14 きっと、いつか太陽のように
きっと、いつか太陽のように
久しぶりだね。
一ヶ月後
自分の通っている白百合女学院の制服を着た三上未来は、一ヶ月ぶりに、あの偶然の雨の日に雨宿りをした場所である、宇宙博物館の敷地内にあるふれあい植物園にやってきた。
未来はもし、できることなら、二人の再会の日には、真っ青に晴れ渡った晴の天気の日がいいと思っていたのだけど、残念なことに二人の再会の約束をした日は、雨の日になった。(まあ、私らしいといえば、私らしい天気だけど……)
未来はこの一ヶ月の間、ずっとお守りみたいに自分の部屋に飾って毎日見ていた、涙くんに描いてもらった自分の素描のスケッチを、紙袋に入れて持ってきていた。
未来はふれあい植物園の入り口を開けると、あのときと同じようにとても強い風が吹いた。
未来はそのまま、植物園の中を歩いて、透明なドーム状の植物園の中央にある一番大きな植物のコーナーのところまでやってきた。
そこにあるベンチのところまで未来は移動する。
そこに川原涙くんの姿はなかった。
……まだ、来てないのかな?
未来は周囲をきょろきょろと見渡してみたけど、そこに涙くんの姿はなく、またあのときと同じように、人の気配もどこにも感じることはなかった。
まあ、いっか。
ここで待っていれば、涙くんはすぐやってきてくれるはずだ。
にっこりと笑った未来はそう思って、あのときと同じベンチの場所にゆっくりと座った。
紙袋の中には、涙くんにもらった自分のスケッチがある。そしてカバンの中には、涙くんにありがとうの意味を込めて、贈り物として買ってきた涙くんへのプレゼントが入っていた。(小さな花束も用意した)
未来はずっとどきどきしていた。
涙くん。
雨の音が聞こえない不思議な植物園の中で未来は雨降りの空を見上げる。
早く涙くんに会いたい。
あって、涙くんとお話がしたい。(学校にいけるようになったこととか。この涙くんに描いてもらった私の、にっこりと笑っている、スケッチに、私がどんなに助けてもらったか、とか、そんな話がたくさん、たくさんしたかった)
涙くんの描いた自分の油絵の人物画も見たかったし(ちょっと恥ずかしいけど)未来は一ヶ月の間に、自分が成長した姿を涙くんに見てもらいたいと思っていた。
……でも、いくら待っても、涙くんは植物園の中にやってこなかった。
涙くん。遅いな。
未来は思う。
植物園の外ではまた雨が降っている。
……三上未来は、川原涙を待ち続ける。いつまでも、いつまでも、涙くんが自分の人物画を持って、このふれあい植物園の中にやってくるのを、ずっと、ずっと、ベンチの上に座って一人、待ち続けていた。
雨の日の植物園 終わり
雨の日の植物園 雨世界 @amesekai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます