第21話 再会 Ⅱ


「聞いている限りだと、高槻君ずっと私を探してたように思えるんだけど、昨日の夜は、もしかして夜通しやってたの?」


「夜?......ああ、もしかしたら、俺が起きてた時は朝だった気がするし、多分長いこと寝ていたんだな。冷泉は昨日から目が覚めてたのか?」


「うん。高槻君がいた方の逆側、あっちに見えるかなり被害が大きい所で起きた。というか、正直痛みで目が覚めたの。出来るだけ傷口は見ないようにしてたから、動けない痛いという訳ではなかったけど。」


「そう...なのか。今は大丈夫なのか?その傷。」


「今の所は大丈夫みたい。もちろん激しい運動とかは控えた方がいいって、診療所の人には言われたけどね。それにしても、この世界は医療がすごく発達してると思うんだ。私達の世界だとこのくらいの傷だと短期間でも入院して、絶対安静でいないと治らないくらいだったと思うし。」


「そうだな、というかこの世界は科学分野全般が俺たちの世界よりもひと回りも発展している気がする。

 俺が来た方向を見ればわかるけど、正直あんな高いビル日本で見たことがない。

 俺が昔大阪で見た日本で一番高いビル、なんと言ったかな...、名前は忘れてしまったが、とにかくそれは確か450メートルくらいはあった気がする。

それで、俺が見たビルは、というより俺の周りにあったビル群はそれよりも大体100メートル程高くて、550メートルくらいだったんじゃないかな。

それにそのくらいの高さのビルが乱立しているって状況は、俺たちの世界じゃ考えられないことだ。」


「そうなんだ...、それなりにすごい世界に来ちゃったのかもね。

 ...まあ、とりあえず再会もできたし今後の方針を決めようよ。」


「ああ、そうだな。」


***


今後の方針を決めようとするのはいいものの、何か観光しようにも今の状況じゃ十分に楽しめないだろう。俺がきた方向の比較的新しくできたと思える都市も建物自体が倒壊していないはいいものの、中の家具や何かしらのファイルや書類などが散乱していたから、それを戻すにもそれなりに時間がいるはずだ。


それにしても、そもそもの話俺たちは元の世界の戻れるのだろうか。

光友さん曰く心配する必要は全くないみたいなことを言っていたが、正直心配だ。


「なあ冷泉。ここに来るまでに、何か泊まれそうなところとか、休憩できるところとかはあったか?」


「うーん...一応看板は立っていたけど、店内を外から見てみるととても営業できそうな様子じゃなかったよ。とりあえず服はいいにしても、食と住がないとまずいよね...」


「...そうだな。服だってこのまま着続ける訳にはいかないし、食事も取れる店がこの辺りには無さそうだしな。最悪、住は野宿でなんとかなるはずだと思う。

 この世界なんか暑いし。」


「どうしよっか...」


「...」


こういう時の対応を俺たちはあまり知らない。というか、俺たちの世界ではしばらく大きな災害も起こっていなかったので、何かしらの訓練などは全くやったことがなかった。


「そういえば、避難所?みたいなところはなかったのか?」


「そうだね。えーっと、多分診療所が避難所の代わりなんだと思う。高槻君がきた方向は建物の被害がほとんど無さそうだし、そっちに行ったとしても多分私たちが入るのは無理だと思う。私が昨日行った診療所だって、私がついて病床についた少し後にはもう人波が押し寄せてたと思う。外はかなり騒がしかったし。

 それと、高槻君がいた所もおそらく同じ様子で、今からそこへ行ってもかなり無理があると思うな。」


「...そうか」


そう行って俺は辺りを見渡してみる。すると、今まで気にしていなかったせいか一つのことに気づいた。

俺たちが今立っている道はとても長い一本道の途中で、周辺にも同じような道がほぼ等間隔で並んでいることがわかった。


「ここは道路が碁盤の目で、まるで計画された都市のようだな。」

俺は若干諦めたように、小さな声で呟いた。某少年探偵物だったらこの時に「ん?...今なんて言った?」みたいな感じで突然手がかりが見つかったり、トリックがわかったりする、いわゆるフラグが立つことが多いが、現実そんな上手くいかない。そんなことを思っていたら、まさかの反応を冷泉がしてきた。


「ん?...高槻君、今なんて言った?」


...まじか。フラグ立っちゃったよ。


「いや、だからこの辺の道は碁盤の目のようになってるから、計画された都市みたいだなって思ったんだ。」


「.......」


冷泉はしばらく黙り込んで、何かを考えている仕草を見せた。


「......それだ!」


彼女は「パァ!」という擬態語をつけるのに相応しい笑顔を突然見せた。

自分は不意に見せられた彼女の表情に、後少しで思考停止してしまいそうになったことは言うまでもない...こともないか。

しばらくの間、それも宇宙同好会に入部してからの期間、彼女が美人であるということを忘れてしまっていた。

正直今の状況ではどうでもいいことだが、慣れというものはやはり恐ろしいものであるようだ...


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並行世界より。 染夜新一 @Somesome12

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