第4話脳噛み症

白いかぶの形をした小さなランプを手にとり、

「なかなかいいじゃないか」

まじまじと眺めながら社長の田宮は言った。

そのランプはタクヤが初めてデザインし作成したものであった。

契約が駄目になりかけたあの夜から頭から離れなくなったデザインであった。

何故駄目になりかけたかよく思いだせない。

それと同時に学生時代のことも思いだせなくなっていた。

その事を田宮に相談すると、

「大事なのは今だよ」

くったくのない少年じみた笑顔を浮かべ、職人気質の社長は言った。


病院の一室。

そこにひとりの男が眠っていた。

看護婦二人が彼の世話をしている。

その男はとある百貨店の重役の息子であるという。

「私さ、この患者さんの脳のレントゲンみちゃったんだ。なんかかじられた後みたいになってたの。ドクターが言うには脳噛み症っていう珍しい病気なんだって」

と看護婦の一人は言った。

「やだ、なにそれ。そんな病気があるのね。怖いわ」

もう一人の看護婦がそう言い、慣れた手つきで男の腕に点滴の針をさした。




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夢食みジャック 白鷺雨月 @sirasagiugethu

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