕を刺激する。


「そして私も、面白いおもちゃだと思ってるのよ。あんたなんて」


 彼女の挑発に、僕の怒りが沸点に達した。彼女は僕を操ろうとしている。だが、僕はただのおもちゃじゃない。僕は自分自身で決めた道を進むんだ。


「黙れ、前島!」


 僕は叫ぶ。彼女の言葉は僕を怒らせるけれど、それに屈してはいけない。この怒りを力に変えなければ。


 剣を握りしめ、僕は前島に向かっていく。彼女のエンド能力『マッドサイクロン』には気をつけながら、彼女に近づいた。僕は怒りを抑えつつ、冷静に彼女の次の動きを予測する。


 楓と晴木のことを口に出されると、僕の中の怒りが一気に沸騰した。僕の心は彼らに対して複雑な感情を抱いていたが、前島にそんなことを言われる筋合いはない。


 僕の横で、ルナは黙っていた。彼女の沈黙は、僕にとって何とも言えない重みを持っていた。ルナの存在が、僕を少し冷静にさせる。


 そんな時、シュバルツの声が聞こえた。


『優、冷静になれ。感情に流されるな』


 彼の口調はいつも通り軽快だが、彼のアドバイスはいつも僕にとって的確だった。


 僕は短剣を手に取り、前島に向かって一直線に進んだ。彼女は僕の動きを軽く避ける。彼女の動きは予測不能で、どんな攻撃も容易くかわされる。しかし、僕は諦めない。


 僕の怒りは頂点に達していたが、シュバルツの言葉を思い出して、できるだけ冷静を保とうとする。怒りに任せて突っ込むのではなく、戦略を練る必要があった。


「落ち着け、優」


 自分に言い聞かせ、再び前島に向かった。僕は彼女の動きを見極め、最適な瞬間を待った。僕の短剣が、再び彼女に向けて振り下ろされる。



 前島の挑発は止まらない。彼女は煽りながら軽快に動き回っている。僕の攻撃を容易く避ける彼女の動きに、僕は苛立ちを覚えていた。


 彼女はすばしっこく、予測不可能な動きを続けている。だが、僕にはまだ手がある。エンド能力の一つ、「スパイダー」だ。これは僕のコピーしたエンドの一つ。


 僕は集中して、エンドの力を呼び起こす。地面から無数の糸が伸び、狙いを定めて前島の足元に向かっていく。彼女は気づかない。糸が彼女の足を捉えると、彼女は驚いた顔をした。


「なんだ、これは……」


 彼女は笑いながら僕を見つめる。彼女は拘束されているにも関わらず、一向に動揺する様子がない。まるで、これが彼女の望んでいた展開のようだ。


 彼女は僕と対峙して、煽り続ける。


「へえ、あの笹森もやるじゃない。こんなトリックを使ってくるなんてさ」


 僕は冷静を保とうとするが、彼女の挑発は僕の心をかき乱す。


「前島、終わらせるぞ」


 僕は剣を構え、彼女に向かって一歩踏み出す。今がチャンスだ。彼女を倒すための、唯一のチャンス。



 しかしエンド能力で前島を捕らえたはずだったが、無数のキメラが僕の攻撃を遮った。彼らの攻撃が激しく、僕は前島への集中を崩されてしまう。


 その隙を突いて、前島はすばやく動き、僕の背後に回った。冷たいナイフの刃が僕の首元に迫る。危険が迫っていることを感じた瞬間、僕は自分の体が凍りつくような感覚を覚えた。


 しかし、その瞬間、ルナが剣で彼女の攻撃を弾いた。ルナの剣の一撃は正確で、力強かった。彼女の介入により、僕は危機一髪で助かった。


 前島は、その状況にも笑っていた。彼女は再び距離をとり、僕たちを挑発するかのように笑い続ける。僕は怒りと緊張で震えていたが、ルナのおかげで冷静を取り戻すことができた。



 ルナが冷静に「戦況が見えてないぞ、優! 冷静になれ」


 彼女の言葉は正しい。僕もそれは理解している。でも、この状況で冷静でいるのは難しい。前島の性格もあるが、何よりも彼女の言動が気に入らない。彼女の挑発は、僕の怒りを掻き立てる。


 前島はまたもや僕を挑発する。


「そんなものなの、笹森?」


 彼女の声には、僕の怒りを煽る何かがあった。彼女はただの言葉で僕を操ろうとしている。


 僕は自分の感情を抑えようとするが、簡単にはいかない。心の中で彼女への怒りが渦巻いていた。だが、ルナの言葉を思い出し、深く呼吸をする。彼女がいる。僕たちは一緒に戦っている。


「分かってる……」


 僕は心の中でつぶやきながら、再び戦闘態勢を整える。僕は前島に集中し、彼女の次の動きを予測する。感情に流されるな、冷静に。これが僕が今、すべきことだ。



 ルナが僕の隣で、冷静に戦況を見極めていた。


「私が隙を作る! その時に攻撃しろ」


 彼女の声には確固たる決意が込められていた。僕は頷く。彼女の計画に従うのが、今の僕にできる最善の行動だ。


「この無数のキメラ、簡単には倒せない。だから、発動者の前島を倒す方が先だ」


 ルナの言葉に、僕は深く納得する。この戦いの根源は前島にある。彼女を倒せば、キメラの脅威も収束するはずだ。


 ルナは剣を構え、キメラたちに向かって突進する。


 彼女の動きはあまりにも速く、正確だ。その隙に、僕は前島に向かって走り出す。心の中で、「今だ!」と叫びながら。


 前島は僕の動きを見て、微笑んだ。

 彼女はいつものように挑発的だが、今の僕は彼女の挑発に乗せられるつもりはない。


 僕の目的は一つ、彼女を倒すこと。


 距離が縮まり、僕は剣を振り下ろす。全ての力を込めて、前島へと向けた一撃。彼女のエンド能力「マッドサイクロン」を警戒しながら、攻撃を続ける。


 絶対に殺す。

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最弱無敵のエンドフォース ワールド @word_edit

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