真実、探求、高山へ

 プロフェッサーさんが言うには、通されたここは所長室って言うらしくて、ラボの研究データが全部確認出来る所、だそうです。多分、あの机の上のパソコンで確認出来るのかな?


「トリアエズ、座ッテ話ソウカ。ソコノ椅子ニドウゾ」

「これ? おぉ!? すっごいふわふわする!」

「アムールトラ……ちょっとは落ち着きなさいよ」


 アムールさんの気持ちも分かる座り心地の良さだよ。タカさんはプロフェッサーさんをまだちょっと警戒してるみたいだけど、とりあえず座って話を聞こうって感じみたいだね。私も座って聞こうか。

 さて……色々聞きたい事はあるんだけど、何から聞こうかな? ここの事? プロフェッサーさんの事? 人がどうなったか? ここがどうなったか……はもうプロフェッサーさんも閉園してる状態以上は分からないって言われたっけ。どうしよう?


「じゃあ、私から少し聞きたい事があるんだけど、いいかしら」

「タカダネ。イイヨ、何ガ聞キタイノ?」


 あ、迷ってる私にタカさんが助け船を出してくれたみたい。なら、まずはそれを聞いてようか。


「ラッキービーストって、話せたの? あなたは普通に私達に話し掛けてきてるけど、今までそれなりにラッキービーストに会ってきてこんなの初めてよ?」

「ナルホド、ソレカラダネ。イエイヌハ知ッテルミタイダケド、ラッキービーストハパークガ危険ナ状態ニナッテ、フレンズヲ避難サセタリシナキャナラナイヨウナ事ニナラナケレバ話シ掛ケチャイケナイ事ニナッテルンダヨ。フレンズノ動物ラシサヲ失クサナイヨウニネ」


 アムールさんに知ってたの? って聞かれて頷きました。一応私も飼育員さんと一緒に居た時はお仕事を手伝ったりもしてたから、その途中で教えて貰ったんだよね。まぁ、私自身はラッキービーストさんの禁則事項に触れる存在だから、話した事は無かったんだけど。


「僕ガ君達ニ話シ掛ケラレルノハ、僕ガ特殊ナコードヲ与エラレテイルカラダヨ」

「特殊な、コード?」

「コード:プロフェッサー。人ガ居ナクナル事二ナッタコノラボヲ管理、維持シデータヲ収集スル。ソノ職務ヲ果タス為ニ必要ナ権限ノ事ダヨ。コレノオ陰デ僕ハ、一般ノラッキービーストニ組ミ込コマレテイル禁則事項ヲ一部無視出来ルンダ」


 あ、もうこの辺からはタカさんもアムールさんも理解出来ないみたい。えっと分かり易く言うと、このラボを綺麗で使えるままにする為に、普通のラッキービーストさんが出来ない事も出来るようになってるのがプロフェッサーさんなんだって風に説明したよ。説明ありがとうって言われたから、大体合ってたみたいだね。私もプロフェッサーさんみたいなラッキービーストさんが居るなんて初耳だけどね。


「今ノ君達ノヨウニ、此処ヲ訪レル事ノ出来ルフレンズガ現レテモ、禁則事項ガ適用サレタママジャ何モ説明出来ナクナッチャウカラネ」

「それって……誰かが私達みたいに此処に来るフレンズが現れるって想定していた、って事ですか」

「……アラン・セイモール。ソレガ僕ノコードヲプログラムシタ人ノ名前ダヨ。イエイヌ、君ハ知ッテルンジャナイカナ」

「アランさん? ……え、それって」

「知ってるの、イエイヌちゃん?」


 知ってるも何も、私の事を調べてくれたモノクルの研究員さんの名前だよ! 飼育員さんとも仲が良くて、よくアランって呼ばれてたのを覚えてる。


「アランガ此処ヲ去ル時ニ僕ニ伝エタ言葉……此処ニイツカ必ズイエイヌッテフレンズガ来ルカラ、出来ル限リ力ヲ貸ス事。ソレガ、アランノ代ワリ二ラボヲ任サレタ僕トアランノ約束ダヨ」

「それが、プロフェッサーさんが私を知ってた理由……」

「ソウダヨ。ヤット、会エタネ」


 ……そうだったんだ。人との約束を守っていたの、私だけじゃなかったんだ。人を覚えてるの、私だけじゃなかったんだ。

 なんでか、涙が溢れて来た。部屋を出てから何もかもが変わったパークを見て来て、本当は不安だった。本当はここは私が知ってる……似ているだけで、私と飼育員さんが過ごしてきたパークじゃないんじゃないかって。でも、ようやく見つけた。ここが私の知ってる、過ごしてきたパークだっていう手掛かりを。

 私の涙を拭いてくれながら、隣に座ったアムールさんが心配そうに大丈夫? って聞いてくれた。うん、大丈夫。これは悲しいから流れた涙じゃない、嬉しくて溢れて来た涙だから。


「イエイヌ、君ハ此処カラ人ガ居ナクナッテカラドノ位ノ時間ガ経ッテルノカ、分カル?」

「いえ……少なくとも年単位で過ぎてる、のは分かってるんですけど、正確には……」

「ソウカ……ウウン、ソレダケ分カッテルナライインダ。凡ソニモ時間ガドレダケ経ッテルカヲ分カッテナカッタラ、ココカラ先ノ話ヲシテイイカ分カラナカッタカラ」


 プロフェッサーさんの前置きから、これから先の話が重要な事だって事は分かった。しっかり聞かないと不味そうだね。


「イエイヌ、コノパークガ閉園状態ニナッテルノハサッキ言ッタ通リダヨ。事情ハ、人ガ決メタ事ダカラ僕ニモ分カラナイ。ケド、原因ノ一ツナラ分カル」

「パークの閉園の原因? それって、なんなんですか?」

「……パーク中デ発生シタ、セルリアンノ大量発生。ソレガ、原因ノ一ツダヨ」

「セルリアンの」

「大量発生!?」


 どうやらタカさんもアムールさんも知らない事みたいだね。けど、あのセルリアンが大量発生? どうして?


「原因ハマダ分カッテナインダ。ダカラコノラボデハ、今モセルリアンヤセルリアンヲ退治シタ時ニ残ルキューブノ研究ヲ続ケテルンダヨ」

「ちょいちょい待った待った! 大量発生って、つまりはいっぱいセルリアンが出たって事!? そんな事があったなんてあたし知らないんだけど!?」

「私も初耳だわ。それに、そんな事があってフレンズが今も無事に暮らしてるなんて、おかしいじゃない」

「……ソウ、ソンナ事ニナレバフレンズハセルリアン二襲ワレ、食ベラレル。食べラレタンダヨ」

「え? ……あ、まさか、そんな!?」


 人の事を全く知らないフレンズさん、サンドスターと思い出を食べるセルリアン。そのセルリアンの大量発生と、プロフェッサーさんの今の一言。それらが、私の中で繋がった。だとすれば、フレンズさんが人の事を知らないのにも説明が出来る、出来ちゃう。出来れば……間違っててほしいけど。

 私が何を分かったのかをアムールさんやタカさんも気になってるのか、聞きたそうにしてる。プロフェッサーさんをチラッと見てみると、言ってみてと言うように頷いた。でも、本当なら間違ってて欲しいな……。


「セルリアンの大量発生、それが実際起こった事だったとします。そうすると、今まで見て来た様子からして、フレンズさんはセルリアンに襲われ、食べられた。だから、それ以前の思い出……記憶を失ったと考えられます」

「え、えぇ、そうなるわね」

「大量発生なんて言う辺り、どれだけ力自慢のフレンズさんでも数で押されて圧倒され食べられた。力の無いフレンズさんは言わなくても、な状況になった。そうすると、どうなるか」

「うぇ? ……え、まさか!?」

「パークのフレンズさんの大部分、限り無く殆どのフレンズさんが食べられ記憶を失った。それが、今居るフレンズさんが人の事を全く知らない理由、ではないでしょうか」

「……素晴ラシイ考察能力ダヨ、イエイヌ。ソウ、ソレガ今ノパーク二居ルフレンズガ人ノ記憶ヲ持タナイ理由ダヨ」


 や、やっぱり……つまり私は、あの部屋に閉じ籠っていたお陰でそのセルリアンの大量発生をやり過ごせたからこそ、人が居た頃のパークの事を覚えてるって事なんだ。そんな事になってたなんて、ちっとも知らなかった……よくあの部屋にセルリアン来なかったね……。


「ちょちょちょ、それってつまり、あたしもセルリアンに食べられた事あるの!?」

「……考えてみた事は無かったけど、フレンズがセルリアンを怖がり逃げようとするのって、思えば変なのよね。見た事も無かった筈なのに、何故だか恐ろしいと感じ萎縮してしまう。けどそれが、過去に食べられた事を無意識に覚えていたからだったとしたら?」

「う、嘘ぉ……」

「私達は旅の中で何度もセルリアンと出会って、対処の仕方も知ってるわ。けど、フレンズになったすぐの頃はどうだったかしら?」


 思い出して、アムールさんは絶句してる。心当たり、あるみたいだね。


「イエイヌノヨウニ、一度モセルリアンニ襲ワレタ事ノ無イフレンズハ、モウコノパークニハ残ッテイナイカモシレナイ。イエイヌヲ除イテ、ネ」

「……けど、それって重要な事なんでしょうか? 私、大した事は出来ないんですけど」

「重要ナノハ、君ガ人二教ワッタ事ヲ覚エテイル事。ソレハツマリ、人ガ調ベテイタ真実ヲ紐解ク事ガ出来ルト言ウ事」

「人が調べていた……真実?」

「セルリアントハ何カ。フレンズトハ何カ。ソシテ……サンドスタートハ何カ」


 え、それってここで調べられてるのでは? って聞いたら、プロフェッサーさんはなんと言うか、凄く俯いてます。え、どうしたんだろ?


「……出来ナインダ」

「出来ない? 何がですか?」

「研究データヘノ……アクセス」


 ……は、えぇぇ!? 研究データにアクセス出来ないって、じゃあ今このラボでやってる事ってなんなんですか!? って聞いたら、アランさんが指定していった実験を色々な検体で試してるだけなんだって……プロフェッサーさんが引き継いでからやってる研究のデータとか考察についてはすぐに聞けるけど、それ以前のアランさん達研究員さんが調べたデータとか考察にはアクセス出来てないんだって。


「ソレラヲ解析スル為ニハ、コノPCヲ操作シナキャナラナインダケド……」

「あ、あー……プロフェッサーさんじゃどうやっても無理、だったんですね」


 プロフェッサーさんがピーシーだっけ? そう言ったのは、飼育員さんも使ってたパソコンだからね……ラッキービーストさんの体には手とか指が無いから、どうやっても操作出来なかったんだ。な、なるほど。


「事情はよく分からないけど、それをどうにかすればセルリアンとかの事ももっと分かるって事なのよね? イエイヌちゃん、どうにか出来ないの?」

「えっと、少し触らせてもらって、調べればなんとか出来るかもしれないですけど……絶対に出来るとは言えないです」

「……はぁ、いつまでも落ち込んでる場合じゃないね。プロフェッサー、だっけ? それ、イエイヌに見て貰えば?」

「勿論ソノツモリダヨ。オ願イ出来ル?」


 やってみますって言って、所長席ってところに移らせてもらう。タカさんとアムールさんも横に来て見てるけど……なんとか出来るかなぁ?

 電源なんかの事を確認すると、動かす為の準備は出来てるって事だった。ならえっと、この電源スイッチを押せば……うん、動いた。


「おぉ! なんか真っ黒だったのに色が付いた!」

「それで画面が変わったらマウスをクリック……あ、そうか、パスワードって言うのが要るんだっけ」


 忘れてたよ……パソコンを操作するにはパスワードって言う言葉を入れないとならないんだった。飼育員さんのパソコンのなら教えて貰って知ってるけど、このパソコンを触るのは初めてなんだし、そんなの分からないよぅ。


「ウゥン、パスワードカ……」

「プロフェッサーさん、何か分かります?」

「うん、イエイヌが何してるか分かんないあたし達にはさっぱりだな」

「こ、こればっかりは力になれそうに無いわね」


 プロフェッサーさんにも心当たりが無いみたいだし、これは手詰まりだよ。うーん、この机に何かヒントが無いかな? 少し調べさせてもらおうか。

 う、うーん、何にも無い。綺麗に机の棚の中は空っぽだ。これはどうしようも……うん?


「あれこれ、メモ?」

「んぁ? それって、イエイヌがそのポーチ見つけた時にも中にあった奴?」

「あ、はい、似たような物ですね。えっと……これって」


 イエイヌちゃんへって書かれた後に、色々な事が書かれてる。パソコンの電源を点けるとか書いてあるけど……あ、これこのパソコンの使い方だ! ならパスワードは、あった!


「TOMORROW……トゥモロー? 明日ッテ意味ダネ」

「これを入れれば……やった、開いた!」


 けどこれは……うわ、選べる奴、アイコンって言ったっけ? それがいっぱい。こ、この中から必要なのを探すのはちょっとすぐには無理かも。私も知らない文字みたいのもあるし、そもそも読めなくて分からないがいっぱいだ。


「凄イヨイエイヌ! 此処マデ開イテクレレバ、僕ガ解析出来ルヨ!」

「本当ですか! 良かった……ここまでは何とか出来ましたけど、ここから必要な事を探すのはちょっと無理そうでしたから、お願いします」


 早速って感じで、プロフェッサーさんの体から何かのコードみたいな物が伸びて来て、それをパソコンに刺してって言われたから、刺せる所に刺した。ラッキービーストさん、こんな事も出来たんだ……知らなかった。

 ん? パソコンの画面の真ん中に、またイエイヌちゃんへって書かれてるアイコンがある。なんだろ?

 クリックしてみると、読める字で書かれてる画面が出て来た。読んでみようか。


 イエイヌちゃんへ

 頭の良い君なら、ここまで開く事も出来たと思う。記憶が残ってなければ開けないようメモでパスを残したのを許してね。この先はPCが壊されたりしてたら無理かもだけど……コード:プロフェッサーがなんとかしてくれてるだろうし、俺が残した研究データも解析出来るだろうから、後はプロフェッサーに任せるといい。……俺が残せるのは、あくまで手掛かりだけだ。けど、プロフェッサーに任せたセルリアン等の解析作業のデータと照らし合わせれば、何らかの事実が分かると思う。

 こんな事を無責任にお願いするのも気が引けるんだけど、もう俺にも時間が無いみたいなんだ。だから、これから先は君とプロフェッサーに託させてもらう。どうか、セルリアンについて解き明かしてほしい。それは君とフレンズ達、そしてパークだけじゃない、世界にとっての未来への可能性になる筈だ。

 PS、フォルダ内にあるシークレットフォルダは関係無いデータだから決して、決して開かないでほしい。よろしくね、アランより。


「アランさん……」

「ウーン……データガ多イシ、作業ニハ時間ガ掛カリソウダヨ」

「えーっと? 頭がこんがらがってきそうだけど、今はプロフェッサーに任せるしかない、って事で良さげ?」

「そう……なのかしら?」

「ソウダネ。時間ハ掛カリソウダケド、何トカシテミルヨ」

「あ、はい。お願いします。……セルリアンを調べる事が未来の可能性? どういう事なんだろ?」


 ダメだ、流石に私も頭がパンクしそうだよ。今日はもう遅くなってきてるから、部屋を用意するから休んでってプロフェッサーさんが言ってくれたから、お言葉に甘える事にしたよ。あ、案内はプロフェッサーさんのコードで私達に話し掛けられるようになってるラボの別のラッキービーストさんがしてくれるみたいです。

 タカさんもアムールさんも、昔に一度セルリアンに食べられた事があるって事実に思う事があるみたいで、考え込んでて何も話してくれない。うん、凄く考えちゃう話だったし、仕方ない、よね。

 ラッキービーストさんが案内してくれた部屋に入ると、ベッドや食べ物まで用意されてて凄く快適に過ごせるようになってたよ。いつの間に用意してくれてたんだろ?

 ポーチを外して、ベッドに横になる。なんだか、疲れちゃったな。色々な事が分かったような、もっと分からなくなったような。セルリアン、フレンズ、サンドスター……私、知らない事ばかりなんだなぁ。そして、知らない事に気付いてもいなかった。

 歩き出して、触れて、考えて。見えていなかった事が見えて来た。飼育員さんに会いたいってだけで旅に出たけど……人に、飼育員さんに何があったのか、どうしてパークが閉園する事になったのか。私……知りたい。私に何処まで出来るか分からないけど……。


「なーんかさ、変に頭使い過ぎて、らしくなく悩んじゃったりとか、あたしらしくないよねー」

「仕方ないと思うわよ。今まで考えた事も無い事に触れたんだもの、悩まない方が無理よ」

「かもだけどさ。どんだけ考えたって、結局あたしは出来る事をやる以外に出来ないんだよなーって思ってさ」


 同じく自分のって決めたベッドに横になってたアムールさんが、勢い良く体を起こした。顔は、悩んでるって言うより何かを決めたような感じ、かな。


「だからさ、あたし決めた。こうなったら、とことんイエイヌと行ってみようって」

「え、私……ですか?」

「そ。今このラボに居て、昔何があったかなんて知れたのはイエイヌと一緒にここまで来たからだもん。正直、自分が一度セルリアンに食べられたかもって言うのはちょーっとショックだったけど、今はその時に何があったか、知りたい。んで、それを知るにはあたしだけじゃ辿り着けないって事も分かった。今日はイエイヌが居てくれなかったらさーっぱりだったし、きっとイエイヌと一緒に行くのが一番の近道でしょ。ね!」


 アムールさん……うん、アムールさんが一緒に来てくれるなら、こんなに頼もしい事は無いよ。


「……そうね。元々ここに着いた先もしばらく一緒に行こうとは思ってたけど、気になる事ばかり出て来て途中でさよならも気持ち悪いし、とことん付き合うのも悪くないわね」

「タカさん……!」


 うん、私一匹じゃない。アムールさんも、タカさんも一緒に探してくれる。私だけじゃ出来ない事も、きっと……!


「よぉし! そんならここから、パークの秘密探検隊結成だ!」

「な、なんと言うか……そのままね」

「えーいいじゃん。ね、イエイヌ?」

「……えへへ、凄く良いと思います」


 少しだけ滲んだ涙を拭いて、思い切り笑ってみせた。もう、涙を流すだけじゃない……笑って歩いていけるように。……きっと飼育員さんも、泣きながら再開するよりずっと良い筈だから。


「それなら今日はしっかり寝て、明日またプロフェッサーの話を聞くとしますか!」

「分かるのイエイヌちゃんだけなんだけどね……」

「な、なんとか分かるように訳せるよう頑張ってみます」


 それじゃあ寝よう! って事にはなったんだけど……なんでか私、タカさんとアムールさんに挟まれて寝る事になってます……いや、タカさんとは約束したから分かるんですけど、アムールさんもやっぱり一緒が良いって事で、ベッドも小さい訳じゃないからって事で三匹一緒に寝る事になりました。うんまぁ、安心出来るからいいんだけどね。


 特に何事も無く夜が明けて、朝日が入ってきたのを感じて目が覚める。プロフェッサーさん曰く、ホロプロジェクターだっけ? あの映像の木を映すの、朝日なんかは普通に通すみたいだよ。

 で……私の目の前は白い。これは、タカさんの服……もとい毛皮だ。私、タカさんの方を向いて寝てたんだ。けど背中もあったかいからアムールさんもくっ付いてるね、これは。

 起きたいけど、動けないなぁ。まぁ、もう少し横になっててもいいか。タカさんの腕の中も良い気持ち……。


「オーイ、聞コエルカイ?」

「ほわぁ!? な、なな、なん!?」

「何!? 今の声!?」

「ん、えーっと、プロフェッサーさんかな?」

「ソウダヨ、休ンデル所ニゴメンネ。伝エタイ事ガアッテ声ヲ掛ケサセテモラッタヨ」


 どうやらプロフェッサーさんの声は部屋のスピーカーから聞こえてるみたい。所長室に来て欲しいって事だから、さっと用意して皆で行ってみる事に。何か分かったのかな?

 道順は覚えてたから、そのまま真っ直ぐに所長室に着いた。扉が開くと、プロフェッサーさんは昨日と同じで所長席に居たよ。パソコンと繋がってたコードは抜いてあるって事は、解析は終わったのかな?


「オ早ウ。ヨク眠レタカイ?」

「はい、しっかり休ませてもらいました」

「それで、そっちは何か分かったの?」

「結論カラ言ウト、解析ハ最低デモ数日、長クテ一週間以上掛カルッテ分カッタヨ。ツマリ、スグニハ無理ダッテ事ダヨ」

「一週間以上……」


 つまり解析が終わるまでは何処にも行きようが無いって事か……まぁ、焦っても仕方ない、か。


「ケド、皆ニハ行ッテ貰イタイ所ガアルンダ」

「行って貰いたいとこ? 何処そこ?」

「隣ノ地方……高山地方ダヨ」


 高山地方? またどうして? と思っていたら、プロフェッサーさんから説明が入るみたい。まずは聞いてみようか。


「トリアエズ今マデニ分カッタ事ヲ纏メルト、セルリアンニハ取リ込ンダ情報ヲ元ニ自身ノ形状ヲ変エル性質ガアル事ガ分カッタヨ。ヒョットシテトハ思ッテタケド、アランノ仮説ト情報ヲ照ラシ合ワセルト、恐ラク確定ト見テ間違イ無イ結果ガ出タンダ」

「取り込んだ情報を元に形状が変わる……」


 それってつまり、セルリアンは食べた物の情報も集めてるって事? って聞いてみると、どうやらそれで間違い無いみたいだってプロフェッサーさんが教えてくれた。なんだかセルリアンを倒した後に出るキューブ、あれにはセルリアンが貯めた情報がそのまま残ってて、あれを残す事によって他のセルリアンに情報を継がせようとしてるんじゃないかって事みたい。そんな事も調べられるんだ、ここ。


「アノキューブヲ調ベテミテ、ヨク分カラナイ映像ガサルベージ出来タ理由ニ答エガ出セテ良カッタヨ」

「んー……よく分かんないけど、セルリアンって食べたフレンズの姿になれるって事?」

「チョット違ウカナ。セルリアンハフレンズノ、何ガ出来ルカヲ食ベルンダ。ソシテ、食ベタソレヲ自分デモ出来ルヨウニ体ヲ変エラレルンダヨ」


 あ、今のでタカさんもアムールさんも納得出来たみたい。セルリアンがフレンズさんみたいな姿になるには、その姿の元になる情報を取り込む必要があるみたいだね。絵とか写真がそれに当たるのかな?


「ソシテセルリアンノ色、アレハ多分内包スル情報が多ケレバ多イ程変ワル、ンダト思ウンダ」

「ん? なんだか自信の無さそうな感じね? 言ってる事は分からないけど」

「えっと、セルリアンの色は食べた思い出が多い程変わる、って事ですね」

「それって……色が違う奴は沢山フレンズを食べたって事!?」

「フレンズダケ、トハ言イ切レナイケド、ソノ可能性ハ高イヨ」


 なんで確定した情報じゃないか尋ねると、このラボでは殆ど青いキューブしか調べられてないからなんだって。思えば、道中も出会ったの青いのが殆どだったっけ……詰所で会った赤いセルリアンのキューブ、拾っておけば良かったね。

 なんて言ってて思い出した。私、黒いの持ってたよ。まぁ、セルリアンのかは見ただけだから分からないけど。

 プロフェッサーさんに見せてみると、尻尾が総毛立ってた。早速調べていい!? って凄い食いつきで言われたから、ビックリしながら頷いたよ。あ、プロフェッサーさんが呼んだのか、ラッキービーストさんが来て持って行っちゃった。


「アリガトウ! マタデータガ増エルヨ!」

「そんなに喜ぶなら、これから色が違う奴見つけてやっつけられたら石拾って持ってこよっか?」

「ソウシテクレルト助カルヨ。トイウカ、高山地方二行ッテ貰イタイノモ理由ハソレナンダ」

「どういう事?」

「高山地方ニ居ルコードホルダー、コード:ガーディアンカラ前ニ情報共有ガ有ッタンダ。高山地方デ、色違イノセルリアンノ目撃情報ガ増エテルッテ。ソノ原因ヲ調ベタイトハ思ッテタンダケド、僕ハココカラ動ケナイカラ困ッテタンダヨ」


 色違いのセルリアンが増えてる? 一体どうして? いや、それを調べて欲しいって事なんだけどさ。


「そう言えば……私も噂でこうざんチホーでなんだか珍しい物が見つかったって聞いて、どんな物か気になって行ってみようと思ってたのよね」

「あ、そう言えばタカと再会した時にこうざんチホーに行こうとしてたって言ってたっけ」

「ウーン……関係ガアルカハ分カラナイケド、調ベテミタ方ガイイカモシレナイネ。ドウダロウ? オ願イ出来ナイカナ」

「んー……どうする?」

「ここに居ても情報が分かるのには時間が掛かるんですもんね……私、行ってみたいです!」

「イエイヌちゃんならその珍しい物が何なのか分かるかもしれないものね。いいんじゃないかしら」


 アムールさんも、なら行こうって言ってくれたから高山地方に行くので決まりだね。……今はこういう調べ物が飼育員さんや人に何があったかに繋がるって信じて進んで行ってみるしか無いもんね。出来る限り、頑張ってみよう。

 行くって決めたのを聞いて、プロフェッサーさんは感謝するよって言ってくれた。そして、ラボを離れる事になるなら持って行って欲しい物があるって言って、何処かに案内してくれるみたい。持って行って欲しい物ってなんだろ?

 プロフェッサーさんについて行ってみると、色々な機械が動いてる研究室って所に案内された。あ、さっき渡した黒いキューブがもう機械に乗ってる。早速調べられてるみたいだね。


「何カアレバ情報提供ハ出来ルカモシレナイカラ、通信ガ出来ルサポートデバイスヲ渡シテオクヨ。イエイヌ、使イ方ハ分カル?」

「これって、スマートフォンって言うのですか? それなら触った事はありますよ」

「少シ違ウケド、操作ハ同ジダカラ大丈夫ダヨ。渡シテオイテ大丈夫ソウダネ」


 って事で、研究室にあったサポートデバイスって言うのを貰いました。アムールさんとタカさんは何その小さい板? って疑問がいっぱいそうだから、とりあえず私の分だけ貰う事にしようか。行く途中で説明……出来るか分からないけど、出来そうなら頑張ってみようかな。ち、ちょっと自信無いけど。


「ソレトモウ一ツ、渡シテオキタイ物ガアルンダ」

「もう一つ、ですか?」

「ウン、今出スカラチョット待ッテネ」


 そう言って、プロフェッサーさんは一つの機械の前に行った。後に続いて見てみると、機械のガラスの先に淡く青く光ってる珠があるみたい。


「偶然一機ノ同胞ガ見ツケタ物ナンダケド、調ベテミタラコレハドウヤラサンドスターノ結晶ミタイナンダ。セルリアント対峙スルト、サンドスターヲ吸イ取ラレル可能性モ有ルシ、ソレノ補給ニ使エルト思ウヨ。常時、微量ニ力ヲ発シテルミタイナンダ」

「サンドスターの、結晶?」

「それ凄いじゃん! サンドスターって欠片でも見つけるの大変だし、そんなのあったら食べられたフレンズとかも助けられるよ!」

「確かに、あって困る物ではないわね。くれるって言うなら、貰っておいていいんじゃないかしら」


 皆がそう言うならって事で、開いた機械から結晶を取り出したよ。ん、ほんのり温かい? けど涼しいような感じもするような……不思議な感覚。

 アムールさんもタカさんも興味津々って感じで見てるから持ってもらったんだけど、なんだか私みたいな感覚は受けなかったみたい。持ってると元気になる気がするって言うから、力が出てるのは確かみたいかな?

 とりあえずこれも私のポーチの中に入れておく事にして、プロフェッサーさんが渡したかった物はこれで全部みたい。なんだか凄い物を二つも貰っちゃった気がするけど、いいのかなぁ?


「約束モアルカラネ。僕モイエイヌ……ウウン、皆ノ力ニナレル事ガアレバ頑張ルヨ」

「皆って……」

「私達も?」


 そう二匹が尋ねると、プロフェッサーさんは頷く。ふふっ、アムールさん達も嬉しそうで良かった。

 その後、ジャパリまんも分けてもらって、ラボの入り口に来た。次に目指すは高山地方、何があるかは分からないけど……皆で頑張って調べてみよう。


「マズハガードガ居ル、セキュリティターミナル二行ッテミテ。話ガ聞ケル筈ダヨ」

「セキュリティターミナルですね。はい、分かりました」

「ぃよっし! そんじゃあ再出発と行きますか!」

「次は何が待ってるかしらね?」


 分からないけど、まずは進んでみないとね。プロフェッサーさんにも地図を確認してもらって、場所を確認。あ、サポートデバイスには詳細な地図を見る機能もあるから後で試してみてって教えてもらった。助かるなぁ。

 よし、出発だ。見送ってくれてるプロフェッサーさんに手を振って、また一歩を歩き出す。高山地方か……初めて行くけど、どんな所なのかなぁ。


 ――――サポートデバイスニハ、君モアクセス出来ルヨウニシテオイタヨ。何カアレバ、使ッテミテネ。

 ――――感謝スルヨ、プロフェッサー。君モ、研究頑張ッテネ。

 ――――ウン。……必ズ、解キ明カシテミセル。パークヲ守ロウトシタ、人達ノ為ニモ……。

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けものフレンズ True Explorer ~旅の始まり~ フタキバ @Futakiba

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