13
未来はその言葉通り、涙くんのスケッチのモデルをもう一度、した。
涙くんは二枚目の未来のスケッチを完成させると、「ありがとう。三上さん。あとは、このスケッチを見ながら、自分の部屋で、三上さんの人物画を完成させてみるよ」と涙くんは言った。
「そのスケッチを見て?」未来は言う。
未来はこのあとも、何度かモデルを続けて、涙くんの絵が完成するまでの間、ずっとこんな風な二人の時間が続くものだと思っていた。
そのことを未来は涙くんに聞いてみた。
「うん。本当なら、このまま三上さんに人物画を描くときにもモデルになってもらったほうがいいんだけど、今は、このスケッチがあれば、十分だよ。それに、この場所では、本格的な油絵はさすがに描けないし、僕の部屋に三上さんに来てもらうわけにもいかないしね」
にっこりと笑って涙くんは言う。
「そうですか」
ちょっと寂しそうな顔で笑って未来は言う。(本当は涙くんの部屋に行っても全然良かったのだけど、さすがに自分から言い出すのは、変だと思ったし、恥ずかしかった)
「じゃあ、これで私たちはお別れ、ですね」
涙くんに描いてもらったスケッチを見ながら、未来は言う。
「……絵は、きっとすぐに完成すると思う。僕は今、三上さんの人物がを描きたいってすごく強く思っているから。まあ、それでも一ヶ月はかかると思う」
……一ヶ月。未来は思う。
「絵が完成したら、またこの場所に絵を持ってやってくるよ。そしたら、三上さん。その絵を見てもらえるかな? 僕の描いた三上さんの人物画を見てもらって、その絵の感想を聞かせてもらいたいんだ」
「……うん。もちろん」にっこりと笑って未来は言った。
一ヶ月後にまたこのふれあい植物園で会う約束をして、涙と未来は、一旦、この場所でお別れをすることにした。
(連絡先の交換はしなかった。未来はしたかったけど言い出せなかった)
涙くんはまだ、このふれあい植物園の中で絵を描くというので、未来は一人で最初に入っていた入り口のところに戻って、植物園の外に出た。
外に出ると、いつの間にか雨は止んでいた。
植物園の外には、眩しい太陽がって、そして、永遠に思えるような夏の青色の空が広がっていた。
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