第4話 生存確認

 毎日朝早くに出社し、あれこれと仕事をして昼休みも削る時もあって。帰宅したらご飯を食べてお風呂に入り、速攻ベッドに入る日々。

 人が少ない会社っていうのは一人に対する負担も多いけれども、それにしてもうんざりするなぁなんて思いながら毎日を生きている。

 けれどもそんな毎日でも、月に一度か二度は別の時間を過ごすこともある。


「……心が死んでも体は生きているんだよねぇ」

「そりゃあな」

「でもたまに体は心に引っ張られることもあるし、その逆もある」

「体調を崩せば心も不調を起こす。人間って奴ぁ面倒くさい」

「けど生きるしかないんだよねぇ」

「それな」

 金曜の夜、共に残業をしていた同期の五嶋いつしまと定食屋で食事を済ませ、駅への道を歩いている。

「だから生存確認って、大事なんだよな」

「生存確認?」

「心が生きていて、この世にいるかどうかの意味でのな」

 冬の夜は寒く、冷たい空気が肌に突き刺さり体の熱を奪っていくから、心の熱もこんな風に奪われるんだろうかと考える。

「五嶋はどうやって心の生存を確認しているの?」

「飯を食う気があるかどうか、趣味を楽しめているかどうか。あとは久慈川がいるかいないかの違いだな」

「……最後の項目、なんなのそれ」

「そういう事って言うと、どういう事って返されそうだよなぁ」

「返すよ、返すに決まってるじゃん」

「だよなぁ。ま、好きな相手がいるってのも良いもんだなって思える事も、心が生きてるって証だということで」

 それだけだ、なんて少しだけ困ったような声音で言う五嶋の方に視線を向けると、どこか気恥ずかしそうな横顔だった。

 そんな彼を見て私は自分の心も生きているんだなぁと思って、手袋越しに彼の手を握り「私も同じみたい」と言葉にした。

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日常に生きる人々 續木悠都 @a_fraud_h

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