第4話 就寝

「なんのために休みねじ込んだと思ってんの、絶対行くからね」

眠りにつく直前まで、さんざん「週末は這ってでも行く宣言」をされてしまった。

大の甘党は健在だ。買ってきたケーキも、今日のうちに半分以上食い尽くされたし。

「発芽したら強制入院ですけど?」

「今すぐは死ななくていいから、いいの。人権侵害で訴えてやりゃいい」

「それさせないために、コレがあるの。わかってるくせに」

ウェアラブル端末よりだいぶゴツいそれを、これ見よがしに見せつける。

「そしたら、俺が殺してあげるから」

少しトーンの落ちた声に、笑いそうになるのを堪えた。

さっきできなかったくせに、どの口が言うか。

「はいはい、よろしくね」

端末をつけていない方の手で、頭を撫でた。

「明日は、俺遅番だから。起こさないで」

「はいはい。先に出るから、ちゃんと朝ご飯食えよ?」

セックスするわけでもないのに、同じ布団に寝るのは久しぶりだ。

わかりやすい同衾と、その先のない矛盾。

「しないの?」

「いつでもどこでも発情期じゃないんだよ、俺は」

むすっとほっぺた膨らませてハムスターみたいに、不機嫌になった顔に笑った。

「悪うございました。おやすみ」

背を向けて、そっと目を閉じる。

怖かったのに、辛かったのに。

ぎゅっと、背中から抱きしめられた。

「おやすみ。良い夢、みてね」

お前に抱かれてるだけで、こんなにも和らぐ。

俺ってただただ、単純なんだよ。

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不死の華 雪ノ福 @rudobekia

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