31 エピローグ 地球の重力 ねえ、一緒に帰ろうよ。

 エピローグ


 地球の重力 ねえ、一緒に帰ろうよ。


 木から落っこちたりんごは誰が受け止める? 私? それとも……、あなた?  

 

 三枝輪廻と二木林檎。

 二人のよく似た、誕生日も、年齢も、その見た目も同じような二人の少女。

 二人は偶然、夜の東京の街の中で出会い、その出会いによって(それを、きっかけとして)高校に通っていなかった林檎は、努力して高校に通うようになって、あまり笑わない女の子だった輪廻は、あれから、よく笑うようになった。


「ただいま」

 二木林檎は言った。

「おかえり」

 そう言って、三枝輪廻はマンションのドアを開けた。

 二木林檎はよく三枝輪廻のマンションの部屋に遊びに行くようになった。輪廻も、そんな林檎のことを、快く受け入れていた。そういうことがよくあった。それが『二人の当たり前の日常の風景』になっていた。

 実は家の合鍵も渡してある。それに、輪廻は自分の両親に友達だと言って、林檎のことを紹介していた。そして林檎も、輪廻を自分の家に招待してくれて(おんぼろだから、と言って林檎は少し恥ずかしそうだったけど、輪廻はそんなこと全然気にしなかった)輪廻は林檎の両親と出会い、そして、林檎の双子の弟である蜜柑と檸檬にも、夢の中ではなくて、本当の現実の世界の中で出会った。(二人は夢の中で見た通り、すごく林檎にそっくりだった)


 三枝輪廻と二木林檎。

 お互いによく似ている、なんだか他人とは思えない十六歳の二人の少女。(髪型だけがちょっと違う。輪廻はストレートだけど、林檎は今も髪をツインテールにしていた)

 二人はあの輪廻の最寄り駅のホームのやり取りのあとで、本当に正式な友達になった。

 林檎は輪廻に救われて、輪廻も、林檎に救われた。

 重たい重力に引かれて、木から落っこちた林檎を輪廻は受け止めて、……その代わりに林檎は、ずっとからっぽだった(ぽっかりと穴が空いていた)輪廻の心の穴を、その林檎の形できちんと埋めてくれた。

 その林檎の形は、輪廻のぽっかりと空いた心の穴となぜか偶然、本当にしっかりと、ぴったりと合っていた。


「あ、そういえば忘れてた」

 二人で並んで途中まで、一緒に登校している間に、林檎がそんなことを言った。

「なにを?」

 輪廻は言う。

 すると、二木林檎はへへ、とにっこりと笑って、それから、

「おはよう。輪廻!」と元気な声で輪廻に言った。

 そんな林檎の言葉を聞いて、

「うん。おはよう、林檎!!」

 と言って、にっこりとした子供っぽい笑顔で、三枝輪廻は幸せそうな顔で笑った。


 りんごの木 終わり

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

りんごの木 雨世界 @amesekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ