第20話 再会 Ⅰ
ついさっき出会った光友さんの言うことを聞いて、こっちへ来てみたはいいものの、周りには木も建物もない、正確にいえば木は全て薙ぎ倒されているし、建物は悲しくも全て倒壊している状況だ。
また、さっきまで必死でいたために気付かなかったのか、なんか、率直に言ってしまえばとんでもなく暑い。
人生史上こんな暑さなんて体感したこともない。その時、ここへ行く前に念の為...念の為、温度計付き腕時計を「たまたま」付けていたので、
どうやらこの世界に持って来ることが成功したらしく、その時計を見てみると、なんと今現在の気温は32度だと言うことがわかった。
...は? 今秋だぞ、それにどっちかって言うと冬よりの秋だぞ、残暑なんて知らない子ですよ?
それに、俺の世界だったら夏の最高気温でさえ35度くらいだ。この世界暑すぎるだろ...。
「そういえば...」
俺は昔、学校の科学の授業で習ったことを思い出した。俺の世界では、最近科学の発展による温室効果ガスの発生を伴う燃料の消費が爆発的に増大していて、それによって地球全体の気温が上がったり、南極の氷が溶け海面上昇が引き起こる「地球温暖化」と言う問題を危惧しているらしい。
それに対して、この世界は科学の発展は俺の世界よりもひと回り早いため、もしかしたらその「地球温暖化」という物によってここまでになってしまったのかもしれない。
というかとりあえずそれはどうでも良くて、いやどうでも良くないんだけど、今はとりあえず冷泉を探さなくちゃいけない。
しかし、俺の世界では万に一でもないだろうこの季節外れの暑さ、そして俺の小学校の時の通学路を彷彿とさせるような長い一本道、加えて「荒廃」という言葉が正しいであろうこの周りの景色。初めて、途方に暮れるという言葉が、文字通りそのまま当てはまる体験をしたような気がする。
***
さて、まだ歩いて少しですが、全く人の通る気配がなく、というか未だ一度もすれ違ったことのない道を歩いているのですが、やっと正面に
人が見えてきました。見た感じ、男でしょうか。もし親切そうな方だったら、すれ違いざまに少し向こうの状況について聞いてみましょう。
それはそうと、私は今とても喉が乾いています。私の世界には腹が減っては戦ができぬということわざがありますが、対して
喉が乾いては満足に歩くこともできぬ、と私は思っています。しかし、ラッキーなことに前日私を診療所まで案内してくれた老人が一本の水を
私てくださったおかげで、どうにかそのような状況は免れることができました。それにしても、この水、どうも怪しい名前なのですが大丈夫でしょうか。
「この世界のものとは思えないほどとっても清らかで、尚且つとっても安くてあなたの家計にもとっても優しいとっても美味しい水...ですか...」
怪しいといえど、この道に自動販売機は見えないですし、飲むしかありませんね。
意を決してその水を飲んでみると、意外と、美味しい、いや、私が今まで飲んできた水の中で一番美味しい気がします。
水の美味しい基準なんてよくわかりませんが。
ひとまず、最低限体力を回復できたような気がするので、少しペースを速めてまた歩き出します。
そして、ついさっき見えた男の人なのですが、段々近づいてきて、目を凝らして顔を見てみると何処かで見たことのある顔だと気付きました。
「もしかして...高槻...くん..._?」
すると、向こうからも声が聞こえてきました。
「...ぜ...」
「れ...ぜ...」
「冷泉...」
なんと私の声を叫んでいるのだと気付きました。
私はあまり大声を出すことに自信がないので、とりあえず手を振って応答してみることにしました。すると、彼も手を振ってきて、私は彼が高槻君だと確信しました。
〜〜〜
「それにしても高槻君、なんでここだとわかったの?、それともたまたま?」
「いや、話すと意外と長くなるんだけど、さっき変な老人にあって、それでその老人が言うには探している人を見つけるなら、そこの道を通ればいいと。」
「その老人、もしかして超能力者?」
「もしかしたら、そうかもな。」
彼と私は一応1日ぶり...たかが一日、されど1日ぶりに再会し、会話をすることができました。
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